ていえぬのファンタスティック映画感想

ファンタスティックな映画だけを観て生きていたい・・・

基本的にネタバレなしです。安心してお読みください。
( )で囲ってある文章はまだ書きかけのものです。

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2010

2010年のベスト10
キック・アス
SRサイタマノラッパー
トロン:レガシー
かいじゅうたちのいるところ
カールじいさんの空飛ぶ家
マチェーテ
くもりときどきミートボール
ザ・ロード
ぼくのエリ 200歳の少女
ガフールの伝説
ファイナル・デッドサーキット3D
ゴスロリ処刑人
サバイバル・フィールド
3時10分 決断のとき
悪魔のかつら屋
サムシング・ウィアード
マーシャル博士の恐竜ランド
チェイサー
バッドタイム
吐きだめの悪魔
ハックル
ゾンビランド
4匹の蝿
ほぼ300
フューチュラマ ベンダーのゲーム
フューチュラマ モンスターの襲撃
ブレックファストクラブ
ハングオーバー! 消えた花ムコと史上最悪の二日酔い
エンター・ザ・ボイド
ハロウィンII
サバイバル・オブ・ザ・デッド
40男のバージンロード
グラン・トリノ
イングロリアスバスターズ
パブリックエネミーズ
ロックンローラ
第9地区
ハートロッカー
エージェント・ゾーハン
ブルーノ
処刑山 -デッド・スノウ
涼宮ハルヒの消失
崖の上のポニョ
テネイシャスD 運命のピックを探せ!(2回目)
チェンジリング
アイアンマン

2009

トロピックサンダー
2009年のベストテン
イディオクラシー(26世紀青年)
ホットロッド めざせ!不死身のスタントマン
マーターズ
ファイナルデッドサーキット3D
ハプニング
エスター
96時間
ドゥームズデイ
しんぼる
寝取られ男のラブ♂バカンス
無ケーカクの命中男/ノックトアップ
ヱヴァンゲリヲン 新劇場版:破
ランボー 最後の戦場
サスペリア・テルザ 最後の魔女
ゼアウィルビーブラッド
ヱヴァンゲリヲン 新劇場版:序
ターミネーター4
レスラー
クローバーフィールド(3回目)
Mary & Max
My Dog Tulip
Panic in the Village
ノーカントリー
フューチュラマ ベンダーの大冒険
ミスト(2回目)
ミスト
恐怖奇形人間(2回目)
デコトラギャル奈美
ウォッチメン(3回目)
ウォッチメン(2回目)
団塊ボーイズ
サーフズ・アップ
ウォッチメン
クローバーフィールド(2回目)
28週後...(2回目)
チャックとラリー おかしな偽装結婚!?
スウィーニー・トッド フリート街の悪魔の理髪師
13日の金曜日
ブラッディ・バレンタイン3D
殺人者たち
狼の血族
ブレイブ・ワン
NOTHING/ナッシング
Mr.ビーン カンヌで大迷惑?!
ダークナイト(再上映)
007 慰めの報酬
ミラーズ
エンジェル
天皇伝説 血のリレー
ノモンハン
ヘルボーイ/ゴールデン・アーミー
ジェノサイバー 虚界の魔獣 2
ジェノサイバー 虚界の魔獣 1
ダーク・スター
2008年のベストテン

2008

怒りの山河
フォーガットン
さらば冬のかもめ
キングダム 見えざる敵
プロポジション 血の誓約
ディセント
明日に向って撃て!
エンゼルハート
東京残酷警察
ピアノチューナー・オブ・アースクエイク
落下の王国
タワーリング・インフェルノ
ダイアリー・オブ・ザ・デッド
フューリー
デイ・オブ・ザ・デッド
ボディ・ダブル
スーパーバッド
ハロウィン(リメイク版)
裸の銃を持つ男2 1/2
デス・プルーフ
トランスフォーマー
ダーティ・メリー クレイジー・ラリー
ボラット 栄光ナル国家カザフスタンのためのアメリカ文化学習(2回目)
リトル・チルドレン
アートスクール・コンフィデンシャル
ポセイドン・アドベンチャー
グローバルメタル
ジーザス・クライスト・スーパースター
エバン・オールマイティ
片腕マシンガール
ワイルドバンチ
アポカリプト
ダークナイト
俺たちダンクシューター
砂塵
スネーク・フライト
テネイシャスD 運命のピックを探せ!
ガンダーラ
ヒストリー・オブ・バイオレンス(3回目)
イースタン・プロミス
ホット・ファズ(2回目)
ホット・ファズ
トゥモロー・ワールド(2回目)
愛おしき隣人
スウェーディッシュ・ラブ・ストーリー
秒速5センチメートル
ほしのこえ
ビースト 獣の日
タクシデルミア ある剥製師の遺言
モンティ・パイソン 人生狂騒曲
ザ・ネット―ユナボマー、LSD、インターネット
スラヴォイ・ジジェクによる倒錯的映画ガイド
もしも昨日が選べたら
ボーン・アルティメイタム
バイオハザードV
反撥
大日本人
Gガール 破壊的な彼女
クローバー・フィールド
シン・シティ(2回目)
スモーキン・エース
ナチュラル・ボーン・キラーズ
ザ・シンプソンズ MOVIE(オリジナル吹き替え版)
リトル・ミス・サンシャイン
デビルズ・リジェクト
エディット・ピアフ 愛の賛歌
炎のいけにえ
カノン
スナッフ
アマゾンの腹裂き族/猟奇変態地獄
スキャナー・ダークリー(2回目)
地獄の貴婦人
最終絶叫計画4(2回目)
血の魔術師
血の祝祭日
最終絶叫計画4
アードマンコレクション2
アークエンジェル
悪魔のはらわた
ファイヤー&アイス
ギムリ・ホスピタル
カルネ
フリッツ・ザ・キャット
ガリバー旅行記
鮮血の美学
ショック・トリートメント
ボルベール
幸せのレシピ
ミミ
恋は負けない
インダストリアル・シンフォニーNo.1
セレニティー
DOA/デッド・オア・アライブ
いのちの食べかた
カッコーの巣の上で
ザ・シンプソンズ MOVIE (字幕)
ベティ・ペイジ
エコール(2回目)
デビルスピーク
サイレントヒル
28週後
フロム・ザ・ダークサイド(TV版)
どつかれてアンダルシア(仮)
がんばれ!ベンチウォーマーズ
ヒルズ・ハブ・アイズ2
ヒルズ・ハブ・アイズ
モンティ・パイソン ライヴ・アット・ザ・ハリウッド・ボウル(2回目)
ライフ・オブ・ブライアン(2回目)
ナチョ・リブレ 覆面の神様
ダイ・ハード4.0
ロッキー・ザ・ファイナル


2007

カンニバル!
2007年のベストテン
グレムリン
ロード・オブ・ウォー
俺たちフィギュアスケーター
ニューヨーク東8番街の奇跡
スリザー
処女の泉
ファイナルデッドコースター(2回目)
ゾンビーノ
キング 罪の王
DOOM
ホステル2(おすすめ!)
ホステル(2回目)
恋人はゴースト(おすすめ!)
黒猫
ラブソングができるまで
ウルトラヴァイオレット
ミッドナイトクロス
虫おんな
40歳の童貞男
愛しのジェニファー
世界の終わり
魔女の棲む館
ぼっけえ、きょうてい
氷の微笑
パンズ・ラビリンス(必見)
プラネット・テラー
デス・プルーフ
危険な動物たち
新・ゾンビ
2番目のキス
みえない雲
ユナイテッド93
ドゥーム・ジェネレーション
グラインドハウス U.S.A.バージョン(プラネット・テラー/予告編/デス・プルーフ)
インランド・エンパイア(2回目)
ハード・キャンディ
プルートで朝食を
グエムル 漢江の怪物
インランド・エンパイア
スポンジボブ/スクエアパンツ
迷宮物語
ファンタスティック・プラネット
プロデューサーズ
ロッキー・ホラー・ショー
ゴースト・オブ・マーズ
プレステージ
ピンクパンサー
300
ボラット 栄光ナル国家カザフスタンのためのアメリカ文化学習
ミュンヘン
コレクター
スティル・クレイジー
ザ・ブルード 怒りのメタファー
白い肌に狂う鞭
ウォレスとグルミット 野菜畑で大ピンチ
ホテル・スプレンディッド
セックス・トラフィック
007 カジノロワイヤル
トゥモローワールド
エミリー・ローズ
ヒストリー・オブ・バイオレンス
レッドアイ
ミート・ザ・ペアレンツ2
ブラックブック
トランスポーター2
アサルト13 要塞警察
ホテルルワンダ
蟲師
フライトプラン
ルナシー
ウォーク・ザ・ライン
鉄コン筋クリート
殺人捜査
裸の銃を持つ男
シカゴ
リトル・ニッキー
奥さまは魔女
追悼のざわめき
スキャナーダークリー
ホステル
時計じかけのオレンジ
フルメタルジャケット


2006

乱気流 タービュランス
蝋人形の館
俺たちニュースキャスター
宇宙戦争
フォーリングダウン
江戸川乱歩全集 恐怖奇形人間
エコール
ミツバチのささやき
ミリオンズ
Mr.インクレディブル
殺しのドレス
コープスブライド
テキサスチェーンソービギニング
ファイナルデッドコースター
レディ・イン・ザ・ウォーター
ブラックダリア
グエムル 漢江の怪物
二人の5つの分かれ路
ぼくはこわくない
トリプルX ネクストレベル
ハイテンション
16歳の合衆国
ナポレオンダイナマイト
メタル ヘッドバンガーズジャーニー
愛についてのキンゼイレポート
キラーモンキーズ
スパニッシュホラープロジェクト 産婦人科
スパニッシュホラープロジェクト 悪魔の管理人
ドッジボール
スパニッシュホラープロジェクト ベビールーム
妖怪大戦争
プリンスアンドプリンセス
ブルーレクイエム
死霊のはらわた
ワイルドタウン 英雄伝説
ハウルの動く城
空軍
クロウ 飛翔伝説
ネバーエンディングストーリー
皇帝ペンギン
御巣鷹山
オープンウォーター
タナカヒロシのすべて
レイジ34フン
散歩する惑星
緑玉紳士
ファンタスティックプラネット
不思議惑星キン・ザ・ザ
雨に唄えば


2010年のベストテン

 え〜もう年末ということで、恒例の年間映画ベスト10です。いつもと同様、今年劇場で観た映画の中から10本選びました!(というかベスト10が作れる程度の本数を見ていたことにホッとしました)

ベストテン

別格:イングロリアス・バスターズ

@ザ・ロード
A第9地区
Bハート・ロッカー
Cブルーノ
Dゾンビランド
Eキックアス
Fサバイバル・オブ・ザ・デッド
Gガフールの伝説
Hマチェーテ
Iエンター・ザ・ボイド

 まず「別格」は去年の映画だけど今年やっと二番館で見て大感動して結局今年の印象を大きく支配してしまった作品。映画館で久々に限界まで緊張した。やっぱ映画ってすげえと思った。

@は今年劇場で号泣した唯一の映画。役者の演技とロケーションの力によって原作よりさらにエモーションが増した。今最もリアルな終末の風景。人間やっぱりまずは食い物が大事だ。

皆がベストに挙げてくるであろうAも面白かった。技法を駆使してロジックで攻めてくるのかと思ったら後半ヤケクソのドンパチアクションになって最高だった。武器を手に入れてからの高揚感が尋常じゃない!全編に漂う「センスの良い洋ゲー」感も楽しい。これ見た後無性に64版『パーフェクトダーク』をやりたくなった。

Bのラストシーンに震撼。僕もがんばろうと思った。

Cは前作『ボラット』がウェルメイドに見えるほどムチャクチャな内容で、実際見てる間は笑うよりひいてる時間の方が長かったけど、やっぱり最高。欲を言えばイスラエルのチェイスシーンをもっと長く見たかった。あとチンポ修正にがっかり。

Dは『ウォッチメン』のゾンビ戦争版というべきオープニングタイトルが超かっこよくて今年のベストシーン。あとはまあまあ安定飛行。ゲストの使い方が良かった。

Eは先にコミック版の信者になってしまったのでこの順位。ヒットガールは格好良いけどやっぱり最後までキックアスの話にしてほしかったなぁ。事前情報なしで見たらもっとぶっ飛んでたとは思う。

Fは港でのドタバタ劇が大好き。あとゾンビの倒し方がいちいち面白すぎて最高。ロメロ先生は我々を笑かそうとしている!

Gは来年の『サッカー・パンチ』を見る上でも外せない、ザック・スナイダー史における重要作。王道だけどちゃんとやれば格好良い。キャラがかわいいのもポイント。

Hはグラインドハウス祭りでやり残した仕事をしっかりこなした監督ロドリゲスに敬礼!後半もっと整理できればさらなる傑作になったかもしれないが。悪役ジェフ・フェイヒーの顔が素晴らしくて、彼が出てる場面だけ本当に昔の映画に見えた!不思議!

Iは見る前の期待と妄想が膨らみすぎて、あとオープニングクレジットが最高すぎて、本編は多分クソだったが「俺の考えるエンターザボイド」が常に脳内同時上映されていたのであんまり怒る気にならない。オープニングクレジットは本当に文句なしの破壊力。これだけリピートして見続けたい。

続いてワースト3。

ワースト3


@トロン:レガシー
Aパブリックエネミーズ
BハロウィンU

 @はがっかり!音楽がダフトパンクと聞いて、すわ劇場は熱狂的クラブ空間と化すのかと思い馳せ参じたら、実にまったりした懐かしいまでの80年代オールドファッションなSF映画だった。ダンスチューンが初めて流れる場面が酒場のBGMでズッコケ!全編ガンガン流せやオラ!まあ全部こちらの勝手な思い込みが悪いのだが、それにしても新しいイマジネーションは何も見られなかった。続編作る意味ないじゃん。でもオリヴィア・ワイルド演じるクオラは良かった。結局最後は萌えかという気もするけど。やっぱりボディスーツはエロい!
 Aクリスチャン・ベール以外何もなかった。
 B萎えた。

話題作を結構見逃してるのもあるけど、今年は結局どんな年だったのかよく分からない・・・。あれかな、SF・ホラー・コメディ・ヒーロー映画それぞれのジャンルで新しいアイデアや極限への挑戦が試みられた年といえる・・・ま、いいや。あと今年はアルジェントの『4匹の蝿』のラストシーンが忘れがたい。死の瞬間を描くとき映画は一番輝く。

ではまた来年ということで!



2010.1.11

『涼宮ハルヒの消失』


2010.1.10

『崖の上のポニョ』


2010.1.?

『テネイシャスD 運命のピックを探せ!』(2回目)

劇場で見たときはクソだと思ってワーストにも選んでしまったが、改めてテレビで見ると傑作だと分かった。なのでワースト撤回!テネイシャスDさいこー!


2010.1.?

『チェンジリング』

思わぬ実録猟奇殺人モノでびっくり!ジョリ姐さんはセクシー系もやりーのこういうオスカー系もやりーので偉いなーと思ったら元々『17歳のカルテ』で出てきた演技派さんなのね。王道ハリウッド映画と言うかんじで「普通に」面白かったです。


2010.1.?

『アイアンマン』

かっちょえー!アクションは実に迫力があったけど、ラストの社長のセリフ→サバスの「アイアンマン」に至る流れが一番盛り上がった。


2009.12.?

『トロピック・サンダー』

わははははは!歪なバランスだが勢いに任せてパワフルに突き進む感じが素晴らしい。


2009年のベストテン

 ゼロ年代(というとなぜかかっこいいよね)最後の年もあっという間に終わろうとしている中、皆さんいかがお過ごしでしょうか。恒例となりました、ていえぬシアターが選ぶ年間映画ベスト10の時間です。いつもと同様、今年劇場で観た映画の中から10本選んでみました。ってか正直あまり映画見なくなったな〜。今年はどちらかといえばテレビアニメの方を見ていた気がします(映画代高いしさ、ホラ)。そんなわけでそのうち今年のアニメの感想もまとめたいところです。

ベストテン

別格:まだ見てないけど見てたらきっとランクイン
○イングロリアス・バスターズ
○スペル

@ウォッチメン
Aエスター
Bレスラー
Cサスペリア・テルザ 最後の魔女
D天皇伝説 血のリレー
Eエヴァンゲリヲン 新劇場版:破
FMary&Max
Gブラッディ・バレンタイン3D
Hファイナルデッドサーキット3D
I13日の金曜日(リメイク)

 今年といったらやっぱりこれでしょう@!今年最大のお祭でした。劇場で見て、原作読んで、もう2回劇場で観たくらいハマった。これほど面白く、美しく、切なく、そして狂った映画が最新のCGを駆使してハリウッド大作として作られることに驚愕そして感動。まさに映像芸術しちゃったオープニングクレジットを含め、監督のザック・スナイダーは本当に良い仕事をした。原作に忠実な画作りが話題になったけど、キャラクターの感情をより細やかにダイレクトに伝える演出にも注目すべし。特にクライマックスの雪原のシーンは、幻想的で美しい雪の表現が「ヒーロー」たちの悲しみを一層引き立て、いつまでも心に残る名シーンとなった。あと、何度も言うけど『ダークナイト』より断然こっち!
 Aは期待以上の傑作ホラーで、なんといってもゴスっ子殺人鬼のエスター様が素晴らしかった。学校でからかわれ突然ヒステリックに叫ぶシーンや心理カウンセラーのもとへ連れられた後トイレで暴れまくるシーンは、ゴスが本来もつ破壊衝動(死ね!とか殺す!とか)を見事に体現している(これはティム・バートンの映画では見られないものだ)。丁寧なドラマ進行、どんでん返し、救いのない展開など、映画自体も良く出来てる。ただ、オチは絶対『13日の金曜日』のようにするべきだった。そうしてたら間違いなくオールタイムベスト。惜しい。
 Bは今年一番涙した映画。プロレス知らない人にこそ見て欲しい。
 Cはもうファンにしか見てもらえないだろうけど、それでも良し。思えば初めて『サスペリア』を見たのが01年だから、『サスペリア』に始まり『サスペリア』に終わった10年だったとも言える。
 Dは見られただけでも感激。蓋を開ければ手に汗握るアクションで面食らった。監督の許可もらって持って帰った宣伝ポスター大切に保管してます。
 今年は本格的にアニメに日和りはじめた年でもありますがその一環として見に行ったEは門外漢も楽しめる爽快なロボットアニメでありました。音楽の使い方もキモくて好きです。
 アヌシー映画祭でFをいち早く見たのも良い思い出。さっさと全国公開してほしい。
 今年期待してたスプラッター映画群がGHIに固まってしまったのはちと悲しい。どれもがんばってたけど迫力に欠けた。Gはその中で一番堅実で、3Dでなくてもいけるくらい楽しかった。Hは観客にアッカンベ〜するジョーク感覚がエスカレートしてて良かった(特に終盤のヒロインの扱い)。Iはハードコアな雰囲気は好きだけど殺し方が地味で雑。
 でも3本ともオープニングは猛烈に格好良かった。特にGとIは両方ともタイトルが出る前に一通り殺すからビックリした。これがホラー映画の最新の流行なのかと思って焦った。
 
長くなりました!続いてワースト3。

ワースト3


@ターミネーター4
Aマーターズ
Bダークナイト(再上映)

 @は作り手が自分でも何が面白いのか分かってないような空気が画面から伝わってきて、観客も実際自分たちがこの映画に何を求めてるのか分からなくなるという、困惑に満ちた2時間だった。同じベールなら『サラマンダー』の方が面白い。
 Aは、作り手がもし本気で信じているとしたら、くだらない。拷問については『ホステル』が全てを描き切っており、それ以上のものは何もないはず。ホラーに哲学や思想はいらない。そもそも意味なんてない。だから面白いのに。
 Bは再上映を見てやっぱりダメだった。こんな雰囲気映画がゼロ年代ベスト?勘弁してくれ!(確かに「雰囲気」だけは掴んでるのかもしれないけど)
思えば去年に「ベールは『T4』でブレイクする」とか言ってたけど、まさかまたワーストランクインとは・・・。日本での認知度も「実力派」「演技派」とか、「暗い」「地味」とか微妙な感じだし。決して「イケメン」にはなれないのがベールの悲しい性(さが)だ(日本では「イケメン」と呼ばれないとブレイクしたことにはならないのだ)。がんばれベール!(『パブリックエネミーズ』はいい感じラシイネ!)
 
 来年も制作中心で劇場に行く回数は減るでしょう。ある意味、作品作りにはとても良いことかもしれませんな〜。
でも『涼宮ハルヒの消失』は見に行く予定(また日和った!)。
それでは!


2009.12.?

『イディオクラシー(26世紀青年)』

 わははははは!内容も素晴らしいが、90年代のB級近未来SF映画(『スーパーマリオ』『スペーストラッカー』『ジャッジドレッド』など)を思わせる手作り感覚の画作りが懐かしくてよい感じ。


2009.11.17

『ホット・ロッド めざせ!不死身のスタントマン』

サイコー!最近のコメディ映画で一番面白かった!


2009.10.31

『マーターズ』

くだらない、と思ったが何か。前半は大変面白かったけど。


2009.10.17

『ファイナルデッドサーキット3D』

面白かった!これがヒットしなければ、日本は文化的に去勢されていると言わざるを得ない。タレント使った日本語吹き替えが相変わらずひどいので、クソ映画に見えてしまう瞬間が多々あって困った。迷惑だ。


2009.10.11

『ハプニング』

 これは良いシャマラン!これはもっと評価されるべき。小粒だが、愛すべき可愛らしい映画。
大げさで説教臭くなりがちな人類滅亡というテーマを、少人数のささやかなドラマに絞って描いたのが賢い。シャマランが「どんでん返しの人」ではなく「愛の作家」であることを如実に示す一本。マーク・ウォールバーグとジョン・レグイザモが共に理系の高校教師という設定で、チンピラ役者がインテリをやると余計になよなよして見えて面白い効果だった。


2009.10.10

『エスター』

とにかくエスター様が最高すぎる!新たなるゴス伝説誕生の瞬間じゃ!
「FUCK!FUCK!殺してやる殺してやる!」


2009.9.20   エンジンさんと大阪で映画のハシゴ。

『ドゥームズデイ』

 どうしてこうなった?過剰な期待を抱いて見た観客を混乱の渦に叩き込む問題作。鑑賞後に残るのは爽快感ではなく戸惑いであった・・・・・・・でも決して駄作ではない!世紀末アクション映画の伝統を後世に伝えようとするニール・マーシャルの姿勢は立派だし、正当に評価されなければならない。ただもう少し緊張感があってもよかったかも。徹底したゴア描写は素晴らしい!ちなみにヒロインは『インビジブル』で透明ベーコンに襲われる可愛そうな美女A!躍進した!俳優ってやっぱスゲーッ!

『96時間』

 評判通りの面白さ!こんな風に映画がどんどんストイックになっていくといいな。リーアム・ニーソン格好良い。やっぱり元ダークマンをなめたらいかん。ただこの映画を見て「あの女の子は自業自得」と言うのはどうかと。やっぱり悪い奴らが悪いに決まってるじゃないか。尻軽女子の何が悪い!・・・・・ところでヨーロッパの人身売買ネタからは確実に面白い作品が生まれていますね〜。『ホステル』とか『ヒューマントラフィック』とか『イースタンプロミス』とか。作る方もいろいろ良い画が浮かぶのでしょうな。


2009.9.15

『しんぼる』

 研究室の先輩が先に見てきたので、ネタバレされる前に即行で見てきました。以下感想。

 今から思えば『大日本人』は『エヴァ』のパロディであり『ウォッチメン』の日本的な解釈だったわけで、監督が有名人ゆえに過剰な批判にさらされたが内容には見るべきものが多々あったと思う。
そこで今回の『しんぼる』ですが、これも否定派が言うほどヒドい映画ではない。むしろ最近の地味で退屈な邦画よりもずっと挑戦的で実験精神に富んでいて刺激的な作品だった。何より、全く関連性のない二つの世界の話を同時に進めるという構成が見事。二つがどうつながるのかという興味で観客を最後まで引っ張ることが出来るし、撮影手法をガラリと変えることで緩急ができ、飽きさせない作りになっている。

 また、密室での展開は思ったよりギャグが多くて、この辺り素直に笑ってくださいという芸人ならではのサービス精神を感じた。実際、なかなか報われないパジャマ男の必死の戦いはかなり笑える。劇場でも大きな声で笑ってる人が多くて、コントを見てるようなライブ感・一体感があってとても楽しかった。ほんとにこの辺の演出はノリが良くて、松っちゃんも楽しんで作ってるということがよく分かる。邦画で腹を抱えて笑ったのは何年ぶりだろうか。デタラメのようでいて、結構論理的に組み立てられたギャグの数々。「空気感」とか「ユルさ」でしか笑いを作れない日本の映画人はこれを見て猛省すべきだろう。

 中盤までほんとに面白くできているので、これに付けるオチは何だってよいと思う。ただ監督が選んだ展開はちょっと話が飛躍しすぎ(まあ実際「あの人」がいたらあんな感じなのかもしれないが・・・)。もう少しスマートなまとめ方もあったはず。あとは細部の詰めが甘いのとCGがしょぼい(わざとかも?)。それらの点を除けば、かなり楽しめる作品。

 レビューのサイトとか見てて思うのは、話題作だから何となく劇場に迷い込んだような、普段テレビしか見ない人が「わけわからん」というのはまあ仕方がないとして、映画を知ってると自負してる奴らが「駄作、こんなの映画じゃねえ」とけなすのは一体どういうことだろう?ほんとに映画をたくさん見てるなら、それに比例して寛容になっていくもんだと思うけど。世の中にはこれより奇妙な映画が山のようにあるわけだし、これくらいでいきり立ってどうするというのか。むしろ野心的な作品の登場を喜んで迎えるべきでは?


2009.8.8

『寝取られ男のラブ♂バカンス』

 劇中劇もちゃんと作るのが偉い!


2009.8.7

『無ケーカクの命中男/ノックトアップ』

 やっと観た。「5種類のイス」と「ドアマンの告白」に感動した!


2009.8.4

『ヱヴァンゲリヲン 新劇場版:破』

 テレビで「序」を見て続きが気になって観てみた。これは面白い!テレビシリーズは昔一度観たきりですが、その暗く内向的な展開よりも、今回の新生ヱヴァのスコーンと垢抜けた明るさの方が断然良い!超かっこいい巨大ロボと超かわいい女の子が大活躍する、まさに夏休みに見に行くのがぴったりな娯楽アニメになってて驚いた。(夏休みに劇場でアニメを見るって、いいですね。何かワクワクしますね。)

 やっぱり言葉や理屈でウジウジ問答するよりも、ダイナミックな絵の動きで見せていく方が、伝わるメッセージは強力だと思う。どうかこの先、物語を放棄することなくこのままのパワーで突っ走って欲しいと切に願う。

 しかし娯楽アニメと言っても、中盤の鬱な展開はかなり衝撃的。変態的というか、フェティッシュというか、佐川的というか・・・何か○○○をほんとに喰ってる感じがしない?(僕だけか?!) 切なさと悪趣味が同居するまさに「気持ち悪い」名場面であった。娯楽しつつこういうのも入れるのが偉い!

 それにしてもこの垢抜けた感じは、陰鬱な90年代は遠くなりにけりということなのだろうか。たった二十数年しか生きてない僕でも時代の変化を感じて感慨深い。


2009.6.10

『ランボー 最後の戦場』

 これ去年見てたらベストワン候補だ。まさかスタローンからスプラッターの極意を学ぼうとは!もう、殺るしかない!


2009.6.9

『サスペリア・テルザ 最後の魔女』

 アルジェント先生が『サスペリア』『インフェルノ』の続編を作る。それだけで嬉しくて泣ける。何が映ってても傑作と言うほかないじゃないか!ファンとしては、ウド・キアーの口からスージー・バニヨンの武勇伝が語られることで作品が時空を超えて『サスペリア』と繋がった瞬間がエキサイティングだったし、『サスペリア』からの伝統である(セルフパロディとも言う)「タクシー後部座席シーン」をいちいち入れてくる先生のサービスがありがたかったし、そのほか『サスペリア2』を思わせる「屋敷探索長回しシーン」もあったし『フェノミナ』みたいな蛆虫プールもねじ込んであったしラストのあっけなさは今まで以上だったしアーシアは美しかったしダリア・ニコロディがまだ生きてたし母娘共演だしエンディングはデモニアだし・・・・要はファンしか見ない傑作!ファン以外に誰が見るんだこんなのw 興奮して思わずTシャツ買っちゃったし。



2009.6.?

