BEHIND PUSSYCAT

『プッシーキャット』制作ノート


次はエロでいく!

 2008年2月ごろ、春休みを前に次回作の構想を本格的に練り始めた。
スプラッターは『チェーンソー・メイド』でひとまずやり尽くしたし、次は何か違うのがやりたい。
今のていえぬシアターに足りないものは何だろう、そう考えた結果、次はエロでいくことにした。

 大人が見る作品にはエロが必須だ。セクシーな女の子を主役に据えて、
ていえぬシアターの興行内容のさらなる充実を図る!エロで客を呼ぶのだ!

ネコ耳!ピンクタイツ!フェティシズム!

 前作の主役がメイドさんだったので、次もオタク・アイコンで攻めようとヒロインをネコ耳娘に決定。
メイドさんが嫌いという男性がこの世に存在しないのと同様に、ネコ耳が嫌いという男性もこの世に存在しないのである。

 そしてさらにエロを高めるべく、ピンクタイツという究極のフェチ・アイテムを投入。
はっきりいって『プッシーキャット』のテーマはピンクタイツです。これができれば満足なんです。あとのことは知りません。
それにしても恐ろしいファッションが開発されたものだ・・・。永遠に廃れないで欲しい。
 あとロング手袋も良いよね。

ベティ・ブープ、ベティ・ペイジ。

 07年末の一大マイブームだったベティ・ブープ。セクシーな美女にイカした音楽、不条理極まりないギャグの数々に、
アニメは本来大人の娯楽だったことを教えられた。特に『白雪姫』『Minnie The Moocher』『山の老人』のキャブ・キャロウェイ関連作
は本当に素晴らしい。人間と動物キャラが当たり前に共存するフットワークの軽さも魅力的。
ヒロインを中心にして騒動が起こるという構成は『プッシーキャット』でも意識した。
 
 アメリカの伝説のボンテージモデル、ベティ・ペイジが出演したお色気映画も忘れがたい。女性が女性を縄で縛り、車のトランクに
詰めて拉致するという猟奇的な内容とは裏腹に、映像はホームビデオのようでのどかな雰囲気が漂い、
監督とスタッフ、出演者たちが楽しんで撮ってることが伝わってくる。昨年公開された彼女の伝記映画でも、
エロ業界に悪い奴はいないということが描かれていた。『プッシーキャット』でも、少人数で楽しくお色気映画を撮ってる感じを
やりたかったんだよね〜。

コレクター

 ネコを監禁するブタ君のモデルは、映画『コレクター』のテレンス・スタンプ。映画ではスタンプ演じる銀行員フレディが
美大生の女の子を誘拐・監禁し彼女と恋愛関係を築こうとするが、事態は最悪の結末を迎える。
この映画の設定を基に、もし自分が捕まえた女の子に危機が及んだら監禁野郎は身を挺して彼女を守るだろうか?
それくらいの覚悟はあるのか?と考えて『プッシーキャット』のお話が生まれた。彼女のために死を恐れず闘うとしたら、
それもひとつの愛の形であろう。フレディはブタのようには戦わないだろうな。多分。
 『プッシーキャット』の劇中、『コレクター』のテーマのメロディが2回流れる。

 ちなみにブタの家がレンガ作りなのは、「3匹の子豚」から。

黒スーツのオオカミ

 黒いスーツを着たオオカミのデザインは、フランスの映画監督ヤン・クーネンの短編『赤ずきん』が元ネタ。
赤ずきんをエマニュエル・ベアールがエロエロに演じ、キノコやお花といった森の仲間たち(着ぐるみ)が狂ったように踊る
ダークファンタジー。オオカミもスーツを着て矯正具みたいなマスクをつけたただの危ないオッサンになっている。
クーネンの短編集『ドーベルマン・エクスプレス』で見られるので探してみてね。

ハイテンション

 オオカミのブタ襲撃シーンは、フランスの傑作ホラー映画『ハイテンション』を参考にした。
やっぱり玄関に侵入者がやってくるシチュエーションほど怖いものはない。

リンチ

 ブタ君の部屋のデザインは、赤い壁と黒のビニールソファの完全デイヴィッド・リンチ仕様。そこで流れるBGMも「ワイルド・アット・ハート」のサントラを参考にした。『血みどろデート』でも『チェーンソー・メイド』でも、デザインや音楽の面でリンチの映画からヒントをもらった。困った時はリンチを使え!

グラインドハウス映画

 2007年に公開された二本立て形式の映画『グラインドハウス』。最初に見たときは断然ロドリゲスの『プラネット・テラー』の方が良いと思ったけど、後でじっくり反芻する内にタランティーノの『デス・プルーフ』の方が魅力的に思えてきた。『プラネット・テラー』のB級スプラッターてんこ盛りのサービスはとっても嬉しいけど、『デス・プルーフ』の「女の子とキチガイとカーアクション」しか出てこないシンプルかつ荒っぽい作りに低予算映画の心意気と余裕を感じて、より格好良く見えたのであった。
 そんなわけで『プッシーキャット』も低予算でお色気メインで内容スカスカ、でも観ている間はなぜか楽しいという作品にしたかった。一番真似したかったのは『デス・プルーフ』で、前半の見せ場がセクシーダンスで後半はアクション中心という全体の構成を参考にしたし、女の子が悪漢をブチ殺すラストの展開はそのまんま頂いた。語ることがなくなれば速攻で幕を閉める、この潔さは今後も見習いたい。
 もう一本頭にあったのがハーシェル・ゴードン・ルイスの『血の魔術師』。これはオープニングが格好良くて、これからいかがわしい映画を見るのだという期待を存分に煽ってくれた。『プッシーキャット』の冒頭で流れる曲はこの映画を参考にした。
 ホラーといえばどうしても暗闇の中で展開しがちだが、僕が勝手にイメージするグラインドハウス的な低予算映画では、すべての惨劇や凶行がスッキリ澄み渡った青空の下に晒される。部屋にこもって作業する時間が長いので、せめて作品の中では御天道さまの下で元気に暴れたいのであった。

 う〜ん、こんなところですかね。


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