『ゼアウィルビーブラッド』

 長丁場を微塵も感じさせない不思議な吸引力のある映画。全編通じて鳴り響く不協和音が心地良い!欲にかられた石油王の悲劇というよりも、久々に、何だか分からんけど面白い、という感覚。ラストの緊張感がすごい。


2009.6.?

『エヴァンゲリヲン 新劇場版 序』

 金曜ロードショーにて鑑賞。やっぱりCMつきの映画は慣れない。本編から急にけたたましいコマーシャルに切り替わる瞬間は、商業主義に対してもっとも殺意を覚える瞬間だ・・・・
 横で見てた母が、片や人々がコンビニでご飯買ったりして現実的な日常生活を送る一方、ロボットが怪物と戦って街がぶっ壊されたりする非現実的な光景が展開する、そのギャップに興味を抱いたというので、自分が持ってる生半可な知識を駆使して「セカイ系」についてその場でいっちょまえの振りして語ってたらだんだんエヴァ熱が再燃してきたので、『破』が無性に観たくなった。どうしよーかなー。


2009.6.?

『レスラー』

 超超ウルトラ大傑作。今年度ベストワン候補。きっと映画オタクのアロノフスキーのことだから、『π』で『鉄男』をぱくったように今回は『ロゼッタ』をぱくったんだろうが、それでも作ってくれてありがとう、と言いたい。相手を出し抜くことしか考えないすべての小賢しいスポーツに比べ、相手の技をすべて受けてなお立ち上がる、プロレスは何と不器用で過酷で真摯な戦いであることか。そんな世界に己を捧げたラムの運命に、もう泣くしかない。ラムはああやって生きた。さて、俺はどう生きる?
 てか最後のあの場面にあの曲はずるいよな〜。泣かせにかかってるのが見え見えだがそれでも泣いてしまうよ。

『ターミネーター4』

 あれ、これって『サラマンダー』の続編?そんな既視感漂うベールのリーダー演技であったが、これなら『サラマンダー』の方が面白かったという感想さえ抱いてしまった、困った困った超大作。というか『レスラー』を見た後ではもはやどうでもいい映画。冒頭のワンカット墜落は見ものだったし、埃っぽい荒野のビジュアルははいかにも近未来荒廃SFっぽくて格好良かったし、いかついロボットの重量感も抜群だったし、ド派手なアクションもたくさんあったし、なぜかヘレナ・ボナム・カーターも出てたし、そして何よりあのベール様がハリウッドメジャー大作に堂々主演だったのに・・・・・・・なぜこうも盛り上がらないのかっ?!なんで?!信じられない!
 俳優クリスチャン・ベール・・・・・『ダークナイト』ではジョーカーのせいで印象薄いとか言われ、今回やっと単独主演で独擅場かと思いきや突然出てきた無愛想でいかつい兄ちゃんにまたしても出番を奪われ、やっぱり印象薄いとか言われる始末。スタッフにマジ切れするほど本気で臨んだ本作だが、脚本がこれじゃあいくら彼ががんばっても面白くするのは無理です。おかげでベールは日本ではまだブレイクせず、なぜか昔の映画『マシニスト』関連でベストハウスに出て「30キロ痩せてまた戻った男」として記憶されるはめに・・・・。これではイケメン演技派というかただのビックリ人間・・・・。ベールの受難は続く!


2009.6.?

『クローバーフィールド』(3回目)

 何回観てもいいな〜。最悪の一日が最高の一日の上の重ね撮りになっている皮肉。次第に崇高な使命を帯びていく撮影という行為。ハッドの切ない片思いとそれが迎える凄惨な結末。偶然撮られた素人の手ブレ映像でありながら、戦火の中で抱き合いキスをする男女というとってもハリウッド映画の王道な画も撮っちゃうサービス精神。映像技術だけでなく、その構成の巧みさにも舌を巻く。


2009.6.12

『Mary & Max』

 アヌシー映画祭の長編コンペにて鑑賞。泣いた。アダム・エリオットさんはこれでアカデミー賞をとるつもりだ!本気だ!狙っている!そんな勝負をかけている感が満載の直球の感動作。声もトニ・コレットとフィリップ・シーモア・ホフマンというアカデミー陣営で固めた。うん、これはアカデミー賞、しかも長編アニメ部門ではなく、『美女と野獣』以来のアニメでの作品賞受賞となるであろう。そして日本でも大ブレイクするであろう。
 今回のアヌシーで特別賞を獲った短編『Please say something』を観たときも思ったけど、アニメは今、比喩や象徴を使って現実世界を描くのではなく、現実世界を現実以上に過酷に残酷に描くことで実写作品に対抗しようという、表現としてのネクストレベルに到達しつつあるのではないか。授賞式でエリオットさんが『Please say something』を称える言葉として「21世紀のネコとネズミの関係」と言っていたのが印象的だった。時代は変わろうとしているのか。がんばれニック・パーク!


2009.6.10

『My Dog Tulip』

 アヌシー映画祭の長編コンペにて鑑賞。とある老人が自分の飼い犬との日々を語る。ベストセラーのアニメ化らしい。でも犬にはあんまし興味ない・・・。でも犬の心理や生態を人間に例えたりして冷静に観察する視点は、単なる動物エッセイとは一線を画していて面白かった。排泄や交尾の問題を主に取り上げ、犬を飼う際のきれいごとではない部分も真摯に描いているのも面白い。英語が分かったらもっと楽しめるのかも。ラフに水彩を塗ったような絵のタッチも渋い。
 作者の夫婦とホテルが一緒だった(というか作家はみんな大抵同じとこに泊まってたみたい)。朝食のときに少し話をしたら、「日本でも公開したいから今市場リサーチしてる」とのこと。日本は犬好き多いからきっと受けますよ!と言っておきました。日本でもやるといいですね。犬とかエッセイとか日本人好きでしょ。
 今調べたら声の出演でイザベラ・ロッセリーニが出てた。役は・・・・犬!!!


2009.6.8

『A Town Called Panic』

 アヌシー映画祭のオープニングにて。つ・ま・ら・ん!人形のコマ撮りギャグアニメシリーズ『パニック・イン・ザ・ヴィレッジ』。開会式での上映だったからてっきり1エピソード流すだけだろうと思って笑って観てたらこれがなかなか終わらない。もう終わりだろ、もうオチだろうと思っても物語はまだ続く。行き当たりばったりで考えたようなテキトーな展開が延々続く。これは小学生の描いた自作マンガか?後半ほとんどどーでもよかった・・・・。短編シリーズだと面白いのに、それを無理やり長編に引き延ばしたからおもんなくなったという印象。チープな人形は、劇場での長時間の鑑賞には堪・え・な・い!
 上映が終わって他のコンペ作家に感想聞いたら彼も「寝た」と言ってたので、退屈したのは自分だけではなかったと安心。


2009.5.?

『ノーカントリー』

 『オーブラザー』『バーバー』あたりでちと調子が落ち始め、『ディボースショウ』でコメディ路線は完全に終わったコーエン兄弟が見事シリアス路線で復活を遂げたということで期待して観たのだが。う〜〜〜〜ん。なんだかな〜〜〜〜。僕の中ではコーエン兄弟はシリアス路線でも終わってしまいました。後半、直接的な殺人描写が減っていくので、物語の説得力がどんどんなくなっていく。『ダークナイト』と同じ。暴力は、その全てを観客に見せなければ描いたことにはならない。『ヒストリー・オブ・バイオレンス』以降、そうなってしまったのであ〜る。ウディ・“ナチュラルボーンキラー”・ハレルソンの無意味な登場もなんだかなあ。あれか、90年代の殺人鬼を現代の殺人鬼にぶつけることで時代の変化を表現したとか?!
 てかこれがアカデミー作品賞かよ、う〜ん・・・・ 


2009.5.?

『フューチュラマ ベンダーの大冒険』

 「シンプソンズ」のスタッフによるSFギャグアニメのスペシャル長編版。展開の超絶的な速さに唖然。シンプソンズの裏でこんなことやってたのか!テレビシリーズ版が見たい!


2009.5.4

『ミスト』

 午前中に見てガツンとやられて午後が台無しに。なんじゃこの映画は?!ウォーーー!ダラボン恐るべし。

『ミスト』(2回目)

 1回目観てちょっとびっくりしちゃったけど、2回目見てやっと消化できた。やっぱあの状況ではああするしかなかったのですよ・・・・。劇場で見てたら主人公と一緒に絶叫してただろうな。カモーン!カモーン!・・・・ウォーーー!


2009.5.2

『恐怖奇形人間』(2回目)

 まさかもう一度見られるとは。みなみ会館でのレイトショー。改めて見ると何とも悲しいお話だなあ。「おれはキチガイじゃない!」「あんたらはキチガイだ!」などの‘キチガイ’に絡んだセリフがやっぱり格好良い。上映後の拍手も良かった。


2009.4.?

『デコトラギャル奈美』

 昨今のしょーもない邦画よりもよっぽど映画らしい映画であった。笑えるし泣けるしエロいし。映画のマジックが炸裂するラストシーンに感動。


2009.4.1    ウォッチメン症候群。

『ウォッチメン』(2回目)

 原作読んでから再び鑑賞。細かい発見がたくさんあり、いかに映画ががんばったかよく分かった。やはりロールシャッハに泣く。マンハッタンにも泣く。

『ウォッチメン』(3回目)

 一日で2回鑑賞はやりすぎたとちょっと後悔。でもやっぱりロールシャッハに泣く。


2009.3.30

『団塊ボーイズ』

 ハリウッドでは吉本新喜劇メソッドが主流であることを証明する一本。ロードムービーかと思ったらだんだん『サボテンブラザーズ』化していくのが良い。ワイルド・ホッグス4人衆のやりとりがとにかく最高!「最後の人は絶対オチをつけなければいけない」ルールがどこまでも徹底されてるのがすごい。他にもゲイの警官とか、マジで恐いレイ・リオッタとか脇も最高。レイ・リオッタは良いなあ。


2009.3.29

『サーフズ・アップ』(吹き替え版)

 期待に違わぬ面白さ。吹き替え版でも気にせず劇場で見りゃよかった。ニック・パークの『快適な生活』の正当な後継者。CGアニメ版「ゴールデンエッグス」?こういうのどんどん作って欲しいなあ。こじんまりした話だけど『ハッピーフィート』の一億倍面白い。テーマがサーフィンってのも渋い。時折挿入される色あせたフィルム映像もそれっぽくて良い。子供ペンギンがかわいい。でもまあ、吹き替えタレントがもう少しがんばってくれてもよかったのだが。


2009.3.28

『ウォッチメン』

 最高。今年のベスト1決定。ロールシャッハ萌え。

 原作未読で、作品世界の設定だけをチラシや雑誌で軽く予習しただけだったが、2時間半以上の上映時間、どっぷりと作品に入り込んで見てた。ノスタルジックで美しいタイトルロールから、ハードボイルドあり、格闘アクションあり、セックスあり、戦争あり、SFありの超盛りだくさんの内容で、それらが全て監督の秀逸な映像センスで統一され、圧巻の一言。キャラクターたちはそれぞれ人間的で魅力があり、特に主役格のロールシャッハのパンクな反骨精神は本当に格好良かった。へたれだけど一番純粋なナイトオウルの活躍には大いにヒロイズムを感じた。コメディアンの冷めた哲学にも共感できるし、ドクターマンハッタンの孤独も哀しかった・・・・具体的に言い始めるときりがないが、とにかく彼ら一人一人の行動、決断、行く末から終始目が離せなかった。シニカルでやるせない結末も良い!真面目だけが取り柄の要はいい子ちゃんだった『ダークナイト』より断然、セックス&バイオレンスを徹底した本作に軍配が上がるでしょう。元々の原作からしてすでに良いという説もあるが、不謹慎な描写も恐れずに映像化した(というか原作よりエスカレートさせた)本作は、やはり偉大なのだ。へっぴり腰の『ダークナイト』よりも。もっとたくさんの人に見て欲しいなあ。


2009.3.19

『クローバー・フィールド』(2回目)

 アニメフェアに参加した晩、ホテルにて鑑賞。遅い時間なので途中で寝るかもと思ったけど、全く眠くならず一気に見てしまった。展開を知っていても初見と同じくらいの興奮を得た。それほど映像の快楽度が高い。何回観ても飽きません!


2009.3.17

『チャックとラリー おかしな偽装結婚!?』

 アメリカのコメディ人たちがいかにしっかりと映画作りに取り組んでいるかを如実に示す傑作。何でこれを劇場公開しないのか。同じくケヴィン・ジェームズ主演で現在アメリカで大ヒット中の『ポール・ブラート:モールコップ』(原題)もまだ日本公開未定。絶対公開しろよ!!

『28週後...』(2回目)

 2回目も面白い。中盤で登場するサムの名前が冒頭のシーンですでに出ていることを発見。なかなか凝ったことしてる。それにしてもこの絶望感はクセになるな〜。もうみんな死ぬしかない!


2009.2.22

『スウィーニー・トッド フリート街の悪魔の理髪師』

 これは劇場で観ときゃよかった・・・・・。観ておけば去年のベスト10入りは確実だった。終盤の怒涛の展開にただ涙するのみ。「明るい未来はない、もう皆死ぬしかない」という絶望の叫び。『ビッグフィッシュ』〜『チョコレート工場』あたりでもうティム・バートンは終わったと思ってたけど、やっぱり奴はほんとのゴスだったと再確認。ってか、ほんとのゴスのやることは真似できんわ・・・・。僕みたいなスプラッター映画のファンは基本的に能天気やしなあ・・・・。


2009.2.14   天文的、宇宙的奇跡により二人の殺人鬼が同時に復活。今日は祭りだ!殺せ〜!

『ブラッディ・バレンタイン3D』

 これからは3Dの時代だ!飛び出す目玉だ内臓だ!創意に満ちたゴアシーンはもちろん、ホラーのツボを抑えたストーリーもテンポ良く進んで高感度大。謎や伏線もそこそこ手が込んでて、これ、3Dじゃなくてもいけるんじゃない?とさえ思った。アバンタイトルで早速殺しまくる、客を待たせない親切設計も嬉しかったなあ。
 でもどうやら日本公開にあたって裸の美女が殺される残酷シーンが丸々カットされたらしい。ふざけんな!許せん!失望した!

『13日の金曜日』

 『バレンタイン』の思わぬ頑張りでだいぶハードル上がったが、大丈夫か13金リメイク?・・・しかしそれは杞憂に終わった!リメイク版サ・イ・コ・ウ!!!!!!冒頭、ティーンたちを一通り殺して「あれ、映画終わっちゃうんじゃね?」とまで思わせたところでババーンとタイトルが出る、そのあまりのロケットスタートに涙が出た。『バレンタイン』もそうだったし、アバンタイトルで殺しまくるのが流行ってんのかな。確かに新しいし格好良い。真似したい。
 でも本編が完璧かといえばそうでもない。いくつかの殺人シーンはとっても平凡で目新しさがない。ティーンたちのキャラ設定がそこそこ面白いだけに、地味〜に殺されていくのは非常にもったいない。まったくもう、何をやってるんだと。もっと斬新な殺し方を見せておくれ!
 今思うと最高なのはアバンタイトルだけだったのかも・・・・


2009.2.11  今日は映画を見るぞ〜

『ブレイブ・ワン』

 いけ、ジョディー、殺せー!!!
 ジョディの皆殺し行脚もエキサイティングだが、それを追う刑事とのほろ苦い関係の描き方に、さすが『クライング・ゲーム』のニール・ジョーダンだと思った。エンディングが良いなあ。ロマンチックだなあ。

『狼の血族』

 で、そのニール・ジョーダンの初期作品。寝た。何がなにやら。変身シーンと首チョンパは良かったけどね。あとロリなヒロインもね。

『殺人者たち』

 かっこい〜!二人組みの殺し屋に、強盗計画に、裏切りに、ファム・ファタールに・・・・いろんな映画のルーツを感じさせる。ラストシーンも最高。僕も死ぬならこんな風に死ぬ。


2009.2.3

『NOTHING/ナッシング』

 ナタリ監督も作風変えてきたなあ。ちょっとミシェル・ゴンドリーっぽいけど、人体破壊のユーモアはさすがナタリ。主演二人のバカ演技が最高!


2009.1.27

『Mr.ビーン カンヌで大迷惑?!』

 前回の劇場版はアメリカナイズされたよくしゃべるビーン像がつまらなかった。今回はフランスに飛んで思いっきりジャック・タチ風のサイレントコメディに特化。映画としては面白くなったものの、エスプリというか、ちょっと気どった感じが鼻につく。そろそろ本家イギリス流の毒気たっぷりのビーンが見たいぞ!なぜイギリス編を作らないのか?!


2009.1.25

『007 慰めの報酬』

 前作は暴力を真摯に描いて『ヒストリー・オブ・バイオレンス』状態だったが、今度はボンドが完全にジェイソン・ボーン化しているのを見て、「あ、路線変更しやがったな」と思ったけど、とにかくアクションで押しまくる展開に圧倒され、これはこれでとても楽しかった。傷だらけの格好で砂漠を歩くヒーローとヒロインの姿が格好良かったなあ。というか、こんな熱心に007シリーズを見る日が来ようとは!

『ダークナイト』(再上映)

 各映画雑誌で今年度ベストに選ばれているのを見て「ワーストに入れたのはまずかったか」と焦り、もう一度見れば評価が変わるかもと思って再上映を見に行ったけど、やっぱりワーストのままだった。急なストーリー展開だけで観客を引っ張っていこうとする強引なやり方が気に食わん。もっと間をもたせた方が映画的興奮はより高まると思うんだけど。あと、散々ダークなビジュアルと物語展開でかっこつけといて肝心の暴力描写が直接的でないのもダメ。画面上で血が一滴も流されないので生死のリアルが感じられず、正義と悪の論争もただただ頭の中の理屈だけで語られていく印象。
 これよりは『ミラーズ』の方が重要だ!キーファー・サザーランドと鏡しか出てこないのに観客をググッと吸い寄せ汗だくにさせる、あの吸引力を見よ!


2009.1.24

『ミラーズ』

 『ハイテンション』『ヒルズ・ハブ・アイズ』のアジャ最新作だけどキーファー・サザーランド主演でちょっと一般向けなのかと思って見ずにいたが、やっぱり気になって見に行った。そしたら見に行って本当に良かったと心から思える素晴らしい作品だったのでとてもうれしかったデス。やっぱりホラーの真髄ははったりだ!耳元でいきなり「ワッ!」と叫ばれるような反則的ショック演出の連続で心臓が止まるかと思った。観た後は汗だくになっていた。久々に劇場から逃げ出したくなる怖い映画でした。おっさんと鏡だけでここまでビビらせるとは、さすがアジャ!物語の鍵となる謎の女性の過去を描くシーンで急にドキュメンタリータッチのザラザラブレブレ映像になり、アジャの作家性というか、アジャ根性を感じた。


2009.1.20

『エンジェル』

 フランソワ・オゾン最新作。かつての悪趣味や変態要素はますます薄くなってきたけど、これはこれで良い映画でした。飛び道具を使わずとも緊張感や不穏な空気、切なさや可愛らしさを漂わせる、オゾンの新境地ですね。WOWOWでの監督紹介が「アルモドバルに並ぶ女性映画の第一人者」って、違うだろ!オゾンと言えば最初は「フランスのジョン・ウォーターズ」だったんだぜ!『ホームドラマ』を思い出せ!いつかオゾン特集ページを作りたい。


2009.1.18

 ついに見たゾ!『御巣鷹山』以来の渡辺文樹最新作ダ!(『御巣鷹山』についてはこちら
 しかも今回は二本立てグラインドハウス興行ダ!ひえ〜!
 会場はアバンティホール。右翼や公安が来て一時辺りは騒然となったとかそういうのは全くなくて、映画を見に来たお客さんだけがいる非常に和やかな上映会でした。監督のお子さんがもぎりやチラシ配りを手伝う姿が可愛らしくて癒されました。会場にて『ザザンボ』など過去の伝説的な作品の数々がDVDとして売られていたのが衝撃的でした。一枚5000円。買うべきだったかな〜(もう遅い)。

『ノモンハン』

 ノモンハン事件から生還した陸軍大佐とその家族をめぐる濃密なミステリー劇。陰影の深い撮影がまず素晴らしい。ストーリーも、解説のような親切なセリフ回しのお陰で分かりやすいし、真相が明らかになるクライマックスは大いに盛り上がる。そしてヒロインの女優さんがとにかく美しい!素人とは思えない迫真の演技。彼女に日本アカデミー賞主演女優賞を!

『天皇伝説 血のリレー』

 『ノモンハン』が丁寧に作られた厳かな人間ドラマであるのに対し、こちらは荒々しいアクション大活劇だ!天皇家にまつわる複雑な歴史の説明はナレーションに丸投げ、あとは肉体の躍動するアクションあるのみ!こういう驚きがあるから渡辺作品は面白い。監督、ほんとに映画が好きなんだろうな。拳銃を構える姿、格好良かったです!

 一方は膨大な量のセリフによる会話劇、一方はセリフがほとんどない活劇。監督の幅広い演出手腕を堪能できる二本立てでした。変な邪魔が入らず落ち着いて見ることが出来て良かった。『御巣鷹山』の時みたいな爆音ノイズ上映にならなくて良かった。次回作も無事に見ることが出来るのを楽しみにしています。


2009.1.9

『ヘルボーイ/ゴールデン・アーミー』

 2009年最初の劇場映画鑑賞。
 『パンズ・ラビリンス』でアカデミー賞とって大いに貫禄が出てきたなあデル・トロ。今回は『パンズ』の密度の高さを保ったままアクションで疾走する感じ。ステキな奇人変人がたくさん出てきてとにかく萌える。特に超かっこいい気密スーツを身にまとったドイツ出身のガス人間、ヨハン・クラウスが最高!スチームパンクとオカルトとドイツ趣味が高次元で合体した最強キャラ。彼を見てるだけで幸せになれる(そういえば前作の悪役だったサイボーグナチス野郎、クロエネンも格好良かったなあ・・・・)。あと、ヌアラ王女もエルフでお姫様で妹とという素晴らしいキャラ設定だった。極めつけは死の天使!英訳するとAngel of Death!これがものすごい造型。あーもうたまらん。もっかい見たい!


2009.1.2

『ジェノサイバー 虚界の魔獣 2』

 冒頭いきなり子供がズタズタになるシーンでもうお腹いっぱいトラウマいっぱいです。舞台が戦艦内部という限られた空間になり、前作より展開が引き締まった印象。これで終わりと思ったら「3」の予告編が入ってた。また買ってこなくちゃ・・・・。


2009.1.1

 新春ひとり映画大会。大晦日に大阪日本橋の中古ビデオ屋「道楽」で買ってきたビデオをまったり鑑賞。

『ダーク・スター』

 新春一発目。ジョン・カーペンター、ダン・オバノンなどSF・ホラー界の巨人たちが若かりし頃に作り上げた伝説の低予算SF映画。何もない宇宙で働くボンクラたちが抱く圧倒的な虚無感。やることなくて暇で暇でしょうがない、俺たちの人生って一体なんだ?そんな彼らにもやがて華々しく輝く瞬間がやってくる。切なく悲しく美しい、ラスト5分の展開はまさに神だ!初日の出はこの映画の中で涙と共に拝んだのであった。

『ジェノサイバー 虚界の魔獣 1』

 YouTubeで「anime gore」と検索したらこの作品の超残酷場面が出てきたので、気になって本編を買ってきた。見てみた。ビックリした。今でもこういう需要があるのなら、僕がいくらでも作りますよ!本作は90年代に制作された過激な暴力描写が売りのアニメーションで、まずアメリカで先行発売され高い評価を得たとのこと。確かに、飛び散る肉片や体液まで精密に描かれた人体破壊描写はかなりリアルで気持ち悪く、初めて『AKIRA』を見たときに感じたような「アニメは怖い」という感覚を思い出させてくれます。‘ゴアニメーション’(YouTubeのファンがつけてくれた造語)を作る者として、必ず見ておかねばならない作品でした。ただ時代が古いせいか女の子キャラがあまり可愛くなく、この辺はやはり「萌え」という発明の功績は偉大だなと再確認する次第。たとえ描き方が類型的になったとしても、可愛らしさの型ができたことで表現の可能性がさらに広がったと言えよう。そこから『エルフェンリート』という異形の作品が生まれたわけだし。美少女と暴力、美と醜の対比という点では『ジェノサイバー』より『エルフェンリート』の方が際立っている。表現とは進化するものですね。
 あ、あと若本規夫が出てるのが嬉しかった・・・・


2008年のベストテン

 ガーン!何てこった!年末に呆け過ぎてベストテンやるのを忘れてた!というわけで年は明けてしまいましたが「2008年ていえぬシアターベストテン」の発表デス。去年劇場で観た映画の中から10本選んでみました。

ベストテン

@片腕マシンガール
Aホット・ファズ
B28週後...
Cヒルズ・ハブ・アイズ
Dザ・シンプソンズMOVIE オリジナル吹き替え版
Eスウェーディッシュ・ラブストーリー
F落下の王国
Gグローバルメタル
Hクローバーフィールド
Iイースタンプロミス

 去年最も激しく感情を揺さぶられた映画が@。理不尽な暴力に虐げられた人々が団結して共に闘う姿に号泣そして拍手喝采。「映画をもっと楽しもうよ!」という作り手のメッセージも熱かった。最近の邦画の地味、淡白、退屈というイメージをぶち壊すパワフルな大傑作。未見の人はDVDを買って家族、友達みんなで観よう!
 @と同じく映画本来の面白さを改めて教えてくれたのがA。あまりに面白いので劇場に2回行きました。
 Bは去年観たホラーで一番好き。全てが猛烈なスピードで悪い方へ転がっていく絶望感がたまらない。篭城せずひたすら逃げまくる展開も新鮮だった。ロメロの『ゾンビ』に匹敵する傑作。
 Cもホラー映画の超傑作。画面から常に漂う殺伐とした空気、襲撃者たちの圧倒的な恐怖、物語の背景にある悲惨な歴史、そして「やればできる!」という熱いメッセージ。完璧。待ちに待った日本公開、会場の熱気が良い思い出です。続編はまあまあでした。
 
 5位以下は同じ順位でも良い感じ。
 Dは例外でDVDにて鑑賞。テレビ版の吹き替えキャストという本来あるべき形で観ることができて本当に良かった。収録現場の様子とか声優さんたちの思いとか勝手にいろいろ想像して胸が熱くなりました。
 Eはリバイバル上映。約40年前(!)に作られた作品とは思えないフレッシュかつ斬新な恋愛映画。普通の人々の日常を丁寧に観察することで世界の全てを解き明かしていく監督の才能に脱帽。
 Fは一昨年の『パンズ・ラビリンス』に続く「空想って素晴らしいね」シリーズ。『MYST』などのアドベンチャーゲームを思わせる美しい映像はもちろん、ストーリーもアクションありユーモアありでかなり得した感じ。ラスト、思わぬ形で『デス・プルーフ』に通じる映画愛が炸裂。やられた。
 Gはかゆいところに手が届くメタル音楽のドキュメンタリー。メタルは良いなあ。
 H去年最大のビジュアルショック!手ブレ映像が生み出す臨場感にしびれまくった。これを見てアニメーションに手ブレ・ピンボケを使うのが去年のブームになりました。
 Iストーリーに惜しい点があるものの、クローネンバーグの任侠暴力世界がこれからさらに拡大しそうで楽しみ。モーテンセンは去年のベスト・ガイ。

続いてワースト3。

ワースト3


@ピアノチューナー・オブ・アースクエイク
AテネイシャスD
Bダークナイト

 @をわざわざ見に行ってワーストというのも何ですが、とにかく退屈だったので。
 Aはくだらなさ過ぎる!あまりに内容が薄くて悲しかった。メタルをテーマにするならもっと格好良く、バカをやるならもっと賢くやってほしい。
 Bは・・・・・期待しすぎた。ダークでリアルなビジュアルイメージは完璧なんだけど、内容が中途半端。暴力が重要なテーマなのに肝心の暴力描写が少ないし甘い。やっぱり映画に流血は必要だ。次は腹をくくって完全R指定で作ってください。クリスチャン・ベールが本作をもってしても日本でブレイクしなかったのが残念ですが、今年こそ『ターミネーター4』で大爆発する予定なので大丈夫。
 
  期待した映画がどれも期待通り面白かった07年に比べ、08年は少し寂しい印象。まず期待の大きかったホラー作品群『ハロウィン』『ダイアリーオブザデッド』『東京残酷警察』にそれぞれ退屈な要素があり残念。それから『ベティ・ペイジ』(御本人が去年亡くなられました。合掌)も自分の中ではかなりの話題作だったのに驚くほど地味な作りで拍子抜け。『ダークナイト』絶賛の祭に参加できなかったのも残念。あとベスト級と予想される作品をかなり見逃してしまったのも惜しい。『ゲットスマート』『トロピックサンダー』『アイアンマン』などなど。
 
 過去を振り返るのはここらでおしまいにしよう。新たな年がもうすでに始まっているのだ!


2008.12.23

『怒りの山河』

 製作ロジャー・コーマン、監督ジョナサン・デミ、主演ピーター・フォンダのグラインドハウス映画。横暴な土地開発業者に立ち向かう農民。これで熱くならないわけがない!まさに王道中の王道。これぞ映画。『グラインドハウス』に併せて放送してくれたWOWOWの粋な計らいに感謝。


2008.12.22

『フォーガットン』

 フォーガットン、何しとん!(すいません)
 最初はキチガイを扱った映画だったのが、次第に映画自体がキチガイになっていくドライヴ感がたまらん!あまりにとんでもない展開にあーだこーだツッコミを入れてたらあっという間に終わってた。一瞬たりとも退屈させない吸引力。実は傑作なのか?!


2008.12.21

『さらば冬のかもめ』

 これは最高でしょう。全編アメリカ北部の寒々とした空気に包まれているけれど、見終わったら心の中にホッコリと暖かいものが残る。ジャック・ニコルソンは永遠の兄貴だ!


2008.12.20

『キングダム 見えざる敵』

 面白かった!こういう無駄のないアクション映画をたくさん見たいなあ。


2008.12.16

『プロポジション 血の誓約』

 話はいまいちだが雰囲気がイイ!開拓時代のオーストラリア、土地も人間も荒みきった光景はまさに地獄。今度来るバズ・ラーマンの『オーストラリア』にだまされないように本作を見て勉強しておこう。あ〜これでもうちょっとお話が面白ければなあ。惜しいなあ。


2008.12.15

『ディセント』

 今流行のショッキングな導入部に始まり、閉所の恐怖に息が詰まりそうになる洞窟探検を経て、意外なアレの登場によって一気にスプラッターへと加速する。その転調の妙にウットリ。そしてそこからさらに一歩進んで「蜘蛛の糸」を思わせる地獄堕ち(ディセント!)の話になり、映画全体が宗教的なテーマを帯び始める。こんな話を思いついた天才に拍手!ホラー映画の新たな可能性を教えてくれた。必見デスよ!


2008.12.14

『エンゼルハート』

 古本屋でしょっちゅうパンフレットを見かけるので、きっと当時はたくさんの人が劇場に詰め掛けたと思われる一本。
 探偵を主役にしたミステリーだが、ストーリーは単調で退屈でよく分からんかった。雰囲気だけで強引に納得させられた感あり。
 でも『ピンク・フロイド ザ・ウォール』も撮ったアラン・パーカーが作り出す不気味な映像がとにかく素晴らしい。フィルムが少し寂びれたようなざらついた画面には常に悪魔の気配が漂っていて、まさに呪われた映画という印象。この不穏な空気にはずっと浸っていたいような魅力があった。悪魔の話を扱うにはここまでこだわらにゃあかんということです。

『明日に向って撃て!』

 『イージーライダー』『俺たちに明日はない』『ダーティ・メリー クレイジー・ラリー』『バニシングポイント『ワイルドバンチ』そして本作と見てきて気づいたこと。アメリカン・ニューシネマってどれもおんなじ話!つまり追われる者の破滅の美学!そしてロブ・ゾンビの『デビルズ・リジェクト』がいかにニューシネマな作品だったかもよく分かった。スクリーンに散った無法者の末路は確かにどれも格好良かったし、真似したくなる気持ちがよく分かりますよゾンビさん。
 名作としてよく取り上げられる本作だが、実際見てみると、実に実にシンプルなストーリーで驚く。最大の見せ場であるラストシーン一点に向かって全てが無駄なく収斂していく。主人公二人の運命は、名作紹介やらで何度も聞かされ分かっていたけどそれでも十分に衝撃的だった。
 僕も次の作品で真似したくなった・・・・・。


2008.12.7

今週のみなみ会館は燃えている!久々に見たい作品がそろったのでまとめて鑑賞!祭じゃ祭じゃ〜

『落下の王国』

かからないエンジンさんの熱烈なおすすめもあり、気になっていたので見てきました。

 これは見て良かった!冒頭のモノクロのスローモーションからハートをわしづかみにされた。今年度ベストオープニング賞はこれで決まりか?音楽もまた良い!
 「映像はすごいけどストーリーがいまいち」という声を聞いていたので少々心配だったが、なんのその!ストーリーにもがっつり心を持っていかれた。教訓めいたおとぎ話かと思ったら、壮大な冒険活劇だったとは!世界各地のスケールの大きいロケーションが、神話のようなシンプルなストーリーにぴったり合っている。そして描かれる魂の救済と再生。子どもの迫真の演技も手伝って、『パンス・ラビリンス』に匹敵する感動があった。
 さらにすごいのはラスト。エンジンさんも泣いたそうですが、僕も泣きました。あれほど夢のある、映画愛そして人生愛に満ちたエンディングはなかなかないのでないか?感激して思わず拍手しそうになった。今年度ベストエンディング賞もこれできまりか?

『ピアノチューナー・オブ・アースクエイク』

 お客さんの多さに、日本でのクエイ兄弟の人気を改めて実感。同時にミニシアター魂にもボッと火がつく。そうそう、犬とか猫とか女子供の映画ばっかやってないで、もっと幻想を見せろ!もっと猟奇を!もっと変態を!

 そう言って盛り上がってたくせに寝ちゃったんですねこれが。凝りに凝ったダークな映像は初めのうちは面白いけど、同じトーンがずっと続くのでいい加減飽きる。『スカイキャプテン』に似た退屈を感じた。短編なら良いとして、やっぱり長編実写映画は画面とストーリー共にもっと緩急つけてくれなくちゃ困る。その点、クエイ兄弟と同じくアニメーションから実写(というか人間)映画に転じたシュヴァンクマイエルは偉い。『オテサーネク』や『ルナシー』は芸術というよりホラー映画としてしっかり面白い。初期のファンからそっぽを向かれようが気にしない。みんなが好きなこのチェコの巨人は観客へのサービス精神が違うのであった。それとユーモアのセンスも。
 でも同じ作風を続けていくことでひとつのジャンルを築いてしまったクエイ兄弟の仕事振りは尊敬に値する。アニメ作家として理想の生き方ですね。

『東京残酷警察』

 今日の本命はこれ。東京!残酷!警察!英語タイトルはTOKYO!GORE!POLICE!完璧だ、完璧すぎる!
しかし映画の内容は完璧とはいかないのであった。

 今年ベスト1の『片腕マシンガール』に続く和製スプラッター作品だけに、期待は大きかった。以下の感想はその過剰な期待の裏返しとして読んでください。

 徹頭徹尾娯楽作品だった『片腕』に対して、こちらはちょっとゆるい!全体的にテンポがゆったりしてて、間延びしている。アート系といえば聞こえはいいが、見ている者としてはもっとテンポ上げてガンガン突き進んで欲しかった。やりすぎ血みどろ効果満載の戦闘シーンは本当に素晴らしいのだが、中盤のドラマ部分が少々退屈。登場人物も少なく、ポスターなどのビジュアルイメージから感じる狂騒はあまりなかった。ヒロインが本当の敵を見つけて真っ向勝負を挑む終盤はさすがに盛り上がったので、全編この高いテンションを貫いて欲しかったと切に思う。近未来の世界観を伝えるために途中に挿入される架空の冗談CMも面白かったけど、同じことを『ロボコップ』「スターシップトゥルーパーズ』というハリウッド超大作でやってしまったバーホーベンの偉大さを改めて実感する結果となった。やっぱりああいう演出はあくまでおまけのお遊びであって、やはり根底に血沸き肉踊るドラマが必要なのである。

 でも限られた予算で強烈な世界観を作り上げたのはすごいし、数々の特殊な造型物も素晴らしかった。特に、鰐少女やかたつむり女、犬女、リストカッター女子高生あたりの女性クリーチャーのデザインセンスに関しては目を見張るものがあった。というか最高!続編では武装警察VSエンジニア(改造人間の呼び名)の全面戦争を期待します。

 反面教師としての面も含めて、クレイアニメの次回作に向けて大いに刺激となったのは間違いない。次は「僕が見たかった残酷警察」みたいな感じで作ろうかな。


2008.12.2

『タワーリング・インフェルノ』

 パニック映画に必要なもの、それはお涙頂戴ロマンスでもエアロスミスの歌でもなく、ばったばったと人が死んでいく悲惨な展開と、目を覆いたくなる地獄絵図だ!炎に包まれ焼かれる人々、ビルの最上階から絶叫とともに転落する女、無慈悲に絶たれる救いの手・・・・パニック映画本来の魅力である恐怖と絶望がここにはあった!名作!
「ビルはちゃんと作ろう」というシンプルなメッセージも素晴らしい。


2008.11.29

『ダイアリー・オブ・ザ・デッド』

 新京極シネラリーベ怒涛のホラー連続興行最終作は、ゾンビ映画の大本命ロメロ先生の待望の最新作。

 昨今流行の主観映像&擬似ドキュメンタリーの手法を取り入れているが、これは『ブレアウィッチ』でもなく『クローバーフィールド』でもなく、もう少し前のベルギー映画『ありふれた事件』に近い感触。つまり、撮影されたものが怖いだけでなく、惨劇を撮っているうちに自分もそれに加担していく撮影者の姿も怖い。『ありふれた事件』の撮影者は殺人鬼に加担していき、本作の撮影者はゾンビに加担していく。仲間がゾンビに襲われるさまをビデオに撮り続ける撮影者の姿が最大の恐怖である!
 それと同時に、撮影者であることへの誘惑についても語られている。カメラの後ろにまわってしまえば、人は事件の当事者から傍観者へと逃れることが出来る。その誘惑には誰も抗えないのだとロメロ先生は皮肉交じりに言っている。記録こそが重要という使命感に取り付かれた主人公。初めは彼を批判的に見ていた周囲の友人たちも、次第に撮影者に変貌していく。その姿はおかしくも哀しい。

 真面目な社会批判の一方で、ファンを喜ばせるひたすらえげつないグログロ描写も盛りだくさんなのがうれしい。さすがゾンビのオリジネイターが作る作品、今まで見たことのないような新しいゾンビの倒し方が次々に提案されている。特に薬品を使った倒し方が強烈。劇場で思わず「グエエ」と唸ったのは僕一人ではなかった。

 人物描写に面白みがなかったり画面作りが地味だったりで思ったよりインパクトは小さかったけれども、後になってしみじみと考えさせられる良い作品でした。

 あと、ゾンビを手榴弾で爆破する「過激な」じーさんにアカデミー主演男優賞を!


2008.11.28

『フューリー』

 前々から見たかったデ・パルマ先生のSFスリラー。

・・・・・・・・・なんじこりゃ!鑑賞後の困惑と動揺。自分が何を見ていたのかすぐには説明できない、この何ともいえない余韻。デ・パルマは昔から天才だったということがよく分かった。
 序盤の展開は文句なしに面白い。超能力者をめぐる政府の陰謀。捕らわれた息子を見つけ出そうとする諜報員カーク・ダグラスの奮闘。スピーディーな展開。
 しかし中盤から物語は大きく失速。研究施設でまったりと時間が過ぎていく。施設からの脱走シーン、スローモーションを駆使した大げさな撮り方でデ・パルマ節が炸裂。さらに遊園地でアラブ人が大変なことになる。ここら辺でこの映画はちょっとおかしいと確信する。
 そしてクライマックス。終盤の煮え切らない展開にいらいら、都合のいいことをベラベラしゃべるカサベテスにいらいら、なかなか終わらない映画にいらいらしていると・・・・・・ドッカーン!すべてのいらいらを帳消しにする大爆発!そのまま速攻でジ・エンド!これを劇場で見ていたら思わず立ち上がって拍手したに違いない。
 常人には考えつかないこの絶妙(奇妙?)なバランス感覚。ハリウッド大作にもアート映画にも飽きたら、デ・パルマの映画を見よう。
 
 超能力を使う場面はかなり怖かった。派手なSFXを使わず、肉体の破壊描写でじりじりと見せていく手法は大友克洋を先取りしていたのであろうか。『AKIRA』『童夢』の映画化はこんな感じでやってほしい。 


2008.11.25

『デイ・オブ・ザ・デッド』

 恒例、学園祭の独り打ち上げ映画鑑賞会!今年はこれ。シネラリーベ怒涛のホラー連続興行のひとつでもある。
ちなみに火曜日だから男性1000円!シネラリーベ最高!

完全に開き直った宣伝のノリを見てズンドコ映画であることはもはや分かっていたので、肩の力を抜いて何でも楽しむ構えで鑑賞。そうやって見たら結構面白かった。ミーナ伍長と童貞兵士の淡く切ないロマンスがかなり良くて、もっともっと掘り下げていっそメインにしたら泣けるゾンビ映画になったと思う。映画秘宝のライター、ギンティさんが唱えてた「終末黒人最強伝説」が忠実に守られているのにも感動。やっぱりもしもの時に頼りになるのは黒人だ。

 早回し&CGを使った演出には正直ウンザリ。80年代ホラーを支えた監督だったら若いやつの真似なんかせずにもっとどっしり構えて欲しかった。あと走るゾンビもそろそろ飽きたな・・・・。ゾンビ役者さんたちの群舞は見応えあったけど。


2008.11.18

『ボディ・ダブル』(2回目)

 学園祭の準備で忙しいのにWOWOWでの放送をついつい見てしまった。やっぱ面白いわ。一体どこに向かうのかさっぱり分からない展開がめぐりめぐって最後はなぜかハッピーな気分になる、デ・パルマ節が炸裂。とことんスケベでマヌケな愛すべき主人公、ゴージャスで空疎な80年代カルチャー、凄惨なドリル殺人、唐突にかかる名曲「リラックス」、最高にキュートなメラニー・グリフィスなどなど見所は尽きない。『アメリカンサイコ』のパトリックのお気に入りの映画としても有名。一度は見ておかなければならない作品ですな。


2008.10.26

『スーパーバッド 童貞ウォーズ』

 これが大ヒットするアメリカはやっぱりとても良い国だと思う。


2008.10.25

『ハロウィン』リメイク版

 こりゃホラーじゃない、バイオレンス映画だ。いつ殺人鬼に襲われるのか、どうやって殺人鬼と闘うのかといったスリルやサスペンスはほとんどなく、ただただ一般市民が大男の圧倒的な腕力の前に為すすべもなくボコスカ殺されていくのを見せつけられるという、かなり気が滅入る展開。殺害の方法も単調で退屈。はっきり言ってスラッシャー映画としてはあまり出来は良くない。
 しかし、オリジナルの筋から離れた瞬間、前作『デビルズ・リジェクト』でも見せた男泣きのロブ・ゾンビ節が炸裂する!冒頭、殺人少年マイケル君の精神世界の象徴としてKISSの「God of Thunder」を持ってくる辺り、天才としか言いようがない。そうかあの曲の後ろに入ってる子供の声はマイケル君なのか!
 そして無駄なく決まったラストから一気にエンドクレジットに突入する辺りでまた泣きそうになった。なんか世界中のメタル・キッズへの賛歌にも思えてくるなあ。暴力衝動万歳!


2008.10.7

『裸の銃を持つ男2 1/2』

 吹き替え版にて鑑賞。とっても面白かったんだけど、今感想書こうとしたらほとんど内容を覚えてないことが分かった。でも良し!


2008.10.5

『デス・プルーフ』(3回目)

 3回目でやっと面白くなってきた。サントラが良いよ〜。


2008.10.4

『ダーティ・メリー クレイジー・ラリー』

 すごいもん観てしまった!我が心の映画に認定!全ての映画はこのように終わるべきだ。横で何気なく見ていた父が思わず「あー!」と叫んだ。

『トランスフォーマー』

 こんなんよー作るわ。やっぱりハリウッドってすごい。味方ロボットが集結する場面はかなり燃える。終盤の延々続くバトル(というか戦争)も最高。人間のパートはいまいちだったけど。特にハッカー連中。映画でハッカー野郎がキーボードをそれっぽく叩いて「よっしゃ」とか言ってるのを見ると無性に腹が立つのは僕だけでしょうか。でも、主人公とヒロインのロマンスはちょっと良かった。童貞野郎がジョックスの彼女を振り向かせるっていう展開が最高だね!あと主人公の両親の掛け合いも面白かったなあ。


2008.10.3

ボラット 栄光ナル国家カザフスタンのためのアメリカ文化学習(2回目)

  2回目はさらに面白かった!全編コメディ映画史に残る名場面が目白押し。特にボラットがアメリカ南部の骨董品店をめちゃくちゃにするシーンは何度観てもため息が出る。商品を次々に破壊していくボラットの見事な身のこなしに惚れ惚れ。そして電気スタンドが店長の頭を直撃するタイミングの完璧なこと!この場面に代表されるように、計算と偶然が絶妙に絡み合っているのがこの映画のすごいところ。
 劇場で観た時はエンディングのカザフスタン国歌に字幕がついてなかったけど、今回のWOWOW放送ではちゃんとついてて得した気分。これで最後まで笑える。


2008.9.30

『リトル・チルドレン』

 単なる不倫の話と思ってたら冒頭から爆笑の連続。下手なコメディよりずっと笑える。日常から脱線していく主人公たちの行動から目が離せない。ビデオの録画が途中で切れていたというハプニングがあり慌ててTSUTAYAに走ってDVDを借りて来て続きを見たくらい目が離せない。「今と違う人生を求めるのは人間の渇望だ!文句あるか!」というヒロインの主張が格好良かった。変態野郎の業の深さにも戦慄した。


2008.9.28

『アートスクール・コンフィデンシャル』

 芸大のイタい感じがよく伝わってくる。ほんとにあんな感じなのかな。最近芸術とはなんぞやと考える機会が増えたから、かなり面白く観られた。村上隆に見せてやりたい。
 アートで成功するのに必要なのは才能ではなく時の運、どうしてもダメならセンセーショナルをぶちかましてやれ!皆が君に振り向くぞ!という皮肉に満ちたヤケクソなオチが素晴らしい。「Picasshole=ピクソ」の字幕翻訳は近年稀に見る大傑作だと思う。偉い!


2008.9.23

『ポセイドン・アドベンチャー』

 これはすごい!オールタイムベスト10に食い込む予感。映画好きならこれは一回見とかなあかんよ!初めてパニック映画を本当に面白いと思った。これは単なるスペクタクルでなく、宗教と人間についての物語である。クライマックスは何度見ても鳥肌が立つ。これに比べると『タイタニック』はクソだ!やっと分かったよ!
 船長がレスリー・ニールセンだったのも衝撃的だった。そら転覆するわ。彼がメインの冒頭部分だけ『裸の舵を取る男』に見えたね。 


2008.9.20

『グローバルメタル』

 前作よりずっと面白くなった!僕がエジプト旅行でやろうとして失敗したことをサム・ダンは完璧にやってのけた!世界中で増殖するメタル民族(メタル人?)の実態を捉えた最新の現地レポート。世界鋼鉄物語とでも言おうか。内戦、政治腐敗、思想弾圧で苦しみ怒り絶望した若者たちは、メタルを聴いて立ち上がるのだ!クライマックス、アイアン・メイデンのインド初ライヴで絶叫するキッズたちの姿は涙なしでは見られない。


2008.9.18

『ジーザス・クライスト・スーパースター』

 何回観ても良い。捨て曲がない完璧なミュージカル。セリフが全部歌に取り込まれているのもすごすぎる。すべてのミュージカル映画はこのように作られるべきだ。


2008.9.16

『エバン・オールマイティ』

 アメリカでのスティーヴ・カレルの人気がよくわかる一本。まさに『40歳の童貞男』のヒットを受けて作りましたという感じで内容は浅いけど、彼のリアクション芸の妙が存分に楽しめるので問題なし。それにしても、『ブルース・オールマイティ』で「ジム・キャリーの物真似」という難度の高い技を披露した彼がついに今回ジム・キャリーを食ってしまったというのは、実に感慨深い。アメリカのコメディも流れが変わってきたということですね。ジム・キャリーもがんばって盛り返して欲しいなあ・・・・。


2008.9.13

『片腕マシンガール』

 なかなか見に行く暇がなくて危うくスルーしかけてたけど、SAPPOROショートフェストで出会った方からその面白さを伝え聞いて何が何でも見たくなってきて、京都に帰るなり荷物背負ったまま速攻でみなみ会館に直行しました。
 
 で、感想は・・・・これは今年のベスト1です!そして僕のオールタイムベスト邦画です!もちろんウルトラ残酷描写も最高なんですが、驚いたのはドラマ部分の質の高さ!笑っちゃうほど下品で暴力的な見せ場が盛りだくさんだけど、作品の根底には熱く切なく悲しいドラマがある!血みどろホラーを見に来て、まさか涙を流して大泣きすることになるとは思わなかった!ある場面でほんと自分でも不思議なくらい涙が止まらなくなって、一時スクリーンが見えなくなったよ!これはほんとにおすすめデス!主役の子も最高だった!


2008.8.31

『ワイルドバンチ』

 大学院入試を翌日に控え、男がするべきことは何か?最後の復習?否、『ワイルドバンチ』を観ることである!
アウトローたちの壮絶な死に様にただむせび泣く!「Let's go」「Why not」は苦難を乗り越えるための合言葉だ!


2008.8.24

『アポカリプト』

 これ、去年に映画館で観てたらベスト1だったかも。メル・ギブソンは天才。時代考証が間違ってるだのキリスト教のプロパガンダだのつまらん議論はどーでもよい!やつらはすぐそこまで迫ってきている!走れ!ジャガー!走るんだ〜〜〜!


2008.8.9

『俺たちダンクシューター』

 『俺たちニュースキャスター』『俺たちフィギュアスケーター』に続くウィル・フェレル作品だから今回も邦題は絶対『俺たち』路線だとは思うけど、『俺たちバスケットボーラー』は変だなあ、『バスケットボールプレーヤー』かな、難しいなあ、邦題どうすんのかな、と勝手に心配してたら『ダンクシューター』・・・・・。配給会社の人って偉い。

 今アメリカで公開中のウィル最新作は原題が『Step Brothers』だから、邦題を今から勝手に予想すると『俺たちステップブラザーズ』あるいは『俺たち義理の兄弟』のどっちかだと思います。果たしてこの通りになるのか、それとも今回のように予想の上を行く粋なタイトルが飛び出すのか。もうワクワクしますね。

で、映画の方はコメディというよりは真っ当なスポ根映画だった!観る前はアフロのウィル・フェレルがまた何かバカをやるのだろう、さあ笑わせてもらいましょうとしか思ってなかったのに、劇場を出る頃には胸にじんわりと感動が残っていたという、驚くべき作品。無理にギャグを挟まなくてもストーリー展開だけで十分に観客を楽しませることが出来るという作り手の余裕を感じた。

 ウィル・フェレルは相変わらず最高だったけど、脇のウディ・ハレルソンも落ち着いた演技でドラマ部分に説得力を与え存在感を示していた・・・・というか、ロン毛がかわいい!
 全編を彩る70年代カラーも良い感じ。この辺のこだわりには『グラインドハウス』に通じるものを感じて楽しい。

 『ホット・ファズ』『スネークフライト』の時も思ったけど、もうバカ映画をバカにして見る時代は終わった。というか、バカの皮をかぶりながらも扱ってる主題を茶化したりパロディにしたりせず、内容できちんと勝負してくる作品が現れ始めたのだ。これからはバカ映画が娯楽作品のスタンダードになるであろう。秋に公開の『ゲットスマート』がおそらくこの流れの最新作。期待しましょう。

『ダーク・ナイト』

 う〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ん、期待しすぎたかなあ〜〜〜〜。観た後の印象としては、前作『ビギンズ』の方が好きだったりする。
 今回の作品は、展開が速過ぎてついていけず、状況をつかんで頭の中で整理するのに精一杯で人物の心情を味わう余裕はなく、鑑賞後はラストシーン以外ほとんど印象に残っていない(というか忘れた)という、僕の映画鑑賞人生においてかつてない異常事態が発生。 とりあえず、詰め込みすぎでしょうこれは!あと30分足して3時間じっくり見せるか、いっそテレビシリーズで複数に分けて放送するとか。とにかくそれくらいに物語の密度が濃い。
 描かれる内容自体はとてもエキサイティングで面白い。だからこそ見る側としては一発で把握したいし、話の流れについていきたいと思う。それができなくて大いに欲求不満になってしまった。

 正直、僕の体力も落ちた!スピーディーな展開に必死になって喰らいつくのはもう疲れた。『俺たちダンクシューター』のようなまったりした映画を見てまったりと余生を過ごそうと思う。でも『ダーク・ナイト』に対する世間の高い評価を聞くと、祭に参加できてないさびしさが募る。もっかい見るしかないのだろうか。

 でもさ、劇中にはっきり描かれないままいつの間にか人物が誘拐されちゃったりするのはどうなのよ。ちょっと描写を省きすぎてない?あと、演出がいちいち深刻で、ユーモアが一切ないのも気になる。別に息抜きのために笑える部分を入れろという意味じゃなくて、もう少し演出にひねりが欲しいということ。全編これ大真面目な作りなので、制作者に対して「Why so serious?」と言ってみたくもなる。
 以上、期待して観た反動で出てきた文句でした。

 でも、ここまで暗い作品をメジャーの商業映画として作って、しかもそれが大ヒットというのは痛快ではある。この勢いに乗ってベール様もついに日本でブレークする気配である。だからこそ心から「良かった!」て言いたかったんだけど・・・・。悔しいなあ。

追記:文句があとひとつ。黒いものがバサバサ動いてるだけで何が起きているのかさっぱり分からない格闘シーンにはもう我慢ならない!新生バットマンシリーズが目指すリアリズムの限界がこの及び腰の格闘シーンに現れているのではないか?


2008.8.4

『砂塵』

 西部劇。胸を打つドラマあり、ユーモアあり、銃撃戦あり、キャットファイトありでかなり面白い娯楽作品であった。こういう映画をたくさん見たいなあ。軽妙なセリフで笑わせてくれるジェームズ・スチュアートがだんだん小藪千豊に見えてくる。でもまあ、とりあえずツンデレ・ディートリッヒに萌えることにしましょう。


2008.8.1

『スネーク・フライト』

 思ったより真面目な作りで驚いた。企画だけ聞いたときのバカバカしい印象は本編では一切なく、飛行機にヘビが放たれた場合に想定されるあらゆる事態をひとつひとつ丁寧に描き、正当なパニック映画の趣がある。バカ映画をバカにして見る時代はもう終わったのだ。いちいち気分が悪くなる嫌な死に方の数々もグッド。


2008.7.26

『テネイシャスD 運命のピックを探せ!』

 ちょっとアホ過ぎて引いた・・・。ロック(というかメタル)を描くのにここまでダサくやらなくてもいいんでないか。ロックし続けることの格好良さについてはスポンジボブの映画のほうがより雄弁に語っている・・・・ってか、今回のこれはロックの映画じゃなくてテネイシャスDの映画か。そう考えるとそこそこ楽しい出来。映画としてどうこうと言うより、とにかくテネイシャスDの曲が素晴らしい。CD欲しい。
 ジャック・ブラックの本質を見られたのも良かった。『カンフー・パンダ』とか出てる場合じゃないですよ。チョイ役のベン・スティラーとティム・ロビンスもそれぞれ素晴らしい。アホをやる人は偉い。
 
 僕もサントラにメタルをばんばん入れたクレイアニメを作りたいぜ(もちろん内容は剣と魔法の世界)。 


2008.7.24

『ガンダーラ』

 『ファンタスティック・プラネット』のルネ・ラルーの最後の作品。『ファンプラ』に比べると評価が低いようですが、こちらもなかなかどうして素晴らしかった。確かに絵柄のインパクトは弱いけれど、ラルー流の奇抜かつどこか牧歌的な不思議な戦闘描写、遺伝子操作の失敗で生まれた‘トランスフォーム’たちの面白すぎる造形など見所多し。未来世界で繰り広げられる銃撃戦も迫力ある。全編を貫く独特の暗さにも惹きつけられる。『ファンプラ』と同じく何度も観たくなるアニメーション作品。
 ラルー作品を2つ観て、彼の作品の魅力は単にその奇抜な絵柄やデザインにあるのではなく、弱者による抵抗そして革命という、観る者の胸を熱くするストーリー展開にあるということも分かった。両作品とも「立ち上がれ!闘え!」という話。あとは『時の支配者』観なきゃな・・・。


2008.7.18

『ヒストリー・オブ・バイオレンス』(3回目)

 『イースタン・プロミス』の余韻からまだ覚めず、ふとこの映画をまた観たくなった。もう一度観て、また感動した。これは何度観ても良いね。暴力という主題を最も真摯に扱った映画。ハワード・ショアの音楽がちょっと『ロード・オブ・ザ・リング』入ってるのも良いね。


2008.7.16

『イースタン・プロミス』

 クローネンバーグ&モーテンセンのコンビでヤクザの話!ということで前作『ヒストリー・オブ・バイオレンス』を超える衝撃を期待していたら、意外や意外ものすごくまっとうな映画で若干拍子抜け。リンチの『ストレイト・ストーリー』みたいだ。うーん、やはり天才はこちらが予想するのと違うボールを投げてきますなあ。
 
 でも先入観を捨てて観るとまた評価が変わるかもしれない。もう一度観て確認したい伏線がたくさんあったし、前作同様の寸止めのラスト(「えぇ、ここで終わるの?!」)も一回見ただけじゃ味わいきれないくらい意味深長な感じ。何より、全編を貫く緊張感がたまらなく心地良い!常に暴力の気配がするピリピリとした空気。まさに至福の時間。
 クローネンバーグ印の超絶残酷描写もやりすぎで絶好調。とどめの一刺しのシーンでは多くの観客が「うわ〜」と呻き声をあげた。あれ、どうやって撮るんだろう・・・。

 俳優さんも良いな〜。主役のモーテンセンはクリスチャン・ベール、ダニエル・クレイグに続く「僕が惚れた男」に認定。ナオミ・ワッツは『マルホ』以来久しぶりに観ましたが、何かもうこれくらいの演技は余裕ですね。改めてお美しいと思いました。これからもがんばってください。ってか、この人もう40か!信じられん。モーテンセンに至ってはもう50だ!役者って偉い。

追記:やはり『ヒストリー・オブ・バイオレンス』と同じ主題を勝手に想像していたために、終盤の展開に大きな違和感を感じることになった。主演俳優が同じとはいえ、これは完全に別の映画(そもそも脚本家が違うわけだし)。そう考えるとこれはこれで一人の偉大な男の映画として感動的・・・・あぁ、やっぱりもっかい観たい!


2008.7.11

『ホット・ファズ』(2回目)

 2回目でもまったく飽きない。もしかしたら何回観ても飽きないかもしれない。強大な敵を前にしてやけくそになって闘いを挑む、こういう「やればできる」精神の話が一番好きなんです。


2008.7.5

『ホット・ファズ』

 うおおおおおおおおお!熱い!これは熱いぞ!映画を観ながら思わずガッツポーズをとってしまった!まず作り手のやりたいことがちゃんとあって、それを無理なく実現させるために巧妙に伏線を張り、細かいエピソードを重ねていく。脚本のお手本にしたいくらいよく出来た作品。語るところできちんと語り、弾けるところでとことん弾けるのが偉い。


2008.7.3

『トゥモロー・ワールド』(2回目)

 テレビのちっちゃいちっちゃい画面で観ると、少し熱が冷めてしまった・・・・。演出にちょっとわざとらしさも感じてしまったり・・・・。劇場で自然にあふれ出てきたあの涙は、まさに映画の世界を体感したかけがえのない瞬間だったのであろう。あの時ほんまに「世界は変えられる!」と思ったもんね。やっぱ良い映画は映画館で観なあかんで。祇園会館ありがとう。


2008.7.1

『スウェーディッシュ・ラブ・ストーリー』

 スウェーデンの知られざる巨人ロイ・アンダーソンの幻の処女作。これがこれが大傑作!ヒロインの少女アニカのあまりの可愛さに、映画を観ている間に死ぬかと思った。いや実際100回くらい死んでいたのかもしれない。それくらいアニカ萌え〜!でも、初恋のときめきを描くだけに終わらず、周りの大人たちのセリフでアンダーソン節が炸裂する。世の中に対する苛立ち、絶望、諦め・・・・・それでも人生は続く・・・・。終盤の展開の意外なこと、幻想的で美しく、涙が出るほど切ないこと!言葉ではまだうまくまとめられないので、とにかく観ろ!と言いたい一本。

『愛おしき隣人』

 個々のエピソードの破壊力は前作『散歩する惑星』より落ちるし、前にやったことをだらだら続けてる感じがしないでもない・・・でも映像表現はさらに凝ってて見応えがあるから良しとするか・・・てな感じでなめてかかってたら、ラストの1カットで動揺した。それの意味がすぐに飲み込めなかったのが悔しいが、あの1カットで映画の評価が変わった。こんなに強烈な形での人間賛歌がかつてあったか。でも個人的には前作の絶望スパイラルの方が好きだったりする。


2008.6.22

『ほしのこえ』

 登場人物を二人に絞った時点で勝利。時間に引き裂かれる男女のやりとりだけを描く。この発想はすごいなー。しかも一人で作ったんですって。焦るぜ。

『秒速5センチメートル』

 第一話、第二話は終始デレデレニヤニヤしながらスケベ心満開で見てしまったけど、これでよかったんでしょうか。
でもだんだん主人公がむかついてきた。もてもてじゃねーか一体何が不満なんだこの野郎。
 それにしても第三話内容なさ過ぎ。大人になったセカイ系人間たちの心境をもっと詳しく見てみたかった。
 


2008.6.17

『ビースト 獣の日』

 ビデオ邦題『ビースト 悪魔の黙示録』。
 下北沢映画祭0.3の会場でマイミクの方にビデオをいただきました。ありがとうございます。
 
 これは・・・アレックス・デ・ラ・イグレシア監督の最高傑作である!変人たちがどれだけ暴走しても話の軸がまったくぶれないし、彼の作品の定番である「どつきあい」も迫力満点。暴力が支配する腐敗した世紀末の世界観もダークで素晴らしい。一見奇をてらったアンチヒーローのように見えて、実は誰よりも必死にこの世界を救おうとしていた主人公。映画自体も彼の姿に似て、黙示録を題材にしたオカルトホラーのようでありながら、実は現代都市の荒んだ状況を鋭く描いた道徳的な作品であった。映画の舞台は20世紀末のスペインだったが、今のニュースで中学生がホームレスに火をつけた事件などを聞くと、21世紀の日本にも‘悪魔’がだらだらと生き続けているのが分かる。
 
 そんなわけでこれは今観直されるべき映画でしょう。江原みたいなスピリチュアルカウンセラーも出てくるし。
 
 あと個人的には主人公に協力するヘヴィメタ愛好家のデブが面白かったです。

 いろんな意味でやる気の出る映画。おすすめ。


2008.5.29

『タクシデルミア ある剥製師の遺言』

 映像表現だけで観る者に大きなショックを与える、近年稀に見る挑戦的な作品。映画は愛だの勇気だの平和だのちゃちなメッセージを伝えるための道具ではなく、鑑賞すべき芸術作品なのだということを教えてくれる。
 全体の雰囲気がドイツのバンド「ラムシュタイン」の世界によく似ていて、徹底した残酷・悪趣味表現の美しさにしびれっぱなしでした。


2008.5.23

『モンティ・パイソン 人生狂騒曲』

 モンティ・パイソンの歌を集めたCDを正月に神戸の中古レコード屋さんで買って、それ以来ヘビーローテーションで聴きまくってるんですが、ほんとに素晴らしい!下品な歌詞を楽しいメロディーにのせて歌うセンスは『サウスパーク』が絶対影響受けてるはずだし、「Sit on My Face」「Medical Love Song 」の悪趣味はゴアグラインドの元祖かも。

 で、この映画も名曲ぞろい!「Every Sperm Is Sacred」(すべての精子は神聖なり!)は本当に必見です。コントもやるせないオチのものがそろってて、モンティ・パイソンの人生観が凝縮されてます。これがメンバー全員がそろった最後の仕事というのも納得。


2008.5.17

『ザ・ネット―ユナボマー、LSD、インターネット』

 昨日「イメージフォーラムフェスティバル」のパンフレットを買い忘れたので、また行って来ました。というわけで昨日に続いて「ヤング・パースペクティヴ2008」の前夜祭です。

 今回観たのは海外招待作品のドキュメンタリー映画。アメリカの元数学者の爆弾魔セオドア・‘ユナボマー’・カジンスキーを軸に、インターネット、LSD、ヒッピーカルチャー、メディアアート、軍事産業などがいかに互いに結びついていたかを関係者の証言や資料をもとに示していくという内容。一見何のこっちゃという感じですが、これがなかなかスリリングで面白い!ドラッグ、思想、テクノロジー、そして国家的陰謀が複雑に絡み合うさまはまるで『ビデオドローム』や『スキャナーズ』などのクローネンバーグの作品を観ているようです。自分の頭の中で整理しながら観ないと置いてけぼりになるほどややこしい内容なんですが、好奇心が先立って最後まで飽きずに観られます。全体を把握するためにももう一度観たい。NHKでやってほしい。


2008.5.16

『スラヴォイ・ジジェクによる倒錯的映画ガイド』

 18日の「ヤング・パースペクティヴ2008」の上映を前にその前々夜祭として、同じイメージフォーラムが主催する映画祭「イメージフォーラムフェスティバル」をのぞいて来ました。会場は京大の近くにあるドイツ文化センター(ダルデンヌ兄弟の『息子のまなざし』もここで観たなぁ)。今回観てきたのは海外招待作品です。

 まずこのタイトルが格好良すぎてずるい。絶対観たくなるに決まってる。
 で、内容は、スラヴォイ・ジジェクという思想家が映画について二時間半ひたすらしゃべりまくるというもので、初めは眠くなるだろうなと思ってたら、このジジェクさんがなかなかおもろいおっさんで、引用する映画の雰囲気に似せたセットの中で自ら登場人物を演じてみせるなど見所が多く、またいろんな映画が矢継ぎ早に紹介されていくので飽きることなく一気に観られました。ジジェクさんの話自体は分かるような分からんような感じでしたが、その熱いマシンガントークにとにかく圧倒されます。外国語訛りの英語が、聴いてるうちにだんだん心地よくなってきます(観た後すぐに真似したくなる。「シネマ!」の言い方とか)。
 
 引用される映画にデヴィッド・リンチの作品が多かったのも楽しく観られた理由。彼の作品の名場面集という趣きもありました(『ワイルド・アット・ハート』の頭部爆発とか)。全体的にヒッチコック映画とリンチ映画が二本柱になっていて、アメリカではヒッチコック以降はリンチしかいないのか、と思えるほど。面白かったのは、『ブルー・ベルベット』のドロシーの部屋の話。ジジェクさんが言うにはリンチ作品に出てくる密室は、あらゆる悪が行われる地獄なんだそうです・・・・うん、この言い方は格好良いね。

 リンチ先生の偉大さを再確認する一方、ジジェクさんの作品選択が安易な気もした。やっぱり変態の作った映画のほうが精神分析学としてはしゃべりやすいんだろうな。つまり、「映画の倒錯的ガイド」じゃなくて「倒錯的映画のガイド」になってる。誰もが観たことあるメジャーな商業映画(『タイタニック』とか)から誰も気がつかなかった深層心理をあぶりだす、みたいな仕事も見てみたい。

 ジジェクさんがほんとに映画が好きなことはよく分かった。大学の図書館にも彼の本があるから、今度読んでみようと思います。


2008.5.4

『もしも昨日が選べたら』

 あまり期待せずに観てたら、これが大傑作!これは21世紀版『クリスマス・キャロル』だ!必見!


2008.4.27

今年三度目の祇園会館。男の子向けアクション映画二本立て!かと思ったら実はシリーズ3作目二本立て!だった。うーむ、祇園会館はなかなか粋なことをしてくる。

『ボーン・アルティメイタム』

 面白かった〜。要は『ユナイテッド93』の飛行機をマット・デイモンに置き換えた感じ。殺し屋が追いかけっこをするだけという実にシンプルな構成なので、シリーズ前2作のストーリーを全く知らなくても十分楽しめる。むしろここまで臨場感を高められると、もうややこしいストーリーなんて必要ない。人が走り、人が殴り合い、車がクラッシュする。映画はそれで十分なのだということを証明した力作。ラストもかっこい〜。

『バイオハザードV』

 で、こっちは久しぶりに「金返せ」と思った問題作。もともと好きなシリーズではなかったけど、ゾンビが出てれば間違いはないだろうと思って油断していた。まさかここまでひどいとは!「近未来」「荒野」「美女」「ゾンビ」と、娯楽映画の材料としてはこれ以上ないくらい完璧な要素がそろっているにも関わらず、全く盛り上がらない!悲しい!極めつけは、テーマソングが僕の好きなバンドEMIGRATEの曲らしいからせめてそれだけでも良しとしようと楽しみにしていたら、エンドクレジットで流れたのは日本のコーダとかいう人の曲だった!なんでも日本公開にあたって曲を差し替えたらしい。余計なことすんなバカ!・・・・あるいは、そうでもしないと客が入らないから仕方がなかったのか、と納得してしまうほどの出来の映画です・・・・いや、やっぱり曲の差し替えは許せん!


2008.4.25

『反撥』

 ヌーヴェルバーグ風のお洒落映画かと思ったら、『ハロウィン』も『ポルターガイスト』も『イレイザーヘッド』も『殺しのドレス』も裸足で逃げ出す異常心理超常現象正調怪談びっくらかしスラッシャー映画だった。反撥!というよりも発狂!という方がふさわしい。ポランスキーはすごい人だったんだなあ。カトリーヌ・ドヌーヴが若い頃は不思議ちゃんだったのも驚き。


2008.4.20

『大日本人』

 劇場公開時はあちこちで叩かれていたのでどんだけひどい映画なのかと思ったら、めちゃくちゃいい映画じゃん、これ!松ちゃんの今までの仕事は「恐怖のキョーちゃん」ぐらいしか知らないし、雑誌の映画評コラムでは何だか偉そうだしで、彼に思い入れは全然なかったけど、これを観て印象がぐっと良くなった。映画としてよくできてるよ、面白いよほんと!はじめはバカバカしくて笑ってたけど、主人公の境遇に思いを馳せているうちに無性に切なくなってくる。うん、もっかい観よう。あと、大佐藤と匂ウノ獣の掛け合いは映画史に残る爆笑シーン。「死ねー!」の間合いとか、「この国を〜まもるものだ私はー!」の台詞回しとか、何度も観たくなる中毒性がある。
  
 ラストの展開で怒ってる人が多いけど、あれは最高でしょう。主人公の置かれた状況がガラリと変化したのを映像として実に巧みに表現してる(『ホーリー・マウンテン』にも似てる)。エンドロールはちょっと余計に感じたけど、観客へのサービスと考えれば別に怒るほどのことでもない。


2008.4.15

『Gガール 破壊的な彼女』

 アンナ・ファリスのファンとしては見逃せない一本。でも、映画の内容はいまいちだった・・・。はじめに思いついたときはあんなに面白く見えたアイデアが、ストーリーをこねくり回しているうちにだんだん色褪せていき、自分のアイデアは本当に面白いのか?という不信に陥り、結局できあがった作品はグダグダに終わってしまう・・・・そんな制作者の悲劇を目の当たりにして、深く同情したのであった。
 
 でもアンナ・ファリスはかわいかった〜。『絶叫計画』シリーズ以外のメジャー作品でしっかり演技してるのが新鮮。主役のユマ・サーマンより良かったです。そうか〜、アメリカではユマ・サーマンとタメを張れるぐらい人気なんだな〜。日本でも人気出て欲しいな〜。


2008.4.5

『クローバー・フィールド』

 とりあえずハッドよくがんばった!あんたが一番偉い!


2008.4.1

『シン・シティ』(2回目)

 改めて観ると、僕はこの映画から無意識に思いっきり影響を受けていたことがよく分かる。やっぱり残酷って良いね!原点に帰ろう!


2008.3.30

『スモーキン・エース 暗殺者がいっぱい』

 作品の出来はともかくとして、監督のやりたいことが僕には死ぬほどよく分かる!男なら一生に一度はこういう話を撮らなければならないのだ!


2008.3.20

『ナチュラル・ボーン・キラーズ』

 先日見た『デビルズ・リジェクト』の影響で、とにかく人を殺しまくる映画が無性に観たくなったのでDVDを買いました。500円でした。昔一度観てトラウマになってたけど今観ると意外にあっさりしてる。当時は革新的だったであろう凝りに凝った映像が今だとかえってダサく見えることに時代の変化を感じました。それでもやっぱり刑務所で暴動が始まってからの展開は面白い。ラストまで一気に観てしまう。主役カップルよりも脇の狂ったおっさんたちの方が格好よかった。トミー・リー・ジョーンズは最近の缶コーヒーのCMからは想像つかないほど危険な感じ。


2008.3.19

『ザ・シンプソンズ MOVIE(オリジナル吹き替え版)』

 やっとおなじみの声優さんたちの声で観られた!うれしい!大平透の年齢を感じさせないテンションの高い演技が圧巻でした。そしてバートとリサの声、改めて聴くと本当に可愛い。その他の脇役キャラたちもテレビ版と同じ声優さんがそろっていて感動的でした。あと、DVD特典の未公開シーン集がやけに面白かった。本編からはカットされたのが惜しい。


2008.3.16

『リトル・ミス・サンシャイン』

 なんと気持ちの良い映画だろう。これがPG−12?多分おじいちゃんのせいだな。


2008.3.5

『デビルズ・リジェクト』

 前作『マーダー・ライド・ショー』未見でも十分面白かった!こんなにファックファック言う映画も久しぶり。本編を観た後、ラストだけ何度も観なおした。オープニングも大好き。


2008.3.4

『炎のいけにえ』

 一応ひとり映画祭のクロージング作品でしたが、なんじゃこりゃ!ストーリーがさっぱりわからない!きちがいじみたオープニングと冒頭の死体安置所での幻想シーンでこれからの展開におおいに期待させるが、その後はカーレースやら神父やら犯罪博物館やら洪水やら聖書やらが支離滅裂に登場して意味不明の無間地獄。ある意味『インランド・エンパイア』より難解な映画だった。

『エディット・ピアフ 愛の賛歌』

 『エコール』のエヴァ先生ことマリオン・コティヤールがアカデミー賞を獲った作品(おめでとう)ということでマリオン目的に観てみましたが、これほど実験的で革新的な映画だったとは!これからの伝記映画の新たなる指標となるだろう。同じくひとりの歌手の伝記映画である『ウォーク・ザ・ライン』の一億倍は面白い。
 
 死の床にあるピアフの混濁した意識をそのまま脳内中継したような、時間の流れが錯綜した構成が見事!ある人間の人生の面白いところだけを切り取って順に並べたのは『グッドフェローズ』だったが、この映画は面白いところを切り取って一旦それをばらばらにして、ピアフの意識の流れに沿って再構成するという離れ業をやってのけている!そして映画の終盤ではプライアン・デ・パルマも真っ青の映像トリックが炸裂する!戦慄せよ!

 マリオン・コティヤールの女を捨てた熱演がもうなんかすごすぎてようやるわとしかいえない。主演女優賞受賞はサプライズでもなんでもない。


2008.3.2

ひとり映画祭もいよいよ大詰め。

『アマゾンの腹裂き族/猟奇変態地獄』

 猟奇変態地獄!何と美しいタイトルだろうか!これぞまさに声に出して読みたい日本語!大きな声で何度でも叫びたい。猟奇変態地獄!猟奇変態地獄!猟奇変態地獄!本編も内臓食いでポルノで素晴らしかった。これぞ映画だと言ってしまいたい!

『スナッフ』

 意外にも全編面白かった。女優さんが皆かわいいし、色彩が何だかポップだし、荒んだ空気がビシビシ伝わってくるし。こういうのを汚い劇場で観たい。

『カノン』

 『カルネ』の続編。これはフランス版『タクシー・ドライバー』だ!映画の作りはとことん挑発的だが中にしっかりと熱いものがある。


2008.2.27

『スキャナー・ダークリー』(2回目)

 2回目観るとやっぱり単独の作品としては弱い感じ。原作のイメージはばっちりつかんでいるけれども。薬中トリオが面白い。


2008.2.26

『地獄の貴婦人』

 展開が速いので物語を把握できてませんが、異様な作品であることはよく分かった。フランス人もやればできるじゃん!

『最終絶叫計画4』(2回目)

 また観てしまった。「テンプラ、スシ、サシミ〜」

『血の魔術師』

 オープニングの格好よさにしびれ、ラストの驚愕の展開に戦慄した!

『血の祝祭日』

 ついに観た血みどろ映画のルーツ。話はムチャクチャだけど、台詞回しやカメラワークに変な味があって病みつきになる。女性たちのおしゃれな60年代ファッションとかカリフォルニアの青い空もポップで楽しい。


2008.2.25

『アードマンコレクション2』

 おおいに参考になる。

『最終絶叫計画4』

 やっと観られた!観客がアンナ・ファリスを見たがっているということを作り手もわかっているようで、彼女の芸達者ぶりを堪能できる作りになっております!アンナ・ファリス最高!「フジツー!」「サシミー!」


2008.2.24

『アークエンジェル』

 こりゃあかんわ。眠いよ〜。今まで観た映画の中で一番眠いかもしれない。ガイ・マディンの映画は肌に合わないのかもしれない。


2008.2.23

まだまだ続くよひとり映画祭。

『ギムリ・ホスピタル』

 手法はものすごく格好よいんだけど・・・眠い!

『ファイヤー&アイス』

 良いね良いね。途中に出てくるやたらと口汚い魔女が格好良い(でも出番が少ない)。

『悪魔のはらわた』

 狭い人間関係の中でドロドロと血みどろドラマが展開。滑稽で何だか哀しい!美男美女のキャストも素敵。


2008.2.20

『カルネ』

 ‘肉欲’という言葉をそのまま映像化したような、実に危険な香りのする映画。挑発的な作りだが、内容は意外と真面目。40分という短い時間の中にひとつの世界を完璧に作り上げたのがすごい。


2008.2.19

『フリッツ・ザ・キャット』

 面白い!フリッツがかわいい。


2008.2.18

『ガリバー旅行記』

 「ベティ・ブープ」のフライシャー兄弟の長編。とにかくキャラが動きまくるのが良いネ。


2008.2.17

 雑誌の懸賞で当たった鑑賞券で再び京都のグラインドハウス、祇園会館へ。今回は女性映画?特集。OLになった気で観てきました!

『幸せのレシピ』

 モンタージュ使いすぎ!映画を観た気にならん。

『ボルベール』

 すげー話だな。ひたすらセリフの応酬で物語を語っていくあたり、上の映画と対照的。


『ショック・トリートメント』

 なんじゃこりゃ!ジェシカ・ハーパーは良かったけれども。

『鮮血の美学』

 これ、もしかしたら今まで観た中で一番怖い映画かも。


2008.2.14

『恋は負けない』

 なんちゅう邦題や!でも映画は傑作!ヒロインのミーナ・スヴァリ(今いずこ?)がとにかくかわいい!ぎゃー!あと、『がんばれベンチウォーマーズ』のビデオレンタル屋店員が、ここでもビデオレンタル屋店員として出ていて驚いた!

『ミミ』

 傑作『エコール』の監督ルシール・アザリロヴィックの短編。これもロリコンのための映画ではなく、日常に潜む変態の恐怖を少女の目線で描いた作品。


2008.2.13

『インダストリアル・シンフォニーNo.1』

 こんなものまでビデオ化されている日本って恐ろしい国ですね。リンチは昔から同じことをやってきた、ということを再確認。ジュリー・クルーズの歌声にはすぐ飽きてしまうが、「Rockin' Back Inside My Heart」の映像は素晴らしい!フィフティーズとハリウッドと犯罪小説とインダストリアルとボードビルが混ざり合ってひとつになったよう。こういうことをするからやっぱりリンチさんは好きだ〜。


2008.2.12

大学の課題の中間発表が終わり一息ついたところで、今日からひとり映画祭開幕!

『DOA/デッド・オア・アライブ』

 美女!コスプレ!格闘!爆発!すばらしい映画だ!ここまでサービス精神旺盛な作品を「バカ映画」と呼んで片付けるのもなんだか作り手に失礼な気がしてきた。

『セレニティー』

 劇場未公開の掘り出し物の傑作!全然知らないテレビシリーズの映画版で、全然知らないキャラばっかり出てくるのに、なぜこうも熱くなるのか!宇宙船はもろにCGだけど張りぼてのように描かれていて何だか懐かしい感じ。主演は『スリザー』の人。


2008.2.10

『いのちの食べかた』

 ずばり屠殺シーン目当てで観に行きましたが、野菜の栽培ふくめ全編興味深かったです。でもやっぱり屠殺がすごい。‘豚の腹裂き機’がなんか強烈に気持ち悪かったです。観客に親子連れが多かったのも面白かった。学校で推薦されたりしたんだろうか。


2008.2.4

『カッコーの巣の上で』

 実験が終わって家に帰って疲れた体で途中から観始めたのだがズブズブと引き込まれて結局最後まで観てしまった。あんなに怖い顔してるのに知性と優しさを感じさせるジャック・ニコルソンはやっぱりすごいが、脇を固める‘キチガイ’役者たちの顔ぶれもすごい!クリストファー・ロイド!ダニー・デビート!ブラッド・ドゥーリフ!マイケル・ベリーマン!みんなここから始まったんだね。役者ってすごいね。


2008.2.3

『ザ・シンプソンズ MOVIE』(字幕)

 期待を裏切らない面白さ!これは絶対に初めからテレビ版オリジナル吹き替えキャストでやるべきだった。

『ベティ・ペイジ』

 『アメリカン・サイコ』の監督・脚本家コンビの最新作ということでかんなり前から期待してたんだけど、こりゃ〜地味だわ!ベティ・ペイジその人に興味があったから観られたけど、予備知識なしに何となく観ると退屈だろうな〜。でも、カラー場面のやばいくらいの美しさと、「アダルト業界に悪いやつはいない」という事実などなど楽しいところは結構あった。時代の雰囲気もよく出てたし。『愛についてのキンゼイ・レポート』よりは明るくて良いかもしれない。


2008.2.1

『エコール』(2回目)

 2回目観てはっきりした!これはロリコン映画ではない!もちろんチャイルド・ポルノでも決してない!

 これは(以下ネタバレかもしれないので鑑賞後にマウスでドラッグして読んで下さい)生物的により優れた人間を純粋培養するために子どもたちを世間から隔離して人工的な環境の中で無垢なまま育てる「学校」のシステムを内側から描いたSF映画であり、その中に入れられた少女たちは何を思うかを淡々と観察した映画である。「学校」の目的が完璧な人間作りにあることは、劇中で教師が少女たちに進化論を教え、「未来の子供たちは一層進化した姿になる。何世代も先の話だけどね」と語る場面からわかる。ラストで少女たちが連れて行かれるのは外の世界ではなく、次の「学校」であり、そこは女子校と男子校それぞれの卒業生が出会い人生の次の段階へと進む「交配」の場である。映画の時代設定がいつなのか、外の世界がどんな状況なのかは想像もつかない。今よりずっと先の未来かも知れず、外は完全に荒廃しているのかも知れない。このSF的な設定の中で少女たちの感じる恐怖や不安や苛立ちを、少年期の普遍的な心理として観客に共有させるのがこの映画である。

というわけでめちゃくちゃ面白い映画だということが分かってきたので皆さん観てください。チャイルドポルノだと思った人は色眼鏡をはずしてもっかい観るべし。PG-12の指定もわけがわからん!必要なし!複雑な乙女心がどーしたとかいう苦しい抽象論も必要なし!


2008.1.29

『デビルスピーク』

 うーむ、これぞファンタスティック映画だ。いじめられっこが黒魔術を使って逆襲する、ただそれだけの話。見所はずばり頭部切断の残虐描写のみ!でもクライマックスで仁王様に変身して「おんどりゃ〜」といじめっこを殺しまくる主人公の姿があまりに格好良いので、それまでの少々退屈な日常描写を我慢して観て良かった。クライマックスのためだけでも観る価値あり。

 あと、主人公が情けない顔の割りに強い意志をもった青年で、「お前が下手だからサッカーの試合に負けた、もう出るな」といちゃもんつけてくるいじめっこに対して「サッカーは体育で全員参加なんだから僕が出る権利はある!」と実に正しい主張をするのが良かった。そんな真っ当な性格の彼が、いじめっこへの恨みから黒魔術に傾倒していく姿はまさにGOTH!といった感じで、クリント・ハワードの熱演も手伝ってなかなか真に迫っており、何だか泣ける。いじめられっこはこの映画を観よう!すっきりするよ多分。


2008.1.20

『サイレントヒル』

 えー、血がドバドバでるホラー映画が大好きなわたくしですが、実はホラーゲームというのは昔から苦手でして『バイオハザード』も『クロックタワー2』も怖くて最後までやってませんし『サイレントヒル』も体験版のオープニングの時点で「ひえええぇいやああああ」と怖気づいてそれっきりという有様です。なのでゲームをやってない人間が映画版にいちゃもんつけるのもどうかと思いますが、これはいまいちでした。

 導入部の不気味な雰囲気(僕が怖くてゲームを止めた場面そのまんま!)と凝りに凝った映像は楽しめたのですが、『28週後』の後に観たのが悪かった!長い!ダルい!遅い!話が大げさ!やっぱりホラーは勢いですな。わけわからん怪物(あるいはキチガイ)にわけもわからず襲われるのがホラーの一番怖いところであり面白いところであります。あんまりややこしい因縁は絡まない方が良いです。
 
 脚本が傑作学園映画『ルールズ・オブ・アトラクション』の監督ロジャー・エイヴァリーと知ってショック。最近は脚本仕事に徹しているのだろうか。『アメリカン・サイコ』の作家ブレット・イーストン・エリスが昨今のセレブ崇拝に物申す発狂テロ小説『グラモラマ』(面白いよ!)の映画化の話は、一体どうなったんだ!
 
 あと見所としては、主人公の娘役のジョデル・フェルランドが芸達者な熱演を披露。このコ、テリー・ギリアムの『ローズ・イン・タイドランド』でもすごいらしい。いつか観ないとな。


2008.1.19

『28週後』

 新年早々今年のベスト1候補が登場!と大声で叫びたい!『散歩する惑星』『宇宙戦争』『トゥモロー・ワールド』『見えない雲(の前半)』に続く「21世紀の絶望映画」として大傑作!話の展開も『トゥモロー・ワールド』にちょっと似ている。(ここで言う「21世紀の絶望映画」とは、主に9.11のテロの後に作られたパニック映画のことで、「もうダメだみんな死ぬんだ」という絶望感を破壊と混乱のスペクタクルで叩きつけてくるのが特徴。この系統の最新作はもちろん今全米で話題の『クローバーフィールド』!)
 
 とにかく圧倒的なパワーをもった大傑作ホラー。想像するだけで恐ろしい最悪の(そう、まさに最悪の)状況が次々と畳み掛けるようにやってきて、それらを手持ちカメラのブレブレ映像で徹底的にリアルに描くので、観ていてしんどいことこの上ない。そしてその中で展開する「家族」の物語の重く切ないこと!ここまで真摯なゾンビ映画は他にないのではないか。ついにロメロの『ゾンビ』に対抗し得るゾンビ映画が誕生したと言っても良いかもしれない。軽い娯楽を求めて観ると腹に一発ズシンとかまされること間違いなし。これだけの充実度で上映時間が1時間半弱というのもすごい。

 あと、この作品は『28日後』の続編ということでいろいろと比べられることが多いだろうが、はっきり言って前作よりこちらの方が断然面白い!前作はせっかく冒頭でスケールの大きな終末観を提示したのに、最後はヤケクソの軍人がいらんことして話をややこしくして「結局一番怖いのは人間だよね」という実にスケールの小さな結論に至る、見事な尻すぼみ映画だった。その点、今回の作品ではテンションは最後まで全く落ちず、悪夢的な見せ場を最後までふんだんに用意している。徹底してリアルな展開ながら、下劣な人体破壊趣味も満足させてくれる妙なサービス精神もあり、非常に好感が持てる。

 とにかく、普段ホラー映画を観ない人にも全力でおすすめできる作品。まさに「現代を生きる我々の映画」といった趣きデス。


2008.1.18

『フロム・ザ・ダークサイド』(TV版)

 中古ビデオ屋探索がやめられないのはこういうお宝を発見することがあるからだ!今回の場合、作品自体に愛着は全くない。ではなぜお宝かというと、3つあるエピソードのひとつに『サスペリア』でお馴染みの女優ジェシカ・ハーパーが出演しているからだ!しかも主演!これは見逃せない!で、やっぱり彼女は美しかった!


2008.1.15

『どつかれてアンダルシア(仮)』

 『みんなのしあわせ』『800発の銃弾』のスペイン暴力監督アレックス・デ・ラ・イグレシアの作品ということで、だいぶ前から見たかった作品であるが、もっと早くに観ておいた方が良かったかもしれない。最近のアメリカ製バカ映画を見慣れた目には、物語のテンポがかなり遅くギャグもちょっと薄い印象。コメディは進化し続けているのだと実感した。日本語吹き替え版の方が面白い、という説もある。


2008.1.13

『がんばれ!ベンチウォーマーズ』

 現代バカの最前線!


2008.1.5

『ヒルズ・ハブ・アイズ』

 ウルトラスーパー大傑作!

『ヒルズ・ハブ・アイズ2』

 前作にあった悲哀は微塵もないが、なかなか面白い。ちょっとバカっぽいし。


2008.1.4

モンティ・パイソン ライヴ・アット・ザ・ハリウッド・ボウル』
(2回目)

「Sit on my face」最高!あと、メンバーが吹いちゃうNGが見られるのもライヴならでは。


2008.1.3

『ライフ・オブ・ブライアン』(2回目)

 最近モンティ・パイソン熱が再発!本作も文句なしの傑作。吹き替え声優の名演技も楽しい。


2008.1.2

雑誌の懸賞で招待券が当たったので正月早々京都のグラインドハウスこと祇園会館で二本立て鑑賞!ただで観る映画は良いな〜。

『ダイ・ハード4.0』
 これは実写版『MEMORIES 最臭兵器』だ!
『ロッキー・ザ・ファイナル』
 今時珍しいくらいにシンプルで無駄のないストーリーに、シリーズ未見でも熱くなった。擬似テレビ中継の試合場面がとても面白い。

『ナチョ・リブレ 覆面の神様』

 プロレス映画としてでなく、『ナポレオン・ダイナマイト』の監督の新作、として観るべき映画。全編ゆるゆるだがやっぱりハッピー。


2007.12.28

『カンニバル!』(2回目)

 「サウスパーク」の生みの親トレイ・パーカーの自作自演ミュージカル。低予算の自主映画でもここまで面白いものができる!観ていてやる気が沸き起こる素晴らしいバカ映画。


2007.12.24

2007年のベストテン

 今年ももう終わりということで、あちこちの雑誌やら新聞やらで今年の映画ベストテンが発表される頃ですね。僕も真似して今年劇場で観た映画の中から10本選んでみます。というわけで「2007年ていえぬシアターベストテン」の発表です。

ベストテン

@グラインドハウス
Aトゥモロー・ワールド
Bパンズ・ラビリンス
Cホステル2
Dホステル
Eボラット
F俺たちフィギュアスケーター
Gインランド・エンパイア
H300
Iブラックブック

 何といってもやっぱり@でしょう。学園祭の上映会でも大いに参考にしましたし(本当はニセ予告編まで真似したかった!)、ていえぬシアターの今後の方針にも大きな影響を与えるでしょう。正月にまた近所の映画館で上映されるようです。観てえ!
 Aは2006年の映画ですが今年に二番館で観ました。あれほど衝撃的な映像体験はなかなかないです。あの時自分の見たものが未だに信じられません。今年一番涙した映画でもあります。
 Bもすごかった。観客の多様な解釈を許す複雑な構造に唸りました。もう一度観るとまた印象が変わるかも。残虐描写にもビビりました。
 年明けにD、年末近くにCと、今年は「ホステル」シリーズの年でもありました。で、僕は続編のCの方が好きです。残虐ホラーから一歩先に出て、拷問ビジネスに関わる人々の人間模様を面白おかしく描いた狂気のコメディでした。後半になって殺し殺されの狂騒が一気に加速する展開が見事。前作のDはホラーファンならずとも観る人誰もが熱くなれる傑作です。
 Eは今年一番劇場で笑った映画。全裸乱闘シーンは面白かったなあ。
 Fは日本での劇場公開がとにかくうれしかった。これからもバカ映画をスクリーンで観られますように。
 Gは@に並ぶ今年もう一つの祭。めざましテレビでも取り上げられたりして大いに盛り上がりました。でも内容が今までのリンチ映画の総集編あるいはセルフ・パロディのようだったのでちょっと残念。結局二回観たけれども。
 Hはとにかく映像で見せきるという精神に感動しました。メジャーな大作であるにも関わらず残酷描写に妥協がないのも素晴らしい。シネコンの大スクリーンで首チョンパ!
 Iも過激で生々しくて面白かったです。


 他にも面白い映画はありましたがあえて10本選ぶとすればこんな感じ。ついでにワースト3も選んでおこう。

ワースト3


@偽シンプソンズ
A蟲師
B鉄コン筋クリート

 @は未見だけれどもぶっちぎりのワーストだ。こいつのせいで今年の大きな楽しみが一つ失われてしまった。吹き替えにクソタレントを起用したやつ及びそのクソタレントは逝ってよし(死語?ま、いいや)。ついでに『サーフズ・アップ』の原語字幕版を作らなかったやつらも逝ってよしだ。密かに楽しみにしてたのに。
 Aの失望感も応えた。大友さんはどうしちゃったのかな。
 Bはあえてワーストに挙げるほどひどくはない気もしますが、あんまし面白くもなかったので。


 今年もいろいろありましたね。このページまで読んでくれている人が果たしてどれくらいいるのか分かりませんが、来年も観た映画のことをダラダラと書いていくつもりなのでよろしくお願いします。


2007.12.24

『グレムリン』

 改めて見るとムチャクチャな映画だなこりゃ。でも面白い。クリスマスにはこれだね!


2007.12.23

『ロード・オブ・ウォー』

 こういう一人の人間の伝記映画というのはちゃっちゃとちゃっちゃと話が進んで結局なんだったのよで終わる場合が多いですが(『グッド・フェローズ』を除く)、これはさすが『ガタカ』を作った人というだけあって出来事の羅列に終わらずきちんと映画的な見せ場や盛り上がりもありとても面白かった。「弾丸の一生」を弾丸視点で描いたオープニングは最後に強烈な落ちがつく名作。ニコラス・ケイジって良い役者さんですね。主人公の弟役に『レクイエム・フォー・ドリーム』のジャレッド・レト。またヤク中かよ!


2007.12.22

『俺たちフィギュアスケーター』

 スクリーンでの初フェレル!日本での劇場公開を実現させた映画会社の人は偉い!どうせならパンフレットも作ってほしかったけど・・・・まいいや!映画は期待以上のバカだった!初めてスクリーンで見るフェレル様は迫力あったなあ。相変わらず下品で最高。相方のジョン・‘ナポレオンダイナマイト’・ヘダーは今回やけに美しい。日本でも人気が出るかもしれません。


2007.12.18

『ニューヨーク東8番街の奇跡』

 昔テレビの吹き替え版を何度も見た懐かしい作品。今見ると、コマ撮りと合成を駆使した特撮映像にファンタスティックな精神を感じて熱いです。


2007.12.8

『スリザー』

 意外にも切ない!最後のほうで何か泣けてきたし。ナメクジうようよの場面は期待通りの気持ち悪さ。ブロンド美女とグチャドロ人間の取り合わせが美しい。この傑作をキネ旬の批評欄でただ「下品」とけなして星ひとつにした元文部官僚で‘映画評論家’の寺脇さんは、バッド・テイストとはどういうことか分かってない。下品だから最高なんだよ!


2007.12.7

『処女の泉』

 これはとても面白い!殺っちまえ殺っちまえとおおいに盛り上がる。でもアクションシーンは何だかぎこちなかったなあ。ベルイマンにも出来不出来があるということですね。


2007.12.3

『ファイナルデッドコースター』(2回目)

 改めて観ると完全にコメディだなこりゃ。でも面白い。


2007.12.1

『ゾンビーノ』

 ゾンビでアメリカン・フィフティーズ・・・・これは俺のための映画だ!でも・・・テンポが悪い!作りが甘い!もうちょっとがんばれば文句なしのカルト映画になったであろう。惜しい!


2007.11.27

『キング 罪の王』

 キリスト教に対する挑戦状。久々に口をあんぐり開けて観てた。


2007.11.26

『DOOM』

 上映会の独り打ち上げにこれを選んだのだが・・・・なんじゃこりゃ!でも主観視点ワンカットの場面は最高でした。


2007.11.10

『ホステル』2回目

 やっぱり面白い!

『ホステル2』

 発狂!前作を超えた!


2007.10.30

マスターズ・オブ・ホラー 黒猫』

 スチュアート・ゴードン以下『死霊のしたたり』チームが結集。今度の主役はポーだ。演じるのはジェフリー・コムズ!
そういえば昔『マスターズ・オブ・ホラー 悪夢の狂宴』というこれと全く同名の企画があって、そこではロメロ先生とアルジェント先生が競作していて、アルジェント先生の作品もやはり『黒猫』の映像化だったが、それと比べて今回の方が断然面白い!

『恋人はゴースト』

 掘り出し物を見つけた感動を久しぶりに味わった。これはラブコメの大傑作!なぜ劇場未公開?!下の映画(↓)よりずっとずっと面白いのに。


2007.10.29

『ラブソングができるまで』

 主演二人の掛け合いとか曲作りの過程とかそこそこ楽しめたけど、もっとバカをやってくれないと満足できない。特に脇がつまらん。バリモアさんの役柄もよく分からん。でも現在の音楽界にはびこるエロ踊りとインド志向(あとラップ)をおちょくった描写が面白かった。


2007.10.28

『ウルトラヴァイオレット』

 これは観なくてもよい映画だった。傑作『リベリオン』の監督の作品ということで期待も大きく、公開時は劇場に行けずじまいで大変残念に思っていたが、劇場で観なくて本当によかったと思う。全編CG大会であっても映画にソウルがあれば許すけど、この映画には何にもなかった。何にもないことの楽しさもない、という悲惨な出来。あまりにあんまりなのでどうしてこうなってしまったのか気にかかる。


2007.10.27

『ミッドナイトクロス』

 デ・パルマの他の作品と同じく、物語がどこへ向かうのかさっぱり分からず「これは何についての映画なのだろう」と観ている間とにかく不安になって、凝った映像とサスペンスな展開に振り回されているうちに、最後は何故か切ない余韻が残るという不思議な映画。


2007.10.24

マスターズ・オブ・ホラー 虫おんな』

 うおおおおアンジェラ・ベティス最高!


2007.10.19

『40歳の童貞男』

 ぎゃははははははははははははははは!これ劇場で観てたら笑い死んでただろうな。近年にない弾けっぷりで、コメディ史、いや映画史に残る傑作。


2007.10.13

マスターズ・オブ・ホラー 世界の終わり』

 カーペンター先生の自作『マウス・オブ・マッドネス』みたいな話。それを観た人は狂って殺し合いを始めるという恐ろしいパワーをもったホラー映画が出てくるんだけども、そういう作品を目指したいねえ。

マスターズ・オブ・ホラー 愛しのジェニファー』

 そこそこ面白かったんだけど、ダリオ先生は一体どこに向かっているのか心配になる。シモネッティの音楽は最高。
それにしても‘ジェニファー’って先生・・・


2007.10.12

マスターズ・オブ・ホラー 魔女の棲む館』

 スチュアート・ゴードン以下『死霊のしたたり』チームが結集。で、やっぱりラヴクラフト作品の映像化で、恐怖あり、エロあり、アクションありと相も変わらぬ作風に感動。


2007.10.11

マスターズ・オブ・ホラー ぼっけえ、きょうてい』

 この世の悲惨の数々をそのまんま見せられて、何ともいえない・・・。


2007.10.8

『氷の微笑』

 シャロン・ストーンは確かに美しかったし、例の「あれ」も確かに見えた。でもそれ以外は何のこっちゃという映画。バーホーベン先生のエロ(主におっぱい)と血みどろに対するこだわりは楽しめたけれども。
 ああ、でも劇中で種明かしをしない(今時のバカ丁寧なプレイバックがない)のが新鮮だった。そういう意味で優れた脚本なのかも・・・・。


2007.10.7

『パンズ・ラビリンス』

 かつてこれほど‘痛い’ファンタジー映画があっただろうか。無害で楽しいお子様向けファンタジーを期待したら確実に打ちのめされるであろう、情け容赦のない残酷絵巻。露骨に描かれる暴力シーンの数々が‘痛い’。そして無慈悲な現実の中で必死に戦う少女の姿が胸に‘痛い’。
 細部まで考え抜かれた構成。度肝を抜く怪物たち。観る者の多様な解釈を許す演出。もう完璧。必見!


2007.9.29

『プラネット・テラー』

 夏休み最後の打ち上げ花火。やっぱり面白え〜。シンセのチープな音楽と汚いフィルムの質感がたまらん。何度でも観たい。


2007.9.24

『デス・プルーフ』

 大阪で『プラネット・テラー』との二本立て(『グラインドハウス U.S.A.バージョン』のこと。これを観た時の感動がなかなか言葉に出来ないのでまだ感想が書けていない)で観た時は、『プラネット〜』があまりにすごすぎて本作はいまいちな印象だったけど、単独版で観なおすとこれはこれで至福の映画体験だった。メインテーマが中毒になるくらい格好良いし、女の子の撮り方がエロいし、怖い場面はしっかり怖いし、時間の感覚が麻痺するような構成が見事だし(リンチ映画みたい)、カーチェイスはもちろんすごいし、カート・ラッセルはとびっきりキュート。ラストも完璧。
 二本立て版にはなかったシーンも追加されていて話の流れが分かりやすくなったし、何よりチアガール姿のメアリー・エリザベス・ウィンステッド(『ファイナルデッドコースター』でおなじみですね)の出番がぐっと増えたのがうれしい。そういうわけで非常に楽しい映画なんだけど、この印象も『プラネット〜』を単独版でもう一度観ると消し飛んでしまう気がする。それくらい『プラネット〜』は強烈だった。まあ、二つは似て非なる作品だから比較しても意味がないかもしれない。
  
 惜しむらくは観客の少ない回を選んでしまったこと。祝日とはいえやっぱり朝いちは皆観に来ないのかな〜。大人数で爆笑して拍手したかった・・・。


2007.9.20

『危険な動物たち』

  最初はいまいちかと思っていたら最後には虜になっていた、傑作コメディ。


2007.9.19

『新・ゾンビ』

 一部ですごく評価が高いのでかなり期待して観たのだが、やっぱりクソだった。


2007.9.17

『2番目のキス』

 『ふたりにクギづけ』のファレリー兄弟監督最新作ということで劇場公開時から気になっていた作品。今回は障害者ネタではなく、真性オタク野郎はいかにして女性と付き合うことができるかという今日的な問題を扱っている(『電車男』と比較できるかも。読んでないからできないけど)。他人の原作、他人の脚本、プロデューサーはドリュー・バリモアということでファレリー兄弟お得意の過激なギャグは封印され破壊力はなくなったが、やはり観た後に幸せな気分になる愛すべき作品だった。僕は野球には全く興味がなく、勝手に中継を延長して後の番組を遅らせたりするのでむしろ野球を憎んでいるから(大の大人が球打って何がおもろいねん)、終始ヒロイン視点の引いた目で映画を観ていたけれど、野球狂の人が観るともっと面白いんだろうなあ。でも、自分の好きなことと職業の問題について最近いろいろ悩みだした僕にとってはなかなか重みのある映画でもある。
 あと、NHKの『熱中時間』で熱中人の奥さんはご主人の趣味についてどう思うか聞かれてよく「あきらめました」と答えるが、それは実はものすごい境地であるということが分かった。
 出演者について。ドリュー・バリモアってかわいいなあ。


2007.9.13

『みえない雲』

 前半は『宇宙戦争』、後半は韓国ドラマという奇妙な映画。一体何がしたかったんだろう・・・


2007.9.9

『ユナイテッド93』

 前に日航ジャンボ機のフライトレコーダーを聴いて気分が悪くなったことがあったが、それに匹敵する恐怖の映画。


2007.8.28

『ドゥーム・ジェネレーション』

 90年代の負の遺産。悪い意味で悪趣味。最初はナイン・インチ・ネイルズがかかったり主人公の着ているTシャツがミニストリーだったりとあの時代を追体験できて楽しかったし、いきなりとんでもない血みどろシーンが入ったりして「おお、俺もドゥーム世代だ〜」と大いに共感し盛り上がったんだけど、途中から本当にどーでもよくなって、仕舞いに腹が立ってきた。これがもてはやされていたとは信じられない。
 で、何でこれを観たかというと『グラインドハウス』で惚れたローズ・マッゴーワン目当てであって、彼女は格好良かった。第一声がカメラ目線で「FUCK」とは素晴らしい。


2007.8.25

『グラインドハウス』U.S.A.バージョン

 あははははははははははははははははははははは


2007.8.15

『インランド・エンパイア』2回目

 2回目見て面白さが分かった。複数の異なる世界に同じ人物が姿を変えて現れヒロインを導くこと、今見ているのはハリウッドであり同時にポーランドでもあるということ・・・・・。残念なのは、撮り方が雑なせいでその面白さが半減している点。ヒロインが最後に行き着く部屋が実はあそこだったなんて、アイデアとしてはものすごく面白いのに、よくよく見ないとそれが分からない。でもまあ、2回目見て良かった


2007.8.14

『ハード・キャンディ』

 二人芝居でこの吸引力はすごい。


2007.8.9

『プルートで朝食を』

 女装キリアン・マーフィに萌える。


2007・7・29

『グエムル 漢江の怪物』2回目

 やっぱり面白い。全く無駄のない脚本がすごい。


2007.7.21

『インランド・エンパイア』

 リンチ映画の総集編のようでいて、新境地でもある。でもこちらが勝手に期待していたものと違ったので少々複雑な気持ち。『マルホランド・ドライブ』ほど好きにはなれないと思う・・・


2007.7.14

『スポンジボブ/スクエアパンツ』

 最高!ここまでスケールが大きいとは思わなかった。大満足。もっかい観たい。
 人気テレビ番組の初の映画化に当たって、シリーズの一貫したテーマである「子どもの精神」について改めて真剣に取り組んだ点が見事。ボブ&パトリックの主役コンビが困難な試練に立ち向かい乗り越えていく、その姿を通してキャラクターのアイデンティティに迫るという映画の構成は、『007カジノロワイヤル』に通じるものがある(ひとつの完成した作品として成り立っている分、続編が作りにくいだろうなあと感じさせるところも似ている)。大冒険の果てにボブが達したのは、「子どもでもいいじゃん」「いつまでもおもちゃで遊んでて何が悪い」という子どもっぽさ全肯定の境地。このロック魂をロックナンバーに乗せて表現したクライマックスのアニメーションは本当に格好良く、観るたびに気分が高揚する傑作。ボブに突然ロックの神が憑依して奇跡を起こす!感涙!必見!


2007.7.11

『迷宮物語』

 『AKIRA』以前の大友アニメというその存在だけは知っていたがなかなか観る機会のなかった作品。ついに観た!三人の作家のオムニバスだが、大友監督作『工事中止命令』のパワーの前では最初の二つは前座に過ぎない。後の『AKIRA』につながる極彩色の大友世界にとにかく興奮。緻密に描き込まれた背景や主人公の典型的な日本人顔など随所にこだわりを感じて楽しい楽しい。特に主人公の顔のアップでは、シンプルな線だけど写実的という大友絵柄を堪能できる。あと、ごっつい機械がひたすらガッチンガッチン動き続ける辺りに『スチームボーイ』の原型を見た。というか、いつまでたってもやってることは同じということか。


2007.7.10

『ファンタスティック・プラネット』2回目

 何度観ても面白い。音楽が良い。今回NHK-BSで放送されたことで多くの子供たちに新たにトラウマが植えつけられたと思うとエキサイティングだ。


2007.7.9

『プロデューサーズ』(ミュージカルの方)

 楽しすぎて死にそう。芸達者の極みである主役コンビはもちろん最高だし、内場勝則似のオカマとかナチスおたくのウィル・フェレルとか変な人がいっぱい出てきて歌い踊って大満足。オリジナル版で一番笑ったヒトラー・オーディションもばっちりだ。それに加えて会計士が抱くショービズ界への憧れをしっかり描くことで、ただのアホ映画でなく立派なブロードウェイ賛歌になっているのがうまい。ただ、わざとミュージカルをコケさせてどうして儲かるのか未だに分からん。


2007.7.7

『ロッキー・ホラー・ショー』

 やっと観た。ブラッドとジャネットが屋敷に迷い込む辺りまではノリノリだったのに、ロッキーが出てきてからせまっ苦しい人間関係の話になって、どうでもよいドタバタが延々続く。全然ホラー・ショーじゃないじゃん!というわけで映画としてはダメダメであまり楽しくなかったけど、観た後で強烈な余韻がじわじわとやってきて、ひとつの強烈なメッセージとなった。
 冒頭で真っ赤な唇がスウィートに歌いあげる‘憧れ’の気持ちが自分の今の心境に合致していて、口ずさむと何だか泣けてくる。そこへフランクフルター様のお言葉「ドーンドゥリーミーット、ビイイーット」。そうだ、今すぐ何かやらなきゃ!さあ、もう一度、タイムワアアアアアアアアプ!


2007.6.18

『ゴースト・オブ・マーズ』2回目

 映画館で一回観たっきりだったので、何だか懐かしい感じ。改めて見直すと、ものすごくまったりした映画だったことが分かった。でもやっぱり面白い。周りは凶暴なキチガイだらけ。話せば分かるような連中じゃない。こうなったら皆殺しだ!やるっきゃないぜ!という高揚感がたまらない。
 脇でジェイソン・ステイサムが出ている。今や人気者の彼ですが、この時はまだオーラがなくてただのチンピラなのが面白い。そういえば、殴られて鼻血出したりクスリやってトリップしたりしてがんばったヒロインのナターシャ・ヘンストリッジは、今どこで何やってるんでしょうか?


2007.6.10

『プレステージ』

 期待以上に面白かった!手品ショーの華やかな世界ではなく、舞台裏でのどす黒い悪意と容赦無い潰し合いの話だった。やたらと痛そうなケガの場面、常に漂う不穏な空気、悪夢のような結末。暗い!暗いぞ!これはゴス受けするかもしれない。
 時系列がグチャグチャなのに一回目の鑑賞で筋が追えるほど、見せ方がうまい。二時間以上全く退屈しなかった。そして脚本が鮮やか。後半のオカルト話や‘衝撃のラスト’も、ただのびっくらかしでなく、「真の手品師とは?」という主題にきちんと沿って配置されている。
 もうひとつ楽しかったのは、女優、男優みんな良かったこと。ベールが相変わらずややこしい役。この作品で今度こそ日本での人気に火がつくといいですね。ボウイのテスラも格好よかった。


2007.6.3

『ピンク・パンサー』

 スティーヴ・マーティンがとにかく元気。彼が元気ならそれで良い。元気な彼を見ているだけで幸せ。本筋と関係のないところでの器物破損ギャグが面白い。クルーゾーを取り囲む周りの人々も良い。特にニコルの人!かわいいなあ楽しいなあ。それに比べてビヨンセはよく分からん。


2007.6.2

『300』

 最高!全編これ見せ場というサービス精神溢れる大傑作!ヨーロッパの宗教絵画か、グレゴリー・コルベールの写真のような荘厳さで終始圧倒。中盤、フリークスや猛獣などマンガチックな(元々マンガだが)見世物が続々登場し、こんなものまで見られるとは!というお得感がいっぱい。オラクルのねーちゃんのエロダンスとか、謎のカニ男とか、ものすごくリアルな首チョンパとか、ものすごい奇形とか、信じられない映像のオンパレード。ストーリーも文句なしで、戦闘場面に比べて地味に感じた王妃パートも最後にブルータルなオチがついて良い。殺せ殺せということですね。首チョンパ等いろいろな面で元気をもらいました。


2007.5.26

『ボラット 栄光ナル国家カザフスタンのためのアメリカ文化学習』

 最高!最高!信じられない!我が目を疑うとはこういう映画のことを言う。『チーム・アメリカ』同様、風刺である以前にオリジナリティ溢れる優れた爆笑映画。これをハリウッドのメジャーの人たちが作っていることに驚く。そのせいか意外にお話がしっかりしていて、ひとつの映画として完成している。それと同時に、やらせだろうがなんだろうが関係ない、強烈な映像がてんこ盛り。この辺については、「映画」と言うより「動画」と言う方が似合っている。もう、何度息を呑んだか知れない。主役コンビが暴れ狂う様を見て、僕もがんばらなあかんとパワーをもらった。劇場で観て、他の客と一緒に引き笑いするのが楽しい。日本でもっと当たってほしかったなあ・・・・。


2007.5.20

『ミュンヘン』

 きっついなーこれ。『シンドラー』のような真面目な話かと思ったらかなり娯楽派で、笑える場面(まさにブラックユウモア)もあったのでびっくり。でも暴力描写はかつてないほどえげつない。何だか妙なバランス感覚だった。少し散漫な印象もあったけれど、報復合戦の恐怖と暴力の格好良さはよく伝わった。『宇宙戦争』といいこれといい、スピルバーグはかなりキモい人(ほめ言葉)なのではないか。温厚そうな顔をして、裸の女の人をえらい目に遭わせたりする。銃弾があんなところを貫通しちゃう場面も強烈だった。そして言えることは、ダニエル・クレイグ最高!終始能天気で格好良い。


2007.5.13

『コレクター』

 あまりの面白さに昼寝も忘れて喰らいついてしまったが、結末でどんよりして午後中ずっとどんよりしていた。「ピカソはクソだ!」というフランクリンの主張には大いに共感できたし、彼の人生も他人事じゃなさそうだし、二人の対話から新しい希望が見えてくることを本当に望んでいたんだけど・・・・悲しい。そして言えることは、サマンサ・エッガー最高!これといい『ブルード』といい、彼女は密室専門女優なのか?目の離れた平たい顔は良いなあ(『ツイン・ピークス』のシェリル・リーも目の離れた平たい顔で良い)。テレンス・スタンプもすごい人だったことがよく分かった。音楽も良かった。

 映画を観た後、あまりにやるせないので原作本を読んだら、映画以上にどんよりしてしまったのは言うまでもない。特に後半は地獄!読むのがつらい。


2007.5.12

『スティル・クレイジー』

 ビル・ナイ最高。ビル・ナイ面白すぎ。おいしいところはビル・ナイが全部持っていく。歌もビル・ナイ本人が歌ってる。恐るべきビル・ナイ。ビル・ナイすごい。作品は地味で曲はまあまあで終盤の展開は好きになれないが、ビル・ナイだけでも観てよかったと思う。

『ザ・ブルード 怒りのメタファー』

 ううむ、クローネンバーグ版『オンリー・チャイルド』。彼の他の作品に比べてとっつきやすい。ちゃんと怖くてグロくてそして哀しい。中古ビデオじゃ真っ暗でしんどかったが(作品をきちんと観たことにはならない気がする)、クローネンバーグ節を堪能できた。幼稚園でのボコボコ殺人は本当にきつい。あと、サマンサ・エッガー最高!


2007.5.8

『白い肌に狂う鞭』

 思ったより地味で小粒な印象。とにかく美しい映像にポ〜っとのぼせているうちに終わってしまった。まさに元祖『サスペリア』。アルジェントがやりたかったことを、彼よりも前にマリオ・バーヴァさんがすでに完璧な形でやっていたわけで、まさに師匠だ。バーヴァすごい。ストーリーも凝っていたのでもう一度見て伏線の確認をすると面白そう。
 
 ちなみに本作は大学図書館の視聴覚室で観た。大学の図書館のDVDコーナーにまさかこんなものがあったとは・・・。隣に『顔のない殺人鬼』と『生き血を吸う女』もあった。ひゃっほー!それにしても一体誰が入荷を決めるのだろう。劇中の鞭打ち場面やらあえぎ声やらで、ほとんどAV鑑賞に近い瞬間があってひやひや(そしてにんまり)。学生が視聴覚室にAVを持ち込んで大きなテレビで観ていたので女子学生が気分を害した、という事件を思い出した。この映画も大きなテレビで観ればよかった。

(その後、そのDVDコーナーには『ランド・オブ・ザ・デッド』が入荷された。信じられない!担当者と握手を交わしたい)


2007.5.6

『ウォレスとグルミット 野菜畑で大ピンチ』

 予想をはるかに超える面白さ。まさかこれほどまでホラーな内容だとは思わなかった。これまでになく映画的で、群集の場面も素晴らしく女性キャラもかわいい。手作りの雰囲気を残している分、『コープスブライド』よりも強い印象を受けた。キャラクターたちの演技に魅せられて、何だか胸がグワ〜っと熱くなってきましたよ。
 この直後に『チーズ・ホリデー』を改めて観て、キャラクターとアイデアとアニメーションがすでに完成されていたことを再確認してショックを受ける。


2007.5.2

『ホテル・スプレンディッド』2回目

 劇場で観た時は思ったより地味で少々がっかりしたが改めて観ると良い場面がたくさんあってなかなか味わい深い。美術や音楽(メインテーマ最高!)によって世界観がうまく統一されている。作り手のやりたいことが何となく分かった。ジュネほど狂えないけれど、まとまったストーリーがなかなか良い。それとやっぱり役者が良い。ダニエル・クレイグがアート系の作品でがんばっていた人だと知って何だか嬉しい。狂言回しかつお笑い担当で大活躍のヒュー・オコナー、今どうしてるんだろう。また見たいなあ。ジェームズ・ボンドと毒殺魔グレアム・ヤングが夢の共演を果たしていたという事実!非常に感慨深い。あと、カトリンさんが良いなと思ったらすでに死んでいたというこのショック。役柄同様、何とも悲しい。


2007.4.30

『セックス・トラフィック』

 WOWOWで放送された海外ドラマ。ヨーロッパの人身売買、その恐怖の実態に迫る!こちらの期待を超える強烈な内容だった。リアル『ホステル』といった感じで、ヨーロッパ(東の方)の得体の知れない組織に捕らわれる恐ろしさを存分に味わえる。『ホステル』よりも怖いかもしれない。外国の街の裏通りを歩けなくなること必至。
 黒幕が明らかになって物語が一気に動き出し、それまでひどい目にあわされ続けてきたヒロインが自ら行動に出るあたりが非常に盛り上がる。圧倒的な緊張感で3時間を見せ切った。


2007.4.28

 京都の祇園会館にて二本立て鑑賞。うれしいなあ。楽しいなあ。幸せだなあ。

『007 カジノ・ロワイヤル』

 007シリーズは今まであまり観たことなかったけれど、本作は凝った秘密兵器やどうでもいいナンパ描写を排除して、「殺し屋ボンド」に焦点を置いた、バイオレントな逸品だった。でもここまで真面目にやると続編を作っていくのが難しそう。これ一本で完成された世界という感じがする。暴力の恐怖に打ちのめされたヒロインをボンドがなぐさめる場面が最高。『ヒストリー・オブ・バイオレンス』に通じるものがある。二人の愛に重きが置かれて、とにかく切ない映画になった。
 主役のダニエル・クレイグが格好良い。惚れてしまった。クリスチャン・ベール以来のドキンな気持ち。『ホテル・スプレンディッド』にも出ていたのか。今すぐに観直さなければ!
 ヒロインのエヴァ・グリーンもかわいい。悪役が小物なのもリアルで良い。信じられない身体アクションにカーアクション、そしてセンスの良いオープニングに素直にしびれた。

『トゥモローワールド』

 こんな傑作を見逃していたなんて!久しぶりに劇場で嗚咽を漏らしてしまった。期待以上の、ものすごい映画。なんだかもう、ものすごいとしか言いようがない。近未来SFであると同時に、観客を丸腰のまま戦場の真っ只中に投げ込む究極の紛争体験映画でもある。『散歩する惑星』を超える絶望と、『宇宙戦争』を超える恐怖。そしてその先に見える一筋の光。クライマックスでは「人類の希望」というようなことを体で感じて、涙が止まらなくなった。セリフに頼らずに映像の力で観る者の心を激しく揺り動かす。これぞ映画。
 これほど実験的で野心的で詩的でメッセージ性に溢れた映画がシネコンで堂々と上映されていたという事実。今回映画館で観ることができて本当に良かった。


2007.4.27

『エミリー・ローズ』

 これは面白い!超自然現象に対する人の在り方を問う社会派ドラマであると共に、ハッタリのきいたしっかり怖いホラー映画でもある。悪魔に憑かれた少女にまつわる奇怪な現象の数々を、見せるもんをちゃんと見せて描ききる。しかもそれがいちいち怖い!法と宗教、理性と信仰の対立を物語の軸にしているから、超常現象の場面においていくらベタで過剰な見せ方をしてもそれだけの必然性がある。うまい。いろんなビビらせ方を見て勉強になった。お気に入りの恐怖シーンはいくつもあるが、その中でも最も恐怖したのは、仰向けで硬直したエミリーがこちらを見つめているシーン。夢に出るぞあれは!あとは、エミリーにとりついた複数の悪魔が馬小屋で自らメンバー紹介する場面が、デスメタルのバンドのライヴみたいでものすごく格好良かった!悪魔に憑かれたエミリーがデス声で絶叫!6人目のメンバーはもちろん「ルシファアアア!」。映画館で観たら盛り上がっただろうなあ。とにかくエミリーの映画。あの主役のコに尽きる。リンダ・ブレアを超える熱演。パントマイマーなのか?アングラの人なのか?今後の活躍に大いに期待しましょう。
  
 人間がしっかりと描かれた脚本も良い。少女を助けたいという周りの人々の愛と悲劇。哀しいなあ哀しいなあ。


2007.4.15

『ヒストリー・オブ・バイオレンス』2回目

 2回目の鑑賞でも緊張感は失われず、また入り込んでしまった。やはり傑作。完璧。後半の凄惨な展開を知っている分、冒頭の平和な町の朝がいとおしい。美しい映像にハワード・ショアの美しい音楽、朝食のシリアルをめぐる何気ないやりとり、怖い夢を見た娘に家族みんなが寄り添って、心配ないよと声をかける場面・・・・平凡であることの幸せが凝縮されている。この平凡の幸せを丁寧に描いていることが重要だ。監督の成熟を感じる。そしてその平凡で幸せな生活が崩れることの悲しみ。ラストでまた泣いてしまった。マリア・ベロ最高!

『レッド・アイ』(『パニックフライト』でなく!)(2005)

 『パニック・フライト』・・・・なんだこのクソ(fucking)邦題は?!『レッド・アイ』(深夜飛行便)のままでいいじゃないか!
レイチェル・マクアダムスとキリアン・マーフィ、今をときめく美男美女の二人芝居で監督ウェス・クレイヴン!終盤の失速が惜しいが、オールドファッションな演出で安心して見られる。前半はとにかくいかにして女に電話をかけさせるかという話。それだけで映画が出来てしまうすごさ。こういうワン・アイデアの小品がどんどん作られれば良いと思う。
 レイチェルさいこー!レイチェル出突っ張りで至福の時間。悪人に対して妙に強くても許せる。トイレでのシーンは最高ですね。かなり間抜けなマーフィも良いね。てかヒロインの同僚のコが強烈。誰だあれは!


2007.4.14

『ミート・ザ・ペアレンツ2』(2004)

 ガクーーーー!すごく面白そうだったのに、前作が受けたからその勢いで企画して突貫で作ったような荒い出来だった。編集がぎこちなくてテンポが悪い。信じられない。セリフもいまいちでオチのないカットも多すぎる。何よりキャラクターが古い。面白くない。ダスティン・ホフマンは良かったけれど、デ・ニーロと鼻おばさんは苦しかったなー。そんな中でベン・スティラーがよくがんばった。彼のひたすら困る姿はひとつの芸であることを確信した。そして犬、猫、赤ん坊相手に本気。これぞベン・スティラー!彼で何とかもっていた映画。


2007.4.7

『ブラックブック』(2006)

 「監督はバーホーベンだけど戦時下の人間ドラマが主題のようだから何だか地味で重そうだなあ」というこちらの余計な心配を木っ端微塵に吹き飛ばしてくれた、大興奮の大傑作!ハリウッドを離れ故郷オランダに帰った監督が、己のビジョンを完璧な形で映像化した。過酷な運命を生きるヒロインの目線から、人間のもつ欲望、卑劣さ、残虐性を、『トータルリコール』をはるかに超えるスピードで描き切る。裏切りに次ぐ裏切りで先の読めない展開に、監督お得意のゲロゲロ描写(そこまでやるか!がいっぱい)も手伝って、これはもうこの世の地獄めぐりだ!本当に、息つく暇もない充実の二時間以上でございました。

 登場人物たちの利害関係や政治的背景が複雑に入り組んだややこしい物語でありながら、混乱することなく最後までついていけたのは、人間がしっかりと描かれていたから。特に終戦直後の政治的混乱の中で各人が己の目的に向かって一斉に動き始める終盤は、まさにラストスパートという感じで物語が一気に加速し、思わず身を乗り出して観てしまった。全編に渡るテンポの良さは、ハリウッドでSF、アクション、サスペンスなどの大衆的な娯楽作品を作って経験を積んできたバーホーベン監督の実力の証。オランダ時代の悪趣味と、ハリウッド仕込みの確かな技術が合わさって、監督まさに無敵状態。
 
 痛快な娯楽映画の形をとりながらも、そこに描かれている世界は極めて現実的。この映画には、他の多くの戦争映画と違って英雄が出てこない。信念を貫いて立派な行いをする人が、出てこない。みんな保身や金のためにせこく立ち回るのみ。だが、かえってその方が観ていて納得できる。右翼的な空気がはびこる現代にあって、監督の地に足のついた人間観におおいに共感できるのだ。劇中では、戦勝国の人々による、ドイツに協力した者に対する虐待まで描かれる。公衆の面前で丸刈りにされ、さらし者にされる女性たち。かつてその事実を報道写真で知って僕は大いに衝撃を受けたが、そういう戦勝国の暗部を娯楽映画の枠組みの中で見せてしまうことに驚く。この映画は戦争の欺瞞を暴くことに徹底している。観客に対して人間の理想やあるべき姿を提示するわけではなく、お説教をすることもない。ただひたすら、人間本来の醜さをしっかりと見据えようと訴えかけている。それがかえって爽快で、観終わった後は大変元気になったのであった。
 
 戦争には‘正義’も‘悪’もない、敵も味方も、皆それぞれに思惑があってそれに従って動いているに過ぎない。そのような戦争の本質、人間の本質を鋭く突き、観る者に投げかける。監督&脚本家の本気を感じてとにかく圧倒された。主人公の波乱万丈の物語が現代へとそのままつながるラストシーンも見事。
  
 主演のカリス・ファン・ハウテンが実に良かった。よーやるわという場面も堂々と演じていた。根性あるなあ。人間の嫌な面をたくさん見てヘトヘトになっていく様子は、映画を見る観客の姿そのもの。彼女と一緒にフーッと息をつく場面まで用意されているのがかわいらしい。
 

映画『ブラックブック』公式ホームページ  
www.blackbook.jp
映画『ブラックブック』公式ブログ〜バーホーベンはお好き〜
http://blogs.yahoo.co.jp/blackbook1944
(宣伝担当の方の情熱がビシビシ伝わってくる、かなり濃いブログです)


2007.4.4

『トランスポーター2』(2005)

 前作同様、面白いなあ。ダレ場なしで突っ走る演出もすごいけれど、このシリーズの最大の魅力はやはり主役のジェイソン・ステイサム。デビュー作『ロック、ストック&トゥー・スモーキング・バレルズ』での地味なチンピラ役から、ついにアクション映画の主役にまでなった。まさかこんなにも出世するとは思わなかった。『ロック、ストック〜』組で一番成功した人なんじゃないだろうか(ガイ・リッチー監督は何だか落ち目だし)。

 その他の見所は主人公の前に立ちはだかる、美しく、狂った殺し屋ローラ。濃い化粧、きついアイシャドーに下着姿でマシンガン!セリフといえば「快感が欲しいの」とか「快感が全て」とかそんなのばかりで実に頭が悪い!でも格好良い!彼女に関してだけは脚本を書いたリュック・ベッソンと固い握手を交わしたい。 
 あと、『シン・シティ』のCMでバンバン流れて映画のイメージを大きく作ったにも関わらず本編では一切聴かれなかった幻の名曲が、この映画の一番盛り上がるところで堂々と流れて衝撃を受けた。やっと聴けたこの喜び。やっぱりかっこええ!そういうわけで結構うれしい映画でした。 


2007.3.31

『アサルト13 要塞警察』(2005)

 ジョン・カーペンター作品(未見ですが)のリメイクで、オールスターキャストだからかなり期待していたのだが、そこそこだった。残念。テレビで見る分には楽しいけれど、劇場で観ていたら怒ってた。立て籠もりの銃撃戦ならフランス映画の『スズメバチ』の方が断然うまいし、面白かった。
 
 良い俳優さんがたくさん出てるのに、皆あまり活躍させてもらえていない。ジョン・レグイザモ(またしてもチンピラ役)と‘スマイリー’役の人の扱いが特にひどかった。あんなに地味でつまらない最期もいまどき珍しい。映画終盤の失速もつらかった。
 でも、明らかにお色気担当で初めは頭悪そうに見えた警察秘書のねーちゃんが、予想を上回る頑張りを見せたのが意外で楽しかった。B級魂を感じる。

 『ヒストリー・オブ・バイオレンス』で熱演を見せたマリア・ベロ、今回も良い感じ。頭良さそうな顔してるなあ。この人が出てるだけで真面目な映画に見える。だから‘あの展開’はかなりショック。鑑賞後に妙に重いものが残ってしまった。
 
 あと、ローレンス・フィッシュバーンって吉本新喜劇の烏川耕一さんに似てません?


2007.3.26

『ホテル・ルワンダ』(2004)

 面白ええええええ!夜眠いのをすっかり忘れて最後まで一気に観てしまうほどの吸引力。次々にやってくる危機を主人公が頭使ってあらゆる手段で解決していく過程がとにかく面白い。緊張と興奮の映画。社会派でもなく歴史ドラマでもなく実はアクション映画。ちょっとゾンビ映画の面白さも入っている。でもこの映画のゾンビたちは銃とマチェーテ(山刀)を持っている!これが実話!フィクションより怖い!(そういえばソマリア内戦を描いた『ブラックホークダウン』もゾンビ映画と同じ面白さに溢れていましたね)
 虐殺の映画ではあるが直接的な残酷シーンはなく、観やすい作りにしてあるのも偉い。多くの人が映画を観て事実を知ることができる。
 殺す側も一般人であることが何よりも恐ろしい。人はアジられると殺しでも何でもするものなのだなあ。

 主演のドン・チードルかっこええわあ。それから、報道カメラマンがやけにきれいな目をしたヒゲ面だなあと思っていたらホアキンだったのでビックリ。すぐには分からなかった。やっぱり格好よかった。


2007.3.25

『蟲師』(2006)

 ぐあ〜退屈だぁ〜!まさか大友作品で退屈することがあろうとは!大友ファンとしてショックであることは否定できない。これまでの大友作品とは少し毛色の異なる作品世界であっても、やはり何かしらすごいものが見られるだろうと期待していたが、ここまで地味だとは思わなかった!

 とにかく森や林など自然の風景を映した場面が多くて、それが作品の大切な要素であり一番見せたい部分なんだろうけれど、画面がきれいなだけでその中で何もドラマが起こらなければやっぱりすぐに飽きるよ!何も起こらなくてがっかりしたカットがどれほどあったことか。キネマ旬報に載っていた本作の批評の中の一文‘モノローグのないテレンス・マリック映画’は、悔しいけど言い得て妙(もっともその批評は作品に対して好意的でしたが)。多くのカットが風景に頼りすぎている。「別に森なんか見たくない、もっと刺激的な映像が見たい!」しかしその思いは最後まで叶えられることはないのであった。無念。
 
 確かに自然の風景以外の場面もあった。幻想的な場面、何か不可思議なことが起こっている場面もあるにはあった。でも何がどうなってるのかさっぱり分からん!何が起こっているのか、登場人物が何をしたいのかが分からず物語についていけない。楽しくない。これは明らかに説明不足。
 かと思えばその一方で、人物が独り言でバカ丁寧に実況と解説をしてくれるという、やってはいけない珍場面もあり、思わず笑ってしまった。どうしてそんなことが分かる?!とスクリーンに向かって突っ込みを入れたくもなった。勘弁して欲しい。脚本って難しいですね。
 脚本家は誰だと思ったら、大友監督と村井さだゆきの『スチームボーイ』コンビ。あの映画も脚本に難があったので何だか納得。

 作品の売りであるCGも、冒頭のアレ以外は地味!作品世界に自然に溶け込むようなさりげないCG、という趣旨は分かるけど、画面にインパクトがないのはやはり見ていて楽しくない。作品の主役である‘蟲’もモヤモヤばかりで、気色悪い生き物がウニョウニョと宙を泳ぐ『フロム・ビヨンド』の方が存在感があったし何よりファンタスティックであった。どうせなら冒頭のアレがクライマックスでばんばん起こるような、破滅的な映画が見たかった。それほど冒頭のアレは迫力があって良かった。

 でも今回は漫画『蟲師』の映画化であって、僕が大友作品に求めるものと映画の内容が違っているのは当然かもしれない。そもそも僕は『蟲師』にあまり興味がない。筋が分からなかったからといって原作を読む気もしないくらい、興味のもてない世界。日本の自然にもあまり興味がない。
 とは言っても映画の出来が悪いことは事実です。
 
 大友克洋といえば我が心の師匠であり、『アキラ』で人生変えられて、その後待ちに待った『スチームボーイ』が生涯最愛のアニメになるはずだったのに、いざ観てみると諸手を上げて賞賛することはできない作品だった、というショックを僕は未だに引きずっている(諸手を上げて賞賛したかった)。だからどうしても大友さんの‘次’に期待してしまう。監督が自分の作りたいものを作るのが一番だけれど、また一発強烈な作品をかまして欲しいと切に望みます。

 付け足し:オダギリジョーのわざとらしい白髪になじめず(漫画が原作だから仕方ない)。江角マキコは熱演だったけど、独特のセリフ回しのせいで真剣な場面なのに笑ってしまうことが多かった(セリフが悪いのかも)。


2007.3.19

『フライトプラン』(2005)

 劇場公開時にそこそこ話題になったので、どんなもんかいなとテレビでぼんやり見ていたら、冒頭でいきなりフランソワ・オゾンの『まぼろし』と同じことをやっているのでまさかそういう話なのか?!と驚いていると、まさにその通りに物語が進んでいくので脚本家は正気なのかとあたふたしていると、ちょうど一時間たったあたりでそのネタが明かされて騒動がいったん落着してしまったので後はどうもたせるんだと不安に思っていると、大きなどんでん返しがあってああやっぱりジョディ・フォスターは偉い、という映画だった。なんだかんだで最後まで観てしまった。これは『乱気流』に続く飛行機パニックの怪作だ。
 
 誰が何のためにという謎解きは重要でなく、自分が正気かどうか確かでない状況でいかに自分を信じて道を切り開いていくかということが問われている。正気と狂気の境というなかなか深いテーマを扱っていて面白い。つじつまが合う合わないはこの際どうでも良い。
  
 でも面白いのはその部分だけで、あとは退屈。機内での追いかけっこはスリルがないし、ジョディ以外の役者が弱い。なので劇場で観たら怒っていたであろう。あと、この映画で一番かわいそうなのは事情を全く知らない他の乗客たち。怖かっただろうなあ。主人公と同じ飛行機には絶対に乗りたくない。あんなはた迷惑なことがあるか!等々このようなことをテレビの前であーだこーだ言って観るのが楽しい。

 ああ、でもボカリと殴られて鼻血を出すスチュワーデスさんにはグッときたなあ。これって危ないでしょうか。


2007.3.18

『ルナシー』(2005)

 京都に来るまで待てないので、大阪まで観に行ってきました。感想は・・・・わはははは!これは面白い!いーぞいーぞーシュワンクマイエルもっとやれー!

 思えば、シュワンクマイエルの昔の作品は芸術を観ているというしんどさがあって、肉片や骨が動くのは面白いけど他はわけわからんのが多くて正直苦手だった。
 その印象が変わったのが実写映画『オテサーネク』。どうせわけわからんのだろうというこちらの予想を裏切って、緊張感みなぎるホラーコメディだったので驚いた。テンポが良くて、人物の設定がしっかりしていて、感情移入できて、可愛げがあって、笑えて、ぞっとする血まみれシーンもちゃんとあって、すこぶる面白い。娯楽映画も撮れるという意外な面を見ることが出来てとても嬉しかった。

 今回の作品も基本は、主人公の情けない青年が厄介なおっさんの厄介な趣味に巻き込まれてドタバタするという面白話。哲学的ホラーというより哲学的コメディ。とにかく笑える場面が多い。しかし次第にサスペンスフルになり、手に汗握ってあっという間の二時間以上。しっかり血まみれシーンもある!
 また、期待通りのキチガイキャラに加えて金髪美女も登場。ひどいことをされている女の子を助けるために主人公が孤軍奮闘するという、僕のツボに入りまくりの展開(『ホステル』『隣の家の少女』等に見られる)まであって、グッときた。この女の人もあんなことやこんなことまでやってしまうつわもので、要注目。

 実写の本編だけでもお腹いっぱいなのに、コマ撮りアニメもちゃんとある。映画が始まる前のちょっとしたお遊び(最高!監督にはお茶目な面もある)や、冒頭いきなり出てくる‘お腹パックン内臓ボタボタ’アニメ、その後場面の転換時に必ず挿入される肉片アニメを観て、監督のサービス精神に感激した。ファンが何を望んでいるのかを監督はよく知っているんだなあ(あるいは単に肉片が好きなだけなのかも)。

 『オテサーネク』に続き今回も大満足。これからもついていきます!


2007.3.13

『ウォーク・ザ・ライン』(2005)

 ホアキン&ウィザースプーン(以下スプーン)の主演でジョニー・キャッシュの話!ということでものすごく期待してたのに、普通の映画だった。ここまで普通に作られても困る、というくらい普通。大変だったはずのヤク断ちも、寝てるだけというあっさりした描写。寝たら治るって、風邪かよ!でもこの辺は伝記映画の難しいところで、何もかも丁寧に描いていたら映画がもっと長くなってしまうので仕方がない。
 それにしてももう少し格好良い映画に出来なかったのか!どうしてエルヴィスやジェリー・リー・ルイス(あとロイ・オービソン)役の俳優が皆してあそこまでオーラがないのか!‘「俺からすりゃ皆ただのチンピラだったよ」という当時のキャッシュの自信を表現している’とでもいうのか?!

 ジョニー・キャッシュといえば『ドーン・オブ・ザ・デッド』のオープニング、世界崩壊の映像の後ろで流れた、聖書の黙示録を淡々と歌った不気味なカントリーソングしか知らないので、彼の音楽の世界観などにとても興味があったのですが、その辺の描き方も浅い。てめえでCD聴いて勉強しやがれということか。

 映画の基本は恋愛話ですが、奥さんかわいそうという印象が勝ってしまって入り込めず。あと、親類が集まっためでたい席で主人公(破滅的)がいきなりキレて楽しい雰囲気を台無しにしてしまうような気まずい食事シーンは見ていてつらいので嫌い。

 そんなこんなで惜しい映画でしたがスプーンがやっぱり可愛かったので良かった。キャッシュの父親が『ターミネーター2』の液体金属人間だったことにはとても驚きました。


2007.2.24

『鉄コン筋クリート』(2006)

 うーん、手持ちカメラ風の演出とかテクスチャをぺたぺた貼った3Dの背景とか凝った映像は素晴らしいんだけど、人物をデフォルメしまくった絵がどうも好かん。『マインドゲーム』がクソだった僕には少々つらい。皆さん、あれの真似は
やめましょう。人物の絵を簡単にしちゃうのははっきりいってつまらない。いくら躍動感のある動きでも。松本大洋の原作どおりのリアルなキャラクターがきれいな線でグニョグニョと動くのが見たかった。

 ストーリーやセリフは原作に忠実なんだけど、先の簡素な絵のせいでどこか軽い。やはり漫画で読んだほうが緊張感があり、迫るものがある。


2007.2.23

『殺人捜査』(1970)

 ぐおおおおわけわからん!少し変わったミステリーかと思ったら病気男の病気に付き合わされていたという衝撃の映画。

 その病気とは‘権力を握る者に特有の職業病’。警察幹部という権力のある座に長く付き、何でも自分の思うままになりすぎて、神経が麻痺した?いや、内なるサディストが表の世界へ自分の存在を主張しようといくら努力しても、彼が組織に属している以上、それらは全てもみ消され結局は単なるひとつの歯車として組織に取り込まれてしまうということ?権力組織とはそういう物だということ?これらのことを考えてもう一度見直さないとこの映画は難しいなあ(もう一度観たいとは思わないけど)。

 モリコーネさんのいかれた音楽と、主人公の濃い演技はとても良かった。


2007.2.22

『シカゴ』(2002)

 楽しかったー。とにかく曲が良い。キャッチーなメロディでしかも格好良い。特に、男を殺した女囚たちの歌は最高だ。映画館で観ればよかった。
 ゼタ・ジョーンズは今までただのきれいな人としか思ってなかったけど、認識を改めた。芸が出来るというのは偉い。途中でいきなりルーシー・リューが出てきて驚いた。しかもまた‘ヤッチマイナ’な役だったので笑った。

 

『裸の銃を持つ男』(1988)

 前に見ていたようで実は見ていなかった、コメディ映画の金字塔。

 わたくし、遅ればせながら2003年の『最狂絶叫計画』でやっとZAZ式コメディの面白さに目覚めたのですが、それ以降『ケンタッキーフライドムービー』、『フライングハイ』や『トップシークレット』等の初期作品、そして本作と続けて見ていると、ZAZ映画がいかに面白かったか、いかに偉大であったかがよくわかりました(ZAZというのは本作の監督デヴィッド・ザッカーを含めたバカ映画制作トリオの名)。

 とにかく全てのシーンにギャグを詰め込む。コメディアンでない普通の俳優が真面目な顔をしてギャグを演じることで場面の面白さや異常性が際立つ。共演者はつっこまない(つっこむのは観客)。主役からエキストラまで全員が最後までひたすらボケまくる。これぞZAZイズム。まあ、主役のレスリー・ニールセンが本作あたりで完全にコメディアンとして一人狂い始めていますが、それでも映画は面白い。この精神が『最狂絶叫計画』で復活し、全米一位の大ヒットになったことを思うと何だか感動的。敬意を覚える。こうなったら『裸の銃』シリーズ全作見たい。

 本作でヒロインを演じたプリシラ・プレスリーがやたらと可愛かったのですが、何と当時43歳!えー!信じられない!

 (そういえば、上の文章の「コメディアンでない普通の俳優が・・・」と同じことをかつてジャック・タチが自身の監督作『プレイタイム』でやろうとしていた、ということをフランス語の授業で知った、ということを今思い出した。タチの映画も見なくては・・・)


2007.2.18

『リトル・ニッキー』(2000)

 あはははは面白いなあ。どうして今まで観なかったんだろう。バカ映画の大傑作だ!

 どこまでも細かく、どこまでもくだらなく、どこまでも下品なギャグに圧倒される。オープニングからして本筋と全く関係ない、しょーもないジョークみたいな話だ。でも、これが面白い(なぜか『マルホ』のローラさんが出てる。ゲストなのか?まだ売れてない時代だったのか?)。それ以降、ひたすらギャグのオンパレード。頭からオッパイ(巨乳)が生えるなんて、一体どうやったら思いつくのか。執拗にケツを攻めるギャグも良い。最高なのは、主人公が群集に追いかけられる場面で、自分も群れに加わろうとするが「走るのはやだなあ」という思いもあって行くか行かないのかはっきりせず、結局あきらめるデブ男。あのフラフラとした動きの妙!見事!思わず「どないやねん」と激しくツッコミを入れた。こういうミクロなところで笑わせるのは偉い。

 登場人物も完璧。主人公に味方するヘヴィメタルファンのバカ二人が最高。メタル聴いてて良かったと思う。大物俳優たちもそろって嬉々としてバカをやる。良いなあ。楽しいなあ。リース・ウィザースプーンは可愛いなあ。あ、『ホット・チック』な男、ロブ・シュナイダーもいるぞ!

 とにかくドタバタなんだけど、意表をつく展開もあって飽きさせない脚本も見事。まさに愛すべき映画。でもラジー賞ノミネート。何で?


2007.2.16

『奥さまは魔女』(2005)

 『エルフ』『俺たちニュースキャスター』等で最近やたらと気になってきたウィル・フェレルが主演!かつ日本でも劇場公開されたということで楽しみにしていたのだが、あまり楽しくなくて残念な結果となった。脚本がいまいちだなー。

 アイデアは面白いのだけれど、元のテレビシリーズを観ていない若い観客(僕のこと)は、「ああ、ここがパロディ、ここがオマージュになってるのね、でもオリジナル観てないからよくわかんないや」と思ってしまい、さっぱり乗れないのであった。というか、アメリカでは若い人も元のシリーズを観てるってこと?今でも繰り返し再放送されてるってことなのかな。そうだとしても、やはり観てる観てない関係なく楽しめるパワーを期待していた。残念。どうせならひねらずにそのままリメイクして、完全なドタバタコメディにしてくれた方が良かった。オリジナルは元々そういう作品なんだろうし。

 それにしても慌てふためくウィル・フェレルは面白いなあ。テンションの高いスティーヴ・カレルを観られたのも良かったです。ニコール・キッドマンはどうでもよかった。


2007.2.3

『追悼のざわめき』(1988)

 京都での上映会。滅多に観られない作品の上映、しかも大槻ケンヂを生で見られるというおまけ付きの、ワクワクの体験だった。二時間半の上映であのイスはケツが死にそうだったが、映画はすごかった。作り手の気合とパワーがあり過ぎて、圧倒された感じ。「うげ〜」とか言いながら観るのが楽しい。でもダルい部分もあったなあ。
 
 胎児と火災と女子高乱入とかが楽しかったです。

 で、女優さんが後ろの席に座っていてビックリ。


2007.2.2

『スキャナー・ダークリー(暗闇のスキャナーの方が良い・・・)』(2006)

 いえ〜い、ついに映画化だぜい、ついに観たぜい。テアトル梅田はとってもちっちゃかったが、上映時間も短く感じたぜい。原作世界が忠実に再現されているのがうれしくてたまらなかった。特にオープニングの格好良いこと!でもやはり原作のダイジェストというか、一部をとってきてつぎはぎしたような印象もある。なので原作の哀感にはとても敵わない。脇のヤク中トリオの面白さに比べてキアヌが大人しすぎるのも良くない。やっぱり原作の山形訳のように、もっと壊れないとダメだ。‘あのセリフ’も原作どおりオッサンが言わないとダメだ。

 このようにどうしても注文が多くなるが、それだけ映像が原作のイメージにピッタリなのだ。この際三時間でもいいから丸々映像化すべきだった。

 それにしてもヤク中トリオ最高。役者って偉い。


2007.1.6

『ホステル』(2005)

 天六ユウラク座にて。最高!最高!サイコー!もっとはちゃめちゃなグロいだけの映画かと思っていたらヒューマニズムとヒロイズム溢れる王道のアクション映画だった。しかもとても後味が良い。これはかなりうれしい。老若男女問わず万人に堂々とお勧めできる。

 ○○が○○○した女の子を助ける辺りとか、泣けてくる。これこそ真のヒーローだ!「タクシードライバー」より格好良いぞ!というか、○○が○○○した女の子萌えー!(何のことか分からない人は今すぐ映画を観よう)

 惨劇が始まるまでの導入部は多くのホラー映画がおろそかにしがちで、大抵若者のどうでも良いダベリとかイチャイチャが続いて退屈してしまうが、この映画が偉いのはそういうダレ場が一切ないこと。殺人鬼がまだ出てこない前半も面白いのである。若者がただ騒ぐだけでなく、人物や風景を描きしっかり伏線を張り巡らせて、惨劇へと自然につないでいく。うまいなあ。

 監督のイーライ・ロスは前作『キャビン・フィーバー』も傑作だった。この人は意思が通じないことの恐怖を描くのがうまい。『キャビン』のアメリカ南部と『ホステル』のスロバキア、通じるところがあります。

 被虐のヒロインといい、解体屋といい、暗い廊下といい、脱出アクションといい、『BloodyDate』作る前に観なくてよかったとつくづく思う。観たらやる気なくしてたかも。「完成形」をまざまざと見せつけられた気分。


2007.1.4

『時計じかけのオレンジ』(1971)

 思っていたよりもテーマのはっきりした、分かりやすい話だった。後半をくどく感じたほど。それだけのことなのか?と。でも確かに前半は最強。気分が高揚する。スローでビシーっとしばくとことか格好良いなあ。何だかキューブリックを好きになってきたぞ。


2007.1.2

『フルメタルジャケット』(1987)

 やっと見た。アーメイ教官の罵声に爆笑。でもあの罵声は兵士のためを思ってのことだ。良い人なんだと思う。だから最後がちょっとかわいそうだった。
 
 決めの構図とかロックの使い方とか、キューブリックを初めて格好良いと思った。


2006.12.30

『乱気流 タービュランス』(1997)

 ぎゃははははは。緊迫のジャンボジェット着陸作戦をことごとく台無しにしていくレイ・リオッタが楽しすぎる!墜落の危機の中、レイ・リオッタと過ごす悪夢のクリスマス!乱気流より怖いぞ!誰かあのキチガイを止めろ!
 
 パニック映画とスラッシャー映画の融合を狙ってるんだろうけど、悪役を一手に引き受けたリオッタさんががんばり過ぎたせいで彼の一人芝居になってしまった。最大の見所である‘天と地がひっくり返る機内’のシーンも、あれだけ凝ったセット作って実際はリオッタさんが「ヒャッホー!」とか言いながらゴロゴロ転がるだけで、まるで遊園地のアトラクションで遊んでいるような微笑ましい光景。これでいいのか?!(いいんです)

 そういうわけで元気いっぱいのリオッタさんを観ているだけで十分楽しい作品であるが、加えて話のテンポも良く、しっかりしたゴアシーンもあって大満足。ヒロインもかわいいし。でもやっぱりリオッタ。

 

『蝋人形の館』(2005)

 面白え。ゴア描写以外見るものがなくて(まあ、それだけでも十分ですが)いまいちだったダークキャッスル初の快作。
 
 冒頭、朝食のシリアルと拘束具、泣きわめく子供と怒鳴り散らす父親という「暗い幼少期の思い出」の場面が素晴らしい。ティム・バートンをもっとエグくしたような感じで、まさかこんな良いものが見られるとは思っていなかった。
 
 本編もテンションが高い。田舎っぺの不気味さ、人形のキモさ、そしてゴアゴア!指チョンパとかアキレス腱チョンパとか、妙に痛いところを突いてきて、久しぶりに画面に向かって「やめてくれ〜」と叫んでしまった。ヒロインが思い切りいたぶられるのもすごいが、殺人鬼側の痛みも平等に描いているのが新鮮。クライマックスの殺人鬼の末路なんてあまりに痛そうで、カタルシスを超えて何ともいや〜な気分になった。
 
 パリス・ヒルトンは好きで出ているのか?だとしたら偉い!立派!見直した!途中でいきなりマリリン・マンソンの曲がかかったりするサントラも良かった。


2006.12.28

『俺たちニュースキャスター』(2004)

 最高!最高!これを何で劇場公開しない?!最近観たコメディ映画で一番むちゃくちゃな内容だったけど、不思議とまとまっているし、とにかく面白い。細かいギャグがいちいち笑える。安尾信之助系の「ですか?」ギャグもあったりして、やはり吉本新喜劇。偏差値ゼロのくせに自信だけは満々のアンカーマン、ウィル・フェレルを筆頭に、面白いやつらが大集合。ヒロイン、アップル嬢の体を張ったコメディエンヌっぷりが見事だし、`mentally retarded'な天気予報士を演じたスティーヴ・カレルはもはや神の域。その上豪華なカメオ出演が盛りだくさんでとっても幸せ。この辺の人たちはバカであることに重きを置いていて、本当に好きだ。こんな大人になりたいなあ。最後に一言「牛乳は失敗だった!」


2006.12.17

『宇宙戦争』(2005)

 ぐおおおおおぉぉおもしれええええええええ!!!!!SF映画かと思ったら、完全にホラー映画だった。しかも『散歩する惑星』に匹敵する絶望地獄絵巻。とにかく映像がすごい!目の前の建物が一瞬で崩れ落ちたり、人間が消し飛んだりする。とにかく全てがリアルで、「カメラがとらえた衝撃映像」を延々と観ているような感覚に陥る。9・11テロ映像のインパクトを超えようという制作者の意気込みがひしひしと伝わってきて嬉しくなる。実際、超えているし、映画が現実に勝った瞬間である。ああ世界はこうして終わるのか、もうダメだもうみんな死ぬんだーという絶望感が素晴らしい。上映時間が短いのも大変よろしい。
 
 宇宙人の侵略という壮大な出来事を一市民の目から描ききるというアイデアが見事。『サイン』でシャマランがやろうとして失敗した(あれはあれで面白いけど)ことを、完璧な形で成功させた。破壊と殺戮は突然始まり、わけが分からんうちに世界が崩壊していく。観客が主人公と同様にそれが‘宇宙戦争’であることを知らなければ、このカオスをもっともっと楽しめたであろう。ラストまで徹底していて、知らないうちに全てが終わっていたというあっけなさが最高。無理やりだという批判もあるようだが、現実とはそういうものだと大いに納得した。

 唯一残念なのは主人公がトム・クルーズ。全然ダメ親父に見えない。トム・クルーズにしか見えない。ダコタ・ファニングは器用でとてもよかったです。いかれたティム・ロビンスもよかったです。

 クソ映画『AI』を観てからスピルバーグは終わったと思っていたけど、見直したよ!はやく『ミュンヘン』も観ないとなあ。


2006.12.13

『フォーリング・ダウン』(1993)

 大学生協にて650円のDVDを買って観た。これが・・・・・ひょお!面白え!面白えよ!オールタイムベスト10に食い込む勢いだ(ちなみにベスト1は『AKIRA』)。安い値段で大傑作を観られたこの喜び!観始めたらやめられず、観終わればすぐにもう一度観たくなる映画。全力でおすすめします。

 平凡な男が突然キレて人を殺しまくるコメディ映画かと思っていたら、アメリカの社会問題に正面から取り組んだ大まじめな映画だった。もちろんユーモア満載で、爆笑シーンもあるけれども、根底にあるのは矛盾だらけのアメリカ社会に対する市民の怒り、憤り、そして悲しみだ。「この国はどうなっちまったんだ!」という制作者(主に脚本家?)の魂の叫びだ。それら全てを代弁するのが主人公‘D-Fens’だ。

 彼はまず、どこにでもいる平凡なサラリーマンとして現れる。ある暑い日、交通渋滞にうんざりした彼は突然、思い立ったように車から飛び出し、「家に帰る!」という言葉を残してどこかへ行ってしまう。ここから彼の暴走が始まるのだが、それは単なる無軌道な破壊活動ではなく、平凡な一市民として生きてきた彼が自身の目でアメリカ社会の抱える問題を再発見し、その現実を身をもって体験する旅でもある。
 
 街からはずれるとすぐに移民系のチンピラにからまれる、それを撃退すれば報復の銃撃を受ける、その巻き添えで多くの人が死ぬ。融通の利かないファーストフード店、ポスターと違って薄っぺらいハンバーガー。予算確保のための道路工事。「肌の色で不良債務者と判断された」と銀行の前で抗議のデモをする男、彼は警察に連行される直前、D-Fensに向かって「俺のこと、忘れんなよ」とつぶやく、黙ってうなずくD-Fens・・・・(泣)。公園に行けばホームレスに金をせびられ、銃砲店ではゴリゴリの差別主義者に出会う。金持ち老人のためのバカでかいゴルフ場、整形外科医の大邸宅。
 
 怒りの矛先が最後に金持ちに向かう辺り拍手喝采なのであるが、D-Fens自身もまた問題を抱えた人間であることが分かってくる。旅の中で彼がそれを自覚する時、映画は深い哀愁をおびる。主人公がナチュラル・ボーン・キラーでなく、幸せな暮らしを望んでいるのにどうしてもうまくいかない普通の男であるため、彼を応援し共に闘いたくなる。本当に熱い映画だ。

 巧妙に伏線を張って人物の素性を少しずつ明らかにする、こういう見事な脚本は久しぶり。主人公に対比して描かれる刑事のキャラクターもうまい。脚本家は誰だと思って調べてみても他の作品があまりない。日頃の恨みをぶちまけた一発屋の作品だったのかも。だとすれば余計に熱い。

 長々と書いているが、要はD-Fensサイコー!マイケル・ダグラスがこんなにかっこよかったとは。これから授業がしんどくなった時は「家に帰る!」と言って学校を飛び出し、手提げカバンと傘(バットの代わり)で思わず決めポーズだ!


2006.12.9

『江戸川乱歩全集 恐怖奇形人間』(1969)

 うわーい、ついに観たぞー!ありがとうシネラリーベ!噂にたがわぬ、いやそれ以上のすさまじい内容だった。

 冒頭の精神病院からいきなりキチガイだらけ!このロケットスタートがうれしい。わけも分からず病院に入れられた主人公の独白が格好良すぎ。「俺は本当に狂っているのか?いや、違う、俺はキチガイじゃない!しかし、どこからかまたあの子守唄が聞こえる・・・・」その後、主人公が病院を脱走して自分の出生の秘密を探るうち、あれよあれよという間に舞台はとある無人島へ。そこでは土方巽扮するキチガイ博士が奇形人間ばかりのパラダイスを作り上げていた!

 無人島へ行くまでは割りと地味な(が、どこか異様な)サスペンスドラマが続くが、島に着いてからは映画の全てが暴走を始める。ここからが本当に面白かった。まさに今までに観たことのない世界。奇形奇形といっても本物が登場するわけではなく、土方率いる暗黒舞踏集団が己の肉体を駆使して演技するわけで、プロのパフォーマンスを鑑賞する楽しさがある。暗黒舞踏なんて『ピストルオペラ』でちょこっと出てきたのを見たぐらいで、その時は特に何とも思わなかったけれど、今回は本当に格好良いと思った。チープな衣装とメイクだけであんなにやば過ぎる世界を作ることができるんだ。特に恐怖の手術室のシーンで後ろに立っていた包帯グルグル内臓ピチャピチャの女性たちは素晴らしかったなあ。この、手作りの見世物小屋精神は見習うべきものである。

 奇形をテーマにし、散々おどろおどろしい物語を展開しながら、最後は自分の犯した罪を悔いる者たちの泣きで終わるのも良い。それに続いてエンディングを飾るのは、伝説の「花火」!そして魂の叫び「おかーさーーーん!!!!」初めて観た時はそのあまりのインパクトに絶句したが、後で思い出すたびにニヤニヤしてしまう。良いなあ。好きだなあ。

 めったに見られないものを見たという満足感でおなかいっぱいです。前から気になっていた土方巽も見ることができて良かった。声まで聞けたし。


2006.12.5

『エコール』(2004)

 監督が、フランスの変態監督(未見ですが)ギャスパー・ノエの奥さんだとか、作風がデヴィッド・リンチっぽいとか、『サスペリア』と同じ原作だとか、少女がいっぱい出てくるとか、とにかくやばそうな噂を聞いて居ても立ってもいられず平日の真昼間に観に行きました。で、思っていた以上に面白かった!
 
 「ゴゴゴゴゴ・・・・」という不気味なノイズが響きわたるオープニングから、一気に映画の中に引き込まれる。それから2時間、まさに別世界をのぞき見る映画的快楽。内容は、深い森の中に建てられたある‘学校’に暮らす少女たちの一年間の営みを淡々かつミステリアスに描いたもので、セリフの少ない静かな場面が多いが、それでも一度も退屈しなかったのは、完璧に構築された作品世界にどっぷり入り込むことが出来たから。そりゃあ、登場する少女たちの可愛さのせいでもありますが、それ以上に彼女たちのそれぞれの物語、それぞれの心情を丁寧に描く監督の演出力が大きい。一見不条理な話のようだが描かれているのは普遍的な思春期の心で、しっかりと感情移入して観ることが出来る。
 
 また、最初は‘学校’についての説明は観客にはほとんど与えられず、映画が進み登場人物の学年が上がるごとにその秘密を彼女たちと共に知ることになるという構成も素晴らしい。「この学校の目的とは何か」という興味で観客をグイグイ引っ張っていく。最後に全てが明かされるのかどうかは観てのお楽しみ。
 
 場面の一つ一つが絵画のような、美しい映像も見事。
 
 少女たちの妖しい撮り方に「チャイルドポルノだ」と非難し嫌悪する人もいるだろうが、そんな目でしかこの作品をみることが出来ないとすればそれは(その人にとって)不幸なことだ。が、その一方で少女たちの可愛さは否定できないので、ロリコンの人たちが盛り上がるのも大いに結構。スカートの女の子たちがやたらと側転するしな。どちらにしろ、観てください、ということです。おすすめ。

 で、映画を観ていて強く感じたのが(噂どおりの)デヴィッド・リンチの影響。先に書いたノイズはもちろん、不穏な森の空気とか、赤いカーテンのかかった劇場とか、いろんなところにビシバシと感じる。これは相当なファンなのだろうと思って監督のインタビューを読んでみると、リンチのリの字も出てこない。代わりに言及されているのが『ミツバチのささやき』。こりゃ観るしかないぞ、と。

 

『ミツバチのささやき』(1973)

 『エコール』を観た後、「子供の世界を描いた映画がもっと観たい!」と心にボッっと火がついた。そしてこの映画を観る僕の目の前に現れたのは奇跡の美少女・アナ!なんだこりゃ、可愛すぎる!黒目に、黒目に吸い込まれる〜!
 ・・・・作品は詩情あふれる傑作だった。セリフを排して子供の表情で語る、『エコール』と同じことを30年以上も前にすでにやっていたことに驚く。作品の古さを全く感じさせない演出が見事。闇の世界を純粋な目で見つめ、その中に入っていこうとする少女の姿にゴスっ子は号泣するであろう。何ともいえぬ哀感のあるテーマ曲も合わせて、何度でも観たくなる映画。


2006.12.3

『ミリオンズ』

 『トレインスポッティング』未見の僕が言うのもなんですが、監督のダニー・ボイルは下手くそだと思う。前半は凝った映像とカメラワークで観るものを大いに期待させ、後半は急にスケールダウン、物語も画面も暗くなり構図も雑になる。前作『28日後...』と同じパターンだ。前半は良いのに、惜しい。


2006.12.1

『Mr.インクレディブル』

 もはやCGアニメは技術を競うのではなく作家のセンスを競う時代に入ったことを痛感させる一本。あえてのシンプル、絶妙なデフォルメ。女性や子供キャラが違和感なく、非常にかわいく描けているのがすごい。物語もスマートで、ただのヒーローパロディに終わらず全体が家族のメタファーになっている。三輪車の男の子の辺り、小技がバッチリ決まっていて最高。


2006.11.27

『殺しのドレス』

 祝・京都大学11月祭終了!で、これが僕の打ち上げ。デ・パルマ先生って昔からこういう作風だったのか。どこへいくのかさっぱり分からないストーリー展開、妙に情の湧くキャラクターたち、サスペンスを上回る微笑ましい幸福感。官能ドラマとボーイ・ミーツ・ガールの融合。変な映画だなー。


2006.11.13

『コープスブライド』2回目

 クレイアニメを作るようになってから改めて観ると、あまりに高い完成度にため息が漏れる。もはや全部CGに見える。同時に、ドラマ作りのうまさを思い知った。ここまで美しいネクロフィリア(死体性愛)がかつてあったか(『ネクロマンティック』があったけど・・・あと『デモンズ95』)。主人公が途中であっさりと死者の世界を選ぶ辺りにバートン節が効いていて最高。そりゃ「世界で一番美しい死体」エミリーの愛らしさには誰でも参りますわな。ラストも泣ける。『ナイトメア・ビフォア・クリスマス』より好き。これで後は音楽がもっとゴスゴス(GOTHGOTH)していたらバイブルになったのになあ。


2006.11.12

『テキサスチェーンソー ビギニング』

 最高!久々に劇場から逃げ出したくなった、不愉快極まりないホラー映画。このページの下の方の『クロウ』評でも紹介しているホラー作家スコウさんも関係している見事な脚本と、「ここまでやるか」のゴア描写。『ハイテンション』とかもうどうでもいいです。シリーズの重要なテーマである「人肉食」も正面から描いていて感激。テキサスの寂れた情景と子守唄がピッタリ合って、詩情さえ感じられる。まさに作り手の愛が成せる業だ。濃い眉毛のヒロインがかわいいし、殺人鬼レザーフェイスを完全に食っているリー・アーメイの活躍もうれしい。


2006.10.15

『ファイナルデッドコースター』

 涙が出るほどの文句なし大傑作ホラー。『ファイナルデスティネーション』『デッドコースター』に続くシリーズ第3弾で、一作目の学園ものの楽しさと二作目の豪快さが融合。冒頭、ジェットコースターの順番待ちをする登場人物たちの高揚感が、これから映画を観る観客のそれとシンクロしていてうまい。シリーズ史上最もかわいいヒロインや悲劇のゴス・カップルを含め魅力的なキャラクターたち、肉体破壊のカタルシス。そして口あんぐりのラストはシリーズ最後の打ち上げ花火にも見えたが、また次も作ってほしいなあ。


2006.10.14

『レディ・イン・ザ・ウォーター』

 シャマランには「良いシャマラン」と「悪いシャマラン」がありますが、これは「悪いシャマラン」でした(「良いシャマラン」の例:『ヴィレッジ』。好きだ〜)。オープニングから「今回は隠し立てしない。直球でいく」というシャマラン先生の本気を感じるが、その後は本気なのか遊びなのか狙いなのか失敗なのかわからない大混乱が続く。こんな話で演技できる主演の二人は偉い。

『ブラックダリア』

 デ・パルマ先生、つまんなかったです!やはり前作『ファム・ファタール』が奇跡だったことを再確認。原作ものなんかやめて、もっと自由に妄想を広げてほしいなあ。チョイ役チェック:ローズ・マッゴーワン。マリリン・マンソンの元奥さん。本当に出番がちょっとしかなくてビックリ。あと、『マルホランド・ドライブ』の「夢見る男」も出ててビックリ。


2006.9.30

『グエムル 漢江の怪物』

 最高!「ハッピーエンドじゃないからいや」という人はグエムルに喰われてください。あの展開だからこそ火炎瓶が最高に燃えるんです。『ワールド・イズ・マイン』のようなパニックから始まって、心底笑わせ泣かせビビらせて、最後は「このやろー!」というクムジャ並みの恨み節が炸裂。リアリズムあふれる演出も見事。最高の娯楽映画。


2006.9.29

『ふたりの5つの分かれ路』

 『スイミング・プール』で遊んだ後、オゾン先生がまた真面目に撮った映画。人生経験の浅い僕にとってはこれから生きる上での指標となった。二人が出遭う最初のときめきが一番良いなあ。あれをいつまでも保てないもんなのかなあ・・・・。


2006.9.20

『ぼくはこわくない』

 最高!イタリア版『隣の家の少女』(扶桑社文庫)。ダレ場なしのサスペンス映画。少年が大人の理不尽に立ち向かう姿はとにかく燃える。


2006.9.18

『トリプルX ネクストレベル』

 前作がいかに面白かったかを再確認。主演のアイス・キューブは『ゴースト・オブ・マーズ』の方が良かったです。最後のCG大会もつまらないな。戦車は格好良かったけど。


2006.9.16

『ハイテンション』

 あじゃ〜!後半の「あれ」より前は大傑作、「あれ」以降はクソだ!何であんなオチにしたんだろう。あのビョーキなラストも切なくて嫌いじゃないのだけれど、前半のリアリズムを貫いてほしかった。アジャ監督の言うような「100%ホラー映画」なら、『ロボコップ』みたく悪いやつをぶっ殺したカタルシスの絶頂で終わらせるべきだ。殺人シーンは近年まれに見る残酷さで、ヒロインが復讐に転じる高揚感も涙が出るほど素晴らしいのに・・・・惜しい。


2006.9.5

『16歳の合衆国』

 少年犯罪に物申す映画かと思ったら、リーランド君の繊細な心を通しての人生論だった。現実に犯罪を犯す少年にはもっとバカが多いんだろうけど、これはこれで良い映画だった。やっぱり少年が金を持ち過ぎるといろいろ面倒くさいということですね。僕はもう20歳ですがまだ悶々としていますよ。というかね、リー君は彼女もいてニューヨークの金持ち夫人とも近づきになれて、なかなかやるじゃねえかよ!で、その夫人というのが『ツインピークス』のオードリー、シェリリン・フェンじゃないですか!きれいだなー。がんばってんだなー。


2006.9.3

『ナポレオンダイナマイト』(『バス男』でなく!)

 人生全肯定のハッピーな映画。ナポレオン君のキャラがまず強烈だが、それだけに終わらずラストまで高いテンションで見せきる。クライマックスの高揚感は並でないよ。格好良過ぎ。


2006.9.1

『メタル ヘッドバンガーズジャーニー』

 イエーイ!僕のようなメタル一年生でも熱くなれる絶好の入門書であり、絶好の名盤案内。ロブ・ゾンビ先生の「メタルは一生ものだ!」という言葉に感動。メタルのスピリットを学び、北欧ブラックメタルに恐怖し、クライマックスで泣いた!キープ・オン・ヘッドバンギング!これからもっともっとたくさんの曲を聴きます!


2006.8.30

『愛についてのキンゼイレポート』

 ちょっと期待しすぎた感もあるが、「ありのままに生きられない人々を苦しみから解放する」というテーマがやはり感動的。リスゴー、カリー、『ハピネス』のおじさん等、元変態(役)で固めた脇役も何だかすごい。


2006.8.29

『キラーモンキーズ』

 KBS京都の最高の贈り物。アメリカの低予算テレビ映画だが、もろ『ブルーベルベット』なオープニングに始まって、グロ、エロ、ギャグをしっかり入れた作りに感動。演出で魅せる本編もなかなか面白いが、ブラックジョークの塊のようなオチが最高!『ドーン・オブ・ザ・デッド』の伝説的オープニングシーンを超える素晴らしさ。
 
 ローカル放送で血がピューピュー出るとすごくお得感があるなあ。こういうのを毎週やってくださいよ!


2006.8.26

『スパニッシュホラープロジェクト 産婦人科』 
 
 
ミスリード多すぎでつまらない。監督がどれほどのベテランでも失敗する、ホラー映画は難しい、ということがよく分かった。

『スパニッシュホラープロジェクト 悪魔の管理人』

 ヒャッホーイヒャッホーイ!ヒロインとキチガイの果てしない追っかけっこ!これが観たかった!やはりホラーはこうでなくちゃ。タイトルそのまま悪魔の管理人がひたすら暴れまくるだけの、「出るもんが出ずっぱり」というサービス精神あふれる傑作。これに対して上の『産婦人科』は「出るもんも出ない」最悪のオチだった。はっきり言って、幽霊の時代は終わった。『悪魔のいけにえ』以後、本当に怖いのは人間なのだ。


2006.8.22

『ドッジボール』

 最高。ハリウッドコメディのセンスと吉本新喜劇のセンスが同じであることを証明する一本。「合わせて12万ドル!」のギャグとドア閉めのギャグは新喜劇と全く同じだ。何だかとってもうれしい。サービス精神の塊のようなベン・スティラーはすでに神々しいし、主役のくせに終始やる気なしのヴィンス・ヴォーンも良い。外野も絶好調。特にミッシー・パイルは顔だけで勝利していますね。あー、こんなバカ映画、日本も作ってよー。がんばれ新喜劇。


2006.8.20

『スパニッシュホラープロジェクト ベビールーム』

 面白かったけどちょっとくどいし長い。量子力学のくだりも蛇足。ホラーに理屈はいりません。この監督ならではの容赦ないボコスカ描写は最高だった。


2006.8.11

『妖怪大戦争』金曜ロードショー特別編集版

 テレビ放映用のメタメタ編集に唖然。CMの合間にダイジェスト版を見ているような感覚。今のテレビ業界は本当に腐っている。
 で、内容ですが、三池監督の作品ということで外野のお遊びが面白いのは始めからわかっていたので、本編が本気で面白いことを期待していたが、やっぱりどーでもよかった。とろいテンポも間の悪さも観ていてつらいし、「人間どもが・・・・」という偉そうなセリフも大嫌い。女優陣のエロ動員も完全に浮いていたぞ。


2006.8.8

『プリンスアンドプリンセス』
 
 
思っていたよりもポップな内容でビックリ。笑えるギャグもたっぷり。ストーリーも良い。特に魔女の話はゴスゴス(GOTHGOTH)していて最高。「僕は(お姫さまより)魔女のほうが好き!」という主人公の熱い叫びに共鳴。ボサボサ頭の魔女はキュートだなあ。


2006.8.7

『ブルー・レクイエム』(2004)

 現金輸送業者の緊張感みなぎるタフな日常を描く。期待に違わず格好良い映画だった。殺しのプロでもない人間が銃をもって必死に敵に立ち向かう姿は燃える。人が死にまくる容赦ない銃撃戦もすさまじい。悲惨なクライマックスを含め全体的に静かで暗くて重いが、それを全部打ち消してしまうエンドロールでの軽いお遊びにびっくり。おそらくこれは本編が終わって後味の悪さにどんよりとなる観客に対する制作者からのメッセージだ。「そんなに深く考えるなよ、これは娯楽映画なんだから」。
 


2006.7.28

『死霊のはらわた』(1983)

 新聞のテレビ欄を何気なく見ていたら『死霊のはらわた』の文字があったのでおどろいた!なんだ、まだ地上波でもスプラッター映画は放送できるのか。昔は夜9時から『13日の金曜日』シリーズをやっていたけれど、最近はもうやらなくなったなあ。自主規制?テレビ局は何を恐れているのか?残虐な映像はみんな大好きだから、今ホラーをやれば視聴率とれると思いますよ。
 
 映画の方は相変わらず面白かった。もはや古典。作品作りに改めて気合が入る。
  


2006.7.23

『ワイルドタウン 英雄伝説』(2004)

 故郷に戻った元特殊部隊隊員が町を牛耳るゴロツキどもを角材でしばき倒す、ザ・ロック様のヒストリー・オブ・バイオレンス。見終わってまさかと思い時計を見ると上映時間たったの80分!偉い!そのいさぎよさに感激。まさに民放の吹き替え版で何となく見るのにうってつけの映画。
 
 腐敗した故郷の町を立て直すためたった一人で戦った、実在した保安官の話がモデルだそうで、予告編を見てその燃えるプロットにかなり期待していたのだが、ふたを開けてみればロック様のオレ映画だった。それはそれで非常に楽しいのだけれど、町が変わっていく様子や住民たちの表情など、周囲の状況をもっと丁寧に描いても良かったと思う。後半はロック様しか映ってなかったし・・。
 一人の男が戦争をしかけ、小さな田舎町に暴力の嵐が吹き荒れる様子をリアルに描けば、ジャック・ケッチャムの『老人と犬』(こちらは小説)並に燃える映画になったであろう。そういう意味で惜しい作品。
 
 でもまあ、金持ちの車をぶっ壊すロック様の姿は格好よかった。あの角材をかついでそのまま六本木ヒルズに乗り込んでいってほしいものです。アシュレイ・スコットはかわいいなあ。
 


2006.7.21

『ハウルの動く城』(2004)

 うーん、面白くなりそうな話なのに、見ていてわくわくしない。生活感やリアリズムのないセリフ・演出のせいでいらいらする。
 
 『千尋』もそうだったけど、主人公が常に観客の先を見ているのは良くないと思う。「うまくいきそうにない気がする」といわれてもその理由がわからないし、「もう大丈夫」には何で?何で大丈夫と分かるの?と思ってしまう。主人公が妙に冷静でいるのが不自然な場面も多々あった。観客は主人公の目を通してファンタジーの世界に入るわけだから、観客と同じ視点に立って観客と一緒に驚いてくれる主人公でないと、観客の立場は、物語が流れていくのをただぼーっと眺める傍観者でしかない。もっとこう、ひとつひとつの場面の中での人物の自然なリアクションを突き詰めた即物的現場主義で作った方が作品世界の不思議さがより強調されて楽しいはず。常にテーマや観念が先走っていて、人物たちがセリフを言わされている感が強い。
  
 ジブリの次回作『ゲド戦記』も「命を大切に・・」とか吐いちゃってるし不安。『ゲド』のCMといっしょに公共広告機構のCMもやればいい。「命は大切だ。命を大切に。そんなこと何千何万回言われるより‘あなたが大切だ’誰かがそう言ってくれたらそれだけで生きていける」。やっぱり「命」とかセリフにいれちゃいかんよ。
 その一方で説明過多なセリフもある。特に主人公の独白。「今、わたし、ハウルの子供時代にいるんだわ」なんて、くどい。あれは大衆向けに後から付け足したのだと信じたい。
 
 他にも、主人公が背を向けることになる現実の世界の描写が中途半端だから、後の城での気ままな生活が生きない。あの街の明るい色彩からは、戦時中の暗い雰囲気は感じられないし、主人公の心が老婆のように枯れてしまっていたことを表現したいのなら現実の退屈な生活をもっと丁寧に描いて欲しかった。
 そしてラストのカカシにまつわるオチはギャグでしかないと思う。
  
 脚本についてはこのようにいろいろ文句が多いが、映像は見事。これだけCGを違和感なく使われると、同じことを10年早くやろうとして格闘してきた『スチームボーイ』はまさに着想が早すぎた、そして完成するのが遅すぎた作品だったといえる。

 最後に。英語版ではハウルの声をクリスチャン・ベールがあてている!これは観たい!


2006.7.14

『クロウ 飛翔伝説』(1994)

 『ダークシティ』『アイ・ロボット』のアレックス・プロヤス監督作品。主演のブランドン・リーが撮影中の事故で亡くなり本当に伝説になってしまった映画。ダークな世界観を強烈に印象付ける冒頭の鳥瞰ショットからすでに格好良すぎる!その格好良さを保ったままテンポ良く一気に見せる。恋人と共に殺されたロック青年がカラスの力を得て墓からよみがえり悪党どもに復讐するという、ダーク・ヒーローものの王道をいくストーリーだが、主人公の黒ずくめファッション含め全編を貫くGOTHGOTHしたロック魂が新鮮。ビルの屋上で哀愁のエレキを奏でる美しい場面もある。復讐心に燃えつつも時に哀しい、時にユーモラスな表情を見せる主人公のキャラクターも良い。彼を取り巻く人々との絆も丁寧に描かれ、暖かく、感動的。「なぜ街に火をつけるのか・・それは楽しいからだ!」というピュアな名言を吐く悪役も強烈。
 
 映像は相当凝っており、光と影を効果的に使った画作りもバシバシ決まっている。後の『ダークシティ』にそのままつながる都市のデザインや、そのミニチュアセットのような箱庭感はゴッサムシティより素敵。
 かつて『アンダーワールド』を見て作品の出来はともかくそのダークな世界観に感激していたが、それより十年も前に同じことを何倍も格好良い形でやっていたことに驚く。「やっぱりGOTHは良いな〜」と思わせる傑作。
 
 ちなみに脚本のデヴィッド・J・スコウはホラー作家でもあり、創元推理文庫のゾンビ・アンソロジー『死霊たちの宴』(原題:BOOK OF THE DEAD)で新興宗教の教祖率いるゾンビ軍団と人肉食に目覚めたデブが死闘を繰り広げるイカした短編が読めます。
     


2006.7.14

『空軍』(1943)

 大学の、映像芸術論の授業にて鑑賞。金曜の最後の授業は冷房の効いた部屋で大きな画面で映画鑑賞、最高だなあ。ただし履修登録していないから単位はもらえない。いいんです、どうせレポート書く気ありませんから。
 
 『遊星よりの物体X』のハワード・ホークス監督作品。第二次大戦中に作られた戦意高揚映画。ある米軍爆撃機の乗組員たちの活躍を描く。中盤でそれまで主人公格だった人物が無念の死を遂げ、その遺志をついで脇役野郎どもが一致団結するという、ヤンキーでなくとも燃える展開。後半は大迫力の戦闘シーンが続き、空中戦、地上戦、そしてクライマックスの海戦、日本艦撃沈ジャップ皆殺しの一大スペクタクル&カタルシス、その勢いを保ったまま「次は東京大空襲だ!」でエンディング、最後に大統領の「叩いて叩いて叩きまくるぞ」演説・・・。これで戦意が高揚しないわけがない。人々を戦争に駆り立て得る、映画のもつ力に不気味なものを感じる。それほどに良くできた作品(鑑賞中は、「ジャップを殺せ!あ、ジャップは俺か」と複雑な心境)。これと同時期に日本人は『桃太郎の海鷲』を観て気合を入れていたわけだ。『空軍』に比べればかわいいものだと思う。


2006.7.9

『ネバーエンディングストーリー』(1984)

 えらいぞKBS京都。この前は『クライ・ベイビー』やってたし。
 
 この作品をまともに観るのは初めて。小さい頃に観て、騎士が死ぬところが大変怖かった記憶だけがある。冒頭から若かりし頃のウンパ・ルンパが出てたり、ロックバイター(岩喰い男)の声が大平透だったりと楽しい内容。「へー、これドイツ映画だったのか」「そうか、こういう話だったのか」など発見多し。悲しみにとらわれると沈んでしまう沼とか本当の自分の姿が映る鏡とか、いちいち深い試練の数々。冒頭から‘虚無’という言葉が飛び交うのもすごい。そして‘夢見ることを忘れるな’という熱いメッセージ。どのテレビ番組も口をそろえて「金持ちは偉い」とか「勉強しろ」とか言う現代、座右の銘としたいところだ。まあ、今はハリーポッターとかファンタジーが強くて子供たちがたくさん本を読んでるから、ファンタージェンも相当繁栄しているであろう。映像は、マットペインティングや合成、ユーモラスなクリーチャー造形など、ぬくもりのある特殊効果が素晴らしい。全身CGで作られた昨今のクリーチャーよりもずっと生き生きしている。
  
 ただ、CM多すぎ。それに、エンドクレジットもなく唐突にCMに切り替わる、余韻のヨの字もない終わり方もまずい。しっかりしろKBS京都。


2006.7.8

『皇帝ペンギン』(2005)

 南極に住むペンギンたちの、終わりのない旅の記録。とにかくペンギンたちの驚きの生態に圧倒される。フレームに収まりきらないほどの長〜い行列や、安全地帯に集まった巨大な群れ、そしてオスを奪い合うメスたちの、キャットファイトならぬペンギンファイトなど見所満載。身を寄せ合って寒さに耐える姿は何度見ても胸を打つし、愛を交わすオスとメスのシルエットの美しいこと。一歩間違えれば大惨事になりかねない‘ペンギンの独白’風ナレーション(というかほとんどアテレコ)も、あまりやかましくない程度に映画の雰囲気を盛り上げていて効果的。子供ペンギン役の声がとにかくかわいい。余計な演出だという意見もあるだろうが、この映画の場合は良いと思う。他のドキュメンタリー映画の魚や渡り鳥とは違い、この作品のペンギンたちにはやはり格別に人間の姿を重ねてしまう。あえて独白形式にしたのもうなずける。
 
 人間が出てる映画よりも面白いです。


2006.7.5

『御巣鷹山』(2004?)

 7月に入ってから突如大学近辺のあちこちに貼られた謎のポスターの数々。日航ジャンボ機墜落事故の現場の写真のまわりに扇情的なコピーが躍る。「日本国家の犯罪を問う」「娘を返せ」「乗客は空中でほとんど絶命していた」「日本のジャーナリズムは死んでます」「おいそれは女の足だ ちゃんと上下そろえろ」・・・。映画の上映告知らしいが、実はだいぶ前に同じものを別の場所で見かけていた。その時は滋賀県での上映告知だった。今度は京都だ。ついにこの街までやってきたのだ。通学路に貼られたポスターはいやでも目に付き、一体どんな映画なのか気になってしようがない。よし、観られるものは何でも観よう、ということで観てきました『御巣鷹山』。会場は府民ホール。 
 
 監督は渡辺文樹さん。会場で配られたチラシによると、「渡辺文樹監督は社会的問題をドラマ化し多数発表し続けている。『家庭教師』は教育の荒廃、『島国根性』は地方文化の疲弊、『ザザンボ』は天皇部落における障害弱者の虐殺、『罵詈雑言』は原発行政の恐怖、『腹腹時計』は隠された昭和天皇暗殺計画、そして今回の『御巣鷹山』である。一般劇場はトラブルを恐れ、渡辺監督には会場を提供していない。そして、渡辺監督自身、全国の公共施設を使い自主映画上映を行っている」。並々ならぬ気迫を感じるぞ。これは期待できる!

 監督は白髪混じりの長髪で大柄な人だった。上映前に監督の挨拶。「政府・マスコミの言うことを信じちゃいけない」「真実を知らずに死んでいくこともある」「これは犠牲者や遺族の怨念を描いた映画。これを観て何かを感じていただければありがたい」「(映画の内容について)んなわけあるかと思う人もいるだろうし、批判的に観てもらったら結構です。でもやっぱりこの事故には裏がありますよ」

 監督が自分でフィルムの操作を行い、音声も監督がテープレコーダーを操作して映像に合わせる(!)。臨場感あふれる上映形式。しかし残念なことに会場の設備と映写機がうまく合わなかったらしく音響の状態が最悪(これについては監督も「ご勘弁ください」とのこと)。まあ、しょうがない。期待と不安(大半は不安)の入り混じる中、上映開始。
 
 ふたを開けてみれば、驚いたことに何とポリティカル・アクション映画だった。しかも監督が「渡辺」として主演。日航ジャンボ機墜落事故の真相を知った「渡辺」が、事故の犠牲者や遺族の無念を晴らすため「ナカソネ」首相と直接対決するというお話。首相に対し「お宅の息子が乗った飛行機に爆弾を仕掛けた」と脅しをかけるサスペンスフルな展開。最後にはチャンバラまである!正直、事故に関する陰謀論(取材に基づくのだそう。本当だとしたらものすごい話)にはついていけなかったけれど、次に何が出るのか分からない緊張感と映画の不穏な空気に引っ張られて、勢いで最後まで観られた。内容が強烈なので、俳優の演技が棒読みだったり「ナカソネ」の手下がなぜか全員お年寄りだったり等の低予算自主映画テイストも気にならず、むしろそれが不気味な味になっている。とにかく気迫だけがビシバシと伝わってくる。一般の劇場では絶対に観られないような映画だった。でも、高尚なドキュメンタリーを期待していた人は激怒するだろうとは思う。
 音響が悪くて心地よく観られなかったのが本当に残念。ちゃんとした状態で観たいが、もう渡辺一座は別の地へ旅立ってしまった。まさに一期一会だ。 

 ロビーには関係者のお子さんがうろついていて上映終了後は「ありがとうございました!」と元気よく声をかけてくれたり、映画に出てた女性がもぎりをしていたりと、会場は独特の雰囲気。こんな人たちもいるんだなあという驚きに満ちた体験でした(ロビーでは過去の作品のパンフレットも売っていたので速攻で購入。どれもやばそうだ。観てみたいなあ)。 


2006.7.3

『オープン・ウォーター』(2004)

 「どうせアイデア一発の低予算映画なんだろうなあ、アイデアは良いけど後はどう保たせるのかなあ」などとなめてかかっていたら、これが大傑作だった!休暇をとってダイビングをしていた夫婦にドえらい災難が降りかかる。その圧倒的な孤独と絶望に、終始波に揺られるカメラも手伝って、観ているだけで吐き気がする大変な映画。設定だけでも十分恐ろしく、恐怖感をあおる演出も見事だが、本当に恐ろしいのはクライマックス。雷と海が嫌いな人(例えば私)にとっては考えたくもない究極の悪夢である「夜」のシーン、そして「夜明け」、驚愕のラスト。単なる救出劇にせず、自然の無慈悲と人間のはかない存在を容赦なく描ききったその瞬間、映画はアイデアだけにとどまらない、深いテーマを湛えた作品となった。特に主人公を遠くから捉えたラストショットが見事。夫婦の運命は、あまりにも悲しい。ホラー映画というよりは悲劇。奥さん役の女優が何となくシェリル・リーに似ていて可愛かった。だから余計に悲しい。どーして海なんかに行ったんだ!

 ところで、『オープン・ウォーター』の導入部は『レイジ34フン』のそれと似ている。『レイジ〜』は、もっと‘地下鉄駅構内’ということにこだわって作れば良かったのだと思う。


2006.6.29

『タナカヒロシのすべて』(2004)

 ある平凡な男の日常が崩壊していく様をコミカルに描く。普段邦画は全くといっていいほど観ない私ですが、個人的に今最も気になる芸人、鳥肌実の初主演映画とあって期待していた作品。一方で、久しぶりの邦画、例によって「日常の些細なドラマ」とか「微妙な空気感」とかを売りにして、正直退屈なんだろうなという不安もあった。いざ観てみれば、意外とヒドい話が盛りだくさんだったが、やはりパワー不足だった。いくらでも面白くなりそうなネタはいっぱいあるのに、掘り下げ方がいくらなんでも浅すぎる。主人公が入会する「テルミンと俳句の会」なんて、その設定だけで逃げ切ろうとしているのが見え見えだ。先生の講評にテルミンが合いの手を入れる画は確かにインパクトがあるが、俳句の描き方がありきたりですぐに息切れ。全編にわたって‘広く浅く’、そして結局何も残らなかったという映画。面白い人たちがたくさん出ているのに反してこの薄い内容は制作者の怠慢だと思うぞ。やっぱり鳥肌実にはもう少し暴れて欲しかったし、女優さんたちももっと活躍して欲しかった。特に市川実和子嬢が気になる。出番短すぎ!もっと映せ!


2006.6.27

『レイジ34フン』(2004)

 「終電に乗り遅れるとひどい目にあう」というありがたい教訓映画。無人のホームに取り残された女性が体験する恐怖の一夜。とにかくその導入部が秀逸で、オープニングからかなり期待したのだが、観終ってみるとダメな映画だった。リアリズムに徹して画面が終始暗いのは、初めは怖いが画作りが単調でだんだん飽きてくるし、殺人鬼は格好つけてるだけで全体的にダラダラしていて魅力的でない。殺人鬼の出自を説明しない「悪魔のいけにえ」イズムも中途半端。どうせ説明をしないのならもっとアグレッシブに大暴れしてビビらせて欲しいものです(『クライモリ』は面白かったなあ)。オープニング以降の展開に新味がないのもつらい。血みどろ描写だけを楽しみに見続けた感じ。ノドが掻き切られる瞬間をそのまま映す志は素晴らしい。が、最後はやっぱりダラダラしてた。よって、オープニングから後を丸々撮り直してはどうか。それにしてもポテンテ姉さんは変な顔だなあ。


2006.6.24

京都のみなみ会館でオールナイト4本立て。ファンタスティックな映画がそろって非常に良い感じ。

『散歩する惑星』(2000)

 今回の一番の収穫。不思議の国スウェーデンからやってきた近未来絶望地獄絵巻。ミヒャエル・ゾーヴァが絶望をテーマに絵本を描いたような映画。とある国の経済・文化が極限まで行き詰ったお先真っ暗な状況を、窒息しそうなまでの閉塞感と底なしのブラックユーモアを込めて淡々と描く。リストラされた男、路上で刺された男、手品に大失敗する男(映画最大の必殺ギャグ)等々、悲惨の極致にいる人々が次々に登場し、それぞれがフラフラとさまよい続け、絶望の輪は次第に一国のスケールにまで広がる。初めはその独特の間のとり方と会話のおかしさに笑っていられるが、ことの深刻さがわかってくるにつれてだんだん薄気味悪くなり、終盤は‘反吐が出る’ほど恐ろしく、悲しい。特に子供が絡む例のシーン、強烈です。最後まで全く救いがないのも素晴らしい。ここまで暗い映画もそうそうないのではないか。しかし、観ていて決して不快ではないし退屈でもない。むしろいつまでも観ていたいような面白さに満ちている。徹底したワンシーンワンカットで撮られた街の風景は息を呑むほど美しいし、遠近感のある壮大な画作りにも圧倒される。絶望したビジネスマンたちの苦行のデモなんて観たことないよ!その他あまりに格好良い「絶望の」ビジュアルが盛りだくさん。一般市民からスカウトされたという中年オヤジや老人たちの迷演も最高。『キングダム』といいカウリスマキといいこの映画といい、やっぱり北欧には何かあります。必見の名作。

『緑玉紳士』(2004)

 栗田やすお氏がたった一人で、気合と根性で作り上げたパペット・アニメーション。メガネを売りに大都会へやってきたグリーンピース氏が巻き込まれる冒険の数々。何も知らずに観れば一人の手で作られたとは絶対に信じなかったであろう、その高いクオリティーがすごい。精巧なセット、小道具、個性的でよく動くキャラクターたち。アクションシーン満載で、カット割りも無茶苦茶細かい。特にクライマックスの悪役との対決では破片の飛び散る迫力の破壊シーンがあったりして、大いに参考にしたいところだった。が、残念なのはキャラクターたちが何をしたいのかが分かりにくかった点。ストーリーをもう少し整理する必要がある。キャラクターたちが話す‘緑玉語’も響きは面白いんだけど、声の表情に変化が乏しい。キャラに瞳がない(デザイン上あえてなくしてある)ことも気になった。眼の演技も重要だと思うのだが。最後に、グリーンピース氏が何かにハッと気づくたびに流れが止まってしまうのは話のテンポを悪くして、ちょっとしんどかった・・等々、ブツブツ言いたいことはたくさんあるけど、これだけの作品を一人でつくってしまった監督の才能は相当なものだし、これからもおおいに期待できます。僕もがんばって変態スプラッター大作を作りたい。

 

『ファンタスティック・プラネット』(1973)

 フランスの巨匠ルネ・ラルーによる変態SFアニメ。小さい頃に一度テレビで見てその異常すぎるビジュアル(デザインはローラン・トポール)がトラウマになっていたが、ついに正面から向き合う時がやってきた・・。とある惑星を舞台に、魚のような顔の巨大生物とそれに比べて虫けらほどの大きさしかない人間との壮絶な死闘を描く。この映画で素晴らしいのは何といっても惑星の自然の営みの克明な描写。動物も植物もいちいち奇妙な奴ばかり。中でも絶品なのが、長い鼻から延びた触手で虫(鳥か?こっちもわけわからん生き物)をつかんで振り回し地面に叩きつけて殺す生き物。ただ殺すだけで食べもしない辺りが凶悪。しかも顔は人面で、殺す時に「フフフ」と笑う。もう最高。映像はアートしていながらストーリーは娯楽性が高く、人類の決起・反逆に燃える。テンポも良いので全然退屈しない。初めはキモ過ぎると感じた絵にもだんだん愛着がわいてくる。音楽もロックしていてかなり格好良い。いやあ、トラウマを越えて、大好きになりました。

『不思議惑星キン・ザ・ザ』(1986)

 クー!旧ソ連の最高の置き土産。砂漠の星を舞台にした大冒険活劇。ある日突然(本当に突然)キン・ザ・ザ星雲プリュク星にワープしてしまった技師と音大生。打算的なプリュク星人のでこぼこコンビと出会い、珍道中が始まる。オープニングの脱力テーマ曲でヘナヘナと力が抜け、一気にキン・ザ・ザの世界へ。惑星を支配する理不尽な階級制度や奇妙な習慣がとにかくおかしいし、住民も奇天烈な奴らばかり。世界観も強烈で、現実には絶対に飛ばないであろう飛行物体や地下建造物がインダストリアルな感じで格好良い。また、まったりとしたテンポと長尺、さらにオールナイトの取りであるにもかかわらず観客席からは笑いが絶えないのは、やはり人物達の掛け合いが圧倒的に面白いから。宇宙船から降りてきたでこぼこコンビを見て「資本主義国だ」という技師のセリフも最高。途中でホロリとするシーンもあり。愛すべき映画。絶対にはまる。合言葉は‘クー’です!

 


2006.6.21

『雨に唄えば』(1952)

 ハリウッド映画がサイレントからトーキーへ移行する時代の、あるスタジオの騒動を描いた愉快なミュージカルコメディ。50年前の映画とは思えないほどテンポが良く、ダレ場一切なし、あっという間の1時間42分。歌と踊り満載なのに2時間超えないコンパクトさが見事。慣れないトーキー映画作りをネタにした必殺ギャグの数々は、今の人間をも爆笑させます。何度やってもうまくいかない撮影風景のギャグは完全に吉本新喜劇だし、やっと完成した映画が装置の不具合でスローモーションになってしまう辺り、ジム・キャリーを先取りするセンスの良さ。ミュージカルパートで魅せる主役3人の他、ぶち切れ映画監督、悪声のアホ女優といったお笑い担当のキャラも強力。特に後者を嬉々として怪演したジーン・ヘイゲンは最高にキュート。もう笑うしかないキンキン声でまわりを完全に圧倒、嫌な性格の役なのにだんだん憎めなくなってきます。アホでキンキン声といえば『ボディ・ダブル』(名作!)のメラニー・グリフィスもキュートだった。アホでキンキン声は最高ですね